第662回/国境で独りたそがれて - たそがれユヴァスキュラ(荒咲りゆ) - 恋愛
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第662回/国境で独りたそがれて - たそがれユヴァスキュラ(荒咲りゆ)

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たそがれユヴァスキュラ

たそがれユヴァスキュラ準推薦
■制作者/荒咲りゆ(ダウンロード
■ジャンル/王様の秘書大忙し乙女恋愛ノベル
■プレイ時間/1時間半

主人公(名前任意)は父親の借金を返すため、王城で雇ってもらおうと、城に潜入しようとしたところ、黎牙という青年に見つかり、地下牢に閉じ込められてしまった。地下牢を王が直々に見回りに来たが、やってきた王はなんと先ほど顔を合わせたばかりの黎牙。そして主人公はなぜか黎牙の秘書として雇われることに。北欧のムード漂う乙女恋愛ノベル。

ここが○

  • 男性キャラクターが魅力的。
  • 構成が良く、マルチエンドが良くできている。
  • システムが使いやすくストレスがない。

ここが×

  • 既読スキップがいまいち早くない。
  • 設定が若干謎。
  • バッドエンドは好みが分かれるか。

■国境で独りたそがれて

Giggle」のシリーズの作者さんの最新作です。「Giggle」は、掌編オムニバス形式の不条理サイコホラーという内容ですが、実はこの作者さんは作風が幅広く、SF風の「永3-Eimin-」や、ファンタジー風味の「7日目の花嫁」など、多彩な作品を作られています。

そして、Giggleではあまりキャラクターを前面に押し出してはいませんが(内容からして当然ですけど)、他の作品では、特に男性キャラクターが魅力的に描かれているのが印象的です。なので、ある程度の長さのキャラクタードラマならば、この作者さんの持ち味がもっと生かされるのではないかと思っていました。この作品の制作はTwitterで知っていましたので、公開を知り早速プレイしてみた次第です。

たそがれユヴァスキュラ主人公は名前任意です(初期名「蘭」。乙女ゲームだと、主人公の名前を変えられる作品が多いですね)。舞台はオイケアという王国。もともと隣国のヴァセン王国とは1つの国だったのですが、王族の内紛により数十年前に、湖を境にして国が2つに分裂してしまいました。物語は、主人公がオイケア王国の王城へやって来るところから始まります。

その主人公。父親の借金を返すため、王城で雇ってもらおうと、城にやって来たのですが、当然のごとく番兵に追い返されてしまいます。それならばと、城に忍び込もうと、たまたま見つけた穴に頭を突っ込んだのですが、頭は通ったもののお尻が通らないという(笑)。そこを通りかかった黎牙という青年に助けてもらうのですが、王の暗殺容疑で地下牢に閉じ込められてしまいました。この辺りの主人公の行動は、なかなかぶっ飛んでいて読み手の笑いを誘います。

攻略対象は2名です。国王の黎牙と、黎牙の側近である蓮都。国の名前は横文字で、どこか北欧風なのですが(フィンランドがモデルのようです)、キャラクターは何故か漢字。時代も、中世なのかと思いきや、テーマパークにジェットコースターがあったり、設定はごちゃ混ぜ風味で、この辺りは好みが分かれるかもしれません。個人的には、作風に合った世界観で、いいのではないかと思いました。

蓮都は、おっとりしていて真面目。仕事熱心なタイプ。渋い低音ボイスも魅力です。控えめながら主人公を的確に支えてくれる役どころで、男性の目から見ても、変に取り澄ましたところがなくて好印象でした。と思っていたら後半で前半とのギャップに驚かされたのですが。個人的には、この蓮都ルートを最初に読むことをお薦めします。このルートにおける、黎牙と蓮都の関係がとてもいいですね。恋愛もののライバルにありがちな、ぎすぎすしたところが全くなく、ラストに到るまで実に爽やか。実は蓮都ルートの方がハッピーエンドなのかも? このルートでは誰も死にませんし。

黎牙はちょっとワイルドな俺様タイプ。しかしこちらも、この手のキャラにありがちな嫌味さがなく、親指ゲームをするシーンでは微笑ましさも感じました。俺様タイプでありながら、庶民的な親しみやすさも持っており二人ともとてもいいキャラクター造形です。主人公を引っ張る大人なところと、少し子供っぽいところが上手く同居しており、女性作者さんならではのキャラクターメイキングだと思いました。黎牙ルートはラストでタイトルに帰っていきますし、こちらがトゥルーエンドという感じですね。

エンディングは、2人のルートにプラスして「人形エンド」というバッドエンドで、合計3つ。この手のマルチシナリオ恋愛ものの場合、攻略対象によってまるで物語が変わることもあるのですが、この作品は大筋は同じです。派手な分岐をするタイプではなく、どちらかというと「if」を楽しめるタイプ。その分細かい整合性もきちんととられており、しっかり作られた分岐ものです。後半の展開は、少し唐突さを感じなくもないのですが、そこからの畳み掛けるような展開は読み応えがあり、キャラクターの魅力も存分に出ていました。ほぼ王城の中だけが舞台なのに、退屈さを感じさせない構成も見事です。

ただ、既読スキップがいまいち早くないのです。そもそもティラノのスキップはあまり早くないのですが、表情の変化エフェクトなどが飛ばせないため、人によっては少しストレスが溜まるかもしれません。しかし既読スキップ以外のシステムは大変よく出来ています。セーブ画面が特に使いやすいですね。かなり手を入れて工夫していることがうかがえて、感心しました。

ツールはティラノスクリプト。オープニング主題歌、エンディング主題歌に加え挿入歌まで入っており、キャラはフルボイスという豪華仕様。クリア後には、声優さんによるメッセージやおまけシナリオもあります。プレイ時間は1時間半で決して長くはないのですが、作者さん渾身の一作だと思います。登場する男性キャラクターの魅力が素晴らしく、乙女ゲームに抵抗がなければ男性が遊んでも十分楽しめますよ。
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