第668回/あの世とこの世は紙一重 - 不死の調査録(あ行。) - ミステリー・サスペンス
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第668回/あの世とこの世は紙一重 - 不死の調査録(あ行。)

ミステリー・サスペンス
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不死の調査録

不死の調査録■制作者/あ行。(ダウンロード
■ジャンル/不死調査探偵ADV
■プレイ時間/20分

依頼が全く来ない貧乏探偵、異坂の事務所に、ある日仕事依頼の電話が。相手は何と「死神」。死ぬはずの帳簿に載っている人間が死なず、仕事ができなくて困っているので、その人間が死なない理由を調べてくれという。とんでもない依頼に慄きつつ、報酬に釣られて仕事を受けた異坂。調査対象はいずれも癖のある人物。異色の探偵ADV。

ここが○

  • 特異な世界観で読者を一気に引き込む序盤。
  • 一歩間違えば死んでしまう緊迫感の見せ方。
  • サブキャラまでよく立っている。

ここが×

  • 終わり方がちょっと唐突。
  • 一部の立ち絵がエグくて、苦手な人は苦手かも。
  • サブキャラに比べ、主人公の影がちょっと薄い。

■あの世とこの世は紙一重

探偵ものは、今までもいくつかご紹介しました。アクション要素が強いものからミステリー要素が強いものまで様々なのですが、その中にあってこの作品は一際異彩を放っています。主人公は普通の探偵なのですが、依頼して来たのが何と死神。依頼内容も、普通の探偵ものではありえないとんでもない仕事で、最初から非常に驚かされました。

作者さんは、「Planet nine」「転生天命」を作られた方です。前者はSF、後者はホラー要素のあるコメディと、全く毛色の違う作品を送り出していますが、この作品はまた、それらの作品とは全く雰囲気が違います。これだけ色々なジャンルの作品を作り、しかもどれも世界観やキャラクターなどが大変魅力的なのです。作者さんの引き出しの多さに、感心させられます。

不死の調査録主人公の異坂は、ろくに依頼が来ない貧乏探偵。仕事もなく、廃業するしかないところへ、久々に依頼の電話がかかってきました。が、電話の相手は自分を死神だと名乗ります。彼が言うには、死神の帳簿に記録された、死亡予定者のうち、何故か死なない者がいる。お陰で仕事ができないので、その原因を調査してほしいとのこと。調査対象は105歳の老婆、病院に入院中の3人の患者、そして交通事故にあっても死なない若者。

異坂は早速調査に出かけますが、調査対象は全員まともではありません。そのため、一歩間違えれば命の危険があります。が、普通の探偵もののようなまともな危険(?)ではなく、ホラー的な怖さがあります。その怖さを、実にいい塩梅で程よく感じさせてくれます。闇雲に怖がらせるのではなく、じわじわと少しずつ読者のメンタルを刺激し、バッドエンドでその刺激が最大にするように作られているのです。この作りは実に見事。

特に、病院の院長に対する聞き込みのところ。選択肢と画面の演出の相乗効果で、ゾッとするような怖さを感じさせてくれました。また、院長と老婆は立ち絵がエグくて夢に出そうです(笑)。絵柄もリアルなので、苦手な人は苦手かも知れません。個人的には、院長と老婆には、意外と愛着を感じてしまいました。まあ、老婆の食事シーンは、あまり想像したくはありませんが(笑)。

そして最後に調査することになる古寺。このエピソードは、ただの怖い話ではなく、少ししんみりさせられる要素もありました。三つのエピソードはどれもごく短いのですが、それぞれのエピソードから、老婆、院長、古寺の生き様が垣間見えるような気がして、考えさせられました。どのサブキャラも、非常に個性的で魅力的です。反面、主人公がいまいち影が薄いような気もしますが、これで主人公が灰汁の強い人物だとバランスが悪くなりそうですから、これが正解かも知れませんね。

終わり方は、妙に呆気ないです。唐突とも言えますし、せっかくの魅力的な世界観なのですから、もう少しまとまった終わり方が良かったようにも思いましたが、プレイ時間20分の短編ですし、これくらいさらりと終わる方が作品にはあっているのでしょう。実は続編もあるようですし、「もっとプレイしたいな」と思うところで切るくらいが、次回作へのプレイ意欲を煽ってくれて良かったりして?(笑)

演出は全体に凝っているのですが、BGMが独特というか、異様です。メロディとも言えない奇妙なメロディが、不安定に移り変わっていくだけで、作品の不気味さを一層引き立てていました。私自身は、もっと「ちゃんと曲になっている」BGMが好みではありますが、変に使い古されたBGM素材を入れるよりは、よほどこの作品に合っていたと思いますし、これも演出の一環ということでしょう。

ツールはティラノスクリプトです。調子に乗って調査しているとすぐバッドエンドになりますが、こまめにセーブしておけば大丈夫でしょう。なお、選択肢でバッドエンドにならなくても、調査が完遂しないまま死神に報告しても、やはりバッドエンドになります。これはこれでこのゲームらしい気がするので、一度はみておきましょう(?)。プレイ時間は20分くらい。とにかく他の作品にはない個性が光る一作です。この作者さんの作品からは、今後も目が離せそうにありません。
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