第665回/さようならより儚い別れ - 白日夢カタストロフ(Cross) - 不思議系
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第665回/さようならより儚い別れ - 白日夢カタストロフ(Cross)

不思議系
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白日夢カタストロフ

白日夢カタストロフ準推薦
■制作者/Cross(ダウンロード
■ジャンル/世界の終わりを見る学園ノベル
■プレイ時間/2時間

高校生の木枯不吹は、妹の波音と暮らしていた。友人とちょっとしたトラブルを起こして停学中の彼の目の前に、突然2人組の妙な女性が現れた。天使と悪魔を名乗るその2人は、以前から不吹を知っているようだが、彼には見覚えがない。狼狽える不吹に、天使は「この世界はもうすぐ終わる」と言い放った。風変わりなファンタジー風学園ノベル。

ここが○

  • クールかと思いきや、実は熱い物語。伊月いい奴。
  • この手の作品には珍しく、前向きな希望を残して終わる。
  • エフェクトも全部クリックでカットでき、非常に快適に読める。

ここが×

  • 一切ルビがなく、人名の読み方すら分からない。
  • 構成が複雑で、中盤までは訳が分からない。
  • ラストは少し蛇足気味。

■さようならより儚い別れ

新しい作品が続きましたが、また少し古めの作品をご紹介です。2010年ですからもう9年前。そしてこの作品は、いわゆる「セカイ系」と呼べばいいんでしょうか。今でこそ少しピークを過ぎた感がありますが、こういう作品、当時は多かったですよね。この手の作品は、ともすれば難解になることが多く、謎が明かされるまでは、読んでいる側は何が何だか分からない、ということも少なくありません。

この作品も例に漏れず、中盤から後半までは、かなり読み手を突き放した、意味不明の展開をします。文章が固めなのがそれを助長している感じがします。更に悪いことに、この作品は「ルビが一切ない」のです。にも関わらず、難しめの語彙が頻出します。これは読み手に不親切です。加えて、人名にも一切ルビがないため、人名の読み方が分かりません。普通の人名ならまだしも「波音」「心裏」なんて、頭を抱えてしまいました。主要キャラの読み方が分からないまま読み進めるので、何とも言えないもやもやを感じました。ここらには、もう少し読み手に対する配慮が欲しいところです。

白日夢カタストロフと苦言を先に書きましたが、物語の内容はとても優れたものです。物語の構成上、中盤まで(後半まで?)物語がどこに進んでいるのか、皆目分からない点はありますが、後半の作りはとても優れています。構成は複雑ですが、物語自体は意外とシンプルですし、後半からラストにかけては、前半の疑問点が一気に解消していきますので、後半の爽快感(と言っていいのか)はかなりのものでした。

この作品には2人の女性キャラクターが登場します。砂織と砂鳥という双子の姉妹で、主人公である不吹と、親友の伊月の幼馴染みです。この砂織と砂鳥が、割合早い段階で、幼い頃の水難事故で亡くなったという描写があります。そして不吹は2人を助けられなかった自分を責めて、他人にも心を開けないでいます。

実は、冒頭に印象的な現れ方をした天使と悪魔は、序盤で早くも消えてしまいます。重要キャラのような登場の仕方なのに、何故と思っていたら、ラストに至ってこの2人の使い方に感心しました。登場時に強い印象をプレイヤーに残し、序盤で早くも消えてしまったからこそ、後半の展開が生きたと言っても過言ではありません(序盤で消えていなかったら、中盤辺りで誰でも真相に薄々気付いたでしょう)。

また、砂織と砂鳥に対する罪の意識で苦しむ不吹に、実に計画的に最初から「救いの道」が用意されている周到さに舌を巻きました。この手の作品にありがちな、「2人のことを一生忘れない」的な落ちをつけるのではなく、2人から解放され、前向きに歩けるような、現実的かつ希望を持てるラストが用意されているのです。心裏のエピソードをもう少し用意しておいて欲しかった気がしなくもないのですが、それにしても上手く作ってあるものです。

学園ものノベルゲームには、印象的な友人キャラが不可欠ですが、この作品における伊月は、歴代作品の友人キャラの中でも、トップクラスの魅力を持つ登場人物です。伊月の熱さを不吹がいまいち受け止めきれていないので、そこにバランスの悪さは感じますし、伊月と不吹の過去のエピソードも欲しかったような気もするのですが、ヒロインではなく、友人キャラが物語を支えている作品も珍しいですね。

ただ、ラストは少し蛇足にも感じました。ラストがというより、大和ですね。彼は一体何だったのか……。劇中も少々浮いた存在で物語に溶け込んでいるとは言い難い印象でした。また、スタッフロールの後に大和が、作中一度も出てこないキャラの名前をつぶやいていましたが、あれは一体……。もしかしたら続編を作る予定があったのでしょうか? 10年近く前の作品ですから、これは永遠の謎です。

それと、タイトルに繋がるラストの部分は、もう少し中盤で伏線を仕込んでおいても良かったような気がします。今のままでも十分魅力的な物語ですが、そこら辺にもう一押しあれば「推薦」にしていたと思います。綺麗な立ち絵はあるものの、1枚絵はラスト近くに少し出るだけですが、実に効果的な使われ方をされていて、ラストの感銘を高めてくれていました。

ツールは吉里吉里ですので、実に快適にプレイできます。特に、時間のかかるエフェクトをクリックでカットできますので、ストレス皆無です。選択肢はなく一本道。プレイ時間は2時間程度です。中盤までは投げてしまいそうになるかも知れませんが、中盤まで読んだのなら、ぜひ最後まで読んでみてください。荒削りな点ももちろんあるのですが、フリーならではの工夫や、作者さんの思いが込められた良作だと思います。
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