第670回/黄昏は、時の流れの置き土産 - 黄昏を見つめて(Mystic Night) - ファンタジー
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第670回/黄昏は、時の流れの置き土産 - 黄昏を見つめて(Mystic Night)

ファンタジー
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黄昏を見つめて

黄昏を見つめて準推薦
■制作者/Mystic Night(ダウンロード
■ジャンル/中華ファンタジー旅ノベル
■プレイ時間/1時間半

神楽は、見た目は幼い少女の旋律と、狐のような妖魔の千尋と共に2年間にも渡る旅を続けていた。旋律は、以前神楽を助けた際に、時を止められる呪いを受けてしまい、少女の姿になってしまったのだ。旋律の呪いを解くための鍵を探し、2人と1匹は、時を止める妖魔の噂がある村へやって来た。ライトな中華風ファンタジー。

ここが○

  • テンポが良く、気持ちよく読み進められる。
  • 色々な要素が過不足なく盛り込まれ、物語内できちんと消化できている。
  • キャラクターが生き生きとしていて掛け合いもいい。

ここが×

  • 神楽と旋律の関係が少し淡白。
  • なんだかあまり中華っぽくない。
  • 日本語がちょっと怪しい。

■黄昏は、時の流れの置き土産

またもや古めの作品をご紹介です。初出は2011年ですから、今から8年も前。画面サイズ(640x480)に時代を感じさせますが、ツール(Live Maker)の使い勝手の良さもあり、むしろ昨今の作品よりプレイしやすいところも多いです。最近の作品しかご存知ない方は、是非古めの作品もプレイしてみてください。軽快で安定しており、きっと快適に読めるはずです。

この作品は以前にも一度プレイしていました。しかし、私がちょうど非常に多忙な時期に重なってしまったため、レビューできずじまいだったのです。この度ようやく再プレイし、レビューすることができました。物語の舞台は、古代なのか中世なのか近代なのか分かりませんが、とにかく昔の中国風の国。眼帯をしている主人公の青年神楽と、10歳くらいの少女旋律の、ファンタジー風旅物語です。

黄昏を見つめて中華風ファンタジーと銘打っていますが、あまり中華っぽくありません。キャラクターの名前も中国風ではありません。神楽(かぐら)とか千尋(ちひろ)なんて、完全に日本語の読みですし、ネーミングにもう少し中華風のこだわりを入れると、もっとリアリティが増したような気もします。ま、架空世界ということで、そこはあまり気にしない方がいいのかも知れません。

そして、文章がちょっと怪しいといいますか……。単純な「てにをは」の間違いに始まり、ちょっと妙な言葉遣いが結構多発します(「心残りが悪い」とか)。まあ、文章自体は丁寧で読みやすいですし、変に修辞法に凝って文章がもたれる作品よりはよっぽどいいと思いますから、これも気にしない方がいいでしょう。

物語は全4章に分かれています。1章から3章までは、10分ないし15分で読めます(第4章だけ50分くらいかかる)。なのでそれぞれのお話は掌編と言ってもいいくらいの長さなのですが、その中にしっかり起承転結、盛り上がりどころが付けられていて、構成がしっかりしています。各章が終わるとエンディングが流れるのが、テレビアニメ風でなかなかいい演出です。テレビアニメというよりは、オリジナルビデオアニメ(今はあまりないのかな?)風ですが。

ちなみに、各章が終わったら一度タイトル画面に戻ります。そして特定の条件を満たさないと、次の章は読めません。これについては「初めにどうぞ」というファイルに書いてあるので、きちんと目を通しましょう。外伝を読むこと、なんて条件もあったりしますのでご注意ください。外伝は各章毎にあります。

さて、旋律に「時を止める呪い」をかけた妖魔を探す神楽たちですが、第2章で早々とその妖魔「詩吟」と出会う上、なぜかその妖魔と一緒に旅をするという変な展開に。これはどうなるんだと思っていたら、その後もちゃんと事件が用意されていましたし、詩吟が神楽たちについてくるのも、展開上ちゃんと意味があることが分かります。登場キャラクターはそれなりに多いのですが、どの登場人物にもそのキャラなりの見せ場が用意されていて、キャラクターの扱い方が上手いなと思わされました。

旋律は、詩吟の「時を止める呪い」で幼い少女にされており元々は神楽より年上です。なので、普通は神楽と旋律の2人が恋仲になるだろうと想像するところですが、この作品ではそういうところが全然ありません。旋律には故郷の村にちゃんと婚約者がいますし、神楽の態度もストイックなものです。これがこの作品ならではの美点とも言えますが、こう少し恋愛方面に振ってみたり、あるいは婚約者がいる旋律への複雑な思いを神楽が露わにする、なんて展開をしてみても、また別の面白さがあったかも知れません。

キャラクターが個性的に作られているので、やり取りも軽妙です。無邪気に見えて残酷な一面もある詩吟は、特に印象に残るキャラクターでした。神楽は旋律に命を助けられたとのことで、過去回想でも少しそれは語られますが、旋律が明確に回想に登場する訳ではなく、最後まで具体的にどう助けられたのか、過去の2人にどんな関わりがあったのかは分からないままです。ここはもう少し子細に描写した方が、物語の厚みが増したような気もします。恋愛方向にあえて振っていないのですから、2人の絆の描写が若干淡白に感じるんですよね。

とは言え、気軽に読めてドラマとしてもしっかり盛り上がり、キャラクターもよく出来ている佳作です。ツールは上記の通りLive Makerで、プレイ時間は1時間半。選択肢は基本的に各章の最後に出てくるだけですので、選択肢の手前でセーブしておきましょう。一風変わった古めの作品ですから、ぱっと見ではなかなか食指が動かないかも知れませんが、楽しんで読めると思いますよ。
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