第671回/家族の絆、貸します - アパシー レンタル家族(七転び八転がり) - シリアス・感動系
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第671回/家族の絆、貸します - アパシー レンタル家族(七転び八転がり)

シリアス・感動系
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アパシー レンタル家族

アパシー レンタル家族準推薦
■制作者/七転び八転がり(ダウンロード
■ジャンル/絆を見つめる家族ドラマノベル
■プレイ時間/3時間

家族というシステムが崩壊の危機に瀕し、「レンタル家族」というサービスが一般的なものとなっている時代。希薄になった絆を求める者、失ったものの代わりに救いを求める者、自分の身を守る為にレンタル家族を演じる子供。様々な人々の思惑が入り組んで、やがて描き出される幸せの形と、家族の絆。レンタル家族がもたらすかけがえのない絆の物語。

ここが○

  • 独特の設定が生かされたシナリオ。
  • 何気なくも起伏のあるドラマ。
  • ラストに以前半の物語が繋がる展開の上手さ。

ここが×

  • 細部の詰めが甘く感じる。
  • もう一歩先まで語って欲しかったラストシーン。
  • ラストや一部イベントの取ってつけた感。

■家族の絆、貸します

この作品は、元々有料で販売されていたようです。起動するといきなりインストールを求められて、ちょっとびっくりしました。無料公開は去年なのですが、そういう意味で、少し見た目は古めのイメージがある作品です。ウィンドウサイズも小さい(640x480)ですし。個人的には、ディスプレイの半分を占拠するような作品よりも、これくらいのウィンドウサイズの方が手頃に感じます。

この作品には、タイトル通り「レンタル家族」というシステムが登場します。読んで字の如く、お金で家族をレンタルするという制度。作中ではその制度の全てが語られている訳ではないのですが、どうやら家族制度そのものが崩壊の危機にある、架空の未来の日本、という風にも受け止められます。子供を捨てる親が常態化し、施設で育つ子供がレンタル家族に出される、などの描写もあり、全体にほのぼのした雰囲気の物語ではありますが、重いものも感じさせます。

アパシー レンタル家族この作品は、いくつかの短編物語からなるオムニバス形式ですが、どのシナリオもレンタル家族が何らかの形で関わっています。最初の物語は「はんぶんつ」。カフェでアルバイトしている女子高生、間山久恵が主人公。久恵は子供の頃に父親を事故で失い、母親は最近再婚したのですが、再婚相手である新しい父親はもとより、母親ともぎくしゃくした毎日。そんなある日、カフェの常連久我山さんと河原で出会って、意外な素性を聞かされます。

2本目「帰る場所」は、子供がいない夫婦の元にレンタルに出された小学生、田村裕子(という名前はあくまでレンタル名)が主人公。裕子は、レンタル家族として出された者としての振る舞い方を知っており、いい子供を演じているのですが、両親に子供が出来て、少しずつ家族の形が変わっていきます。最初の話とは別の方向から、家族の絆を描いており、少しやるせないラストながら心に響きました。猫ばばあがいい味を出していましたね。

3本目は「家族写真」。帯広から東京に単身赴任してきたサラリーマン、篠田俊郎のお話。1人の寂しさに堪え兼ね、ある休日に帯広に戻った俊郎ですが、自宅はもぬけの殻で1日待っても家族は誰も帰ってきません。この話は、何だか少しどろどろした話、なのですが、後半に意外な事実が明らかになり、驚かされます。後半のどんでん返しを仕込むには、少し前半の説明が足りなかった気はするのですが、短い中で起伏と読み応えに富んだ短編でした。

4本目は「青年リグレッツ」。大学を出たのに目的もなくフリーターを続ける阿部弘幸は、虚言癖があり、そのことで信頼できる人間関係を築けません。ある日たまたま拾ったデリバリーヘルスに電話をかけるのですが、やってきたのは漫画家志望のちょっと変な女の子。このシナリオはレンタル家族があまり関係なく、最後に少し絡む程度なのですが、お話としてはよく出来ています。ただ終わり方は唐突すぎて面食らいました。特にラストシーンはコントのオチのようで(笑えるストーリーという意味ではありません)。

そして、各シナリオの間に、この作品のメインとも言えるルートが、少しずつ挿入されます。このルートの主人公は、帆加辺春生。彼もレンタル家族である裕福な家庭にいるのですが、自分を出せない生活に絶望し、自殺願望が頭をもたげます。友人の佐久川太一は必死に説得しようとするのですが、彼はついに、太一に一緒に死んでくれと言い出しました。この春生が最初は非常に嫌な奴です。

ですが、ラストの展開がなかなか凄い。何が凄いって、無関係に思えた前半の4本のシナリオが繋がるのです。更に、そこにちゃんと春生が絡む構成の上手さが秀逸です。そうして、春生がきちんと「絆」「幸せとは」という命題に、自分で気づくというオチの付け方。非常によく考えて作られた物語で、感心することしきりでした。特に、春生が「幸せとは何か」に気付く一連の流れは素晴らしかったと思います。

ただ、レンタル家族制度やパラレルワールドがどうしたなどの、細かいところはあまり説明されていないのが少し気になったのと、どうもところどころに取ってつけた感があるのは、どうしても気になりました。阿部弘幸ルートのラストもそうですし、阿部と規子が……というのもいきなりな感じは否めません。更にラストも、シーンだけをとれば感動的ではあるのですが、前半から何らかの伏線があった訳ではなく、感動するよりも「いきなりそんな事実を明かされても」と困惑してしまいました。「4人に関わって幸せを」の件はとても良かったのですが、そのあとの展開は少し安直な気がします。

全体の構成は非常に上手いですし、描写は細かいところも大変優れているのですから、 こういうところにも少し気配りが欲しかったなというのが、読み終えての素直な感想です。ここに一工夫があれば、「推薦」でもおかしくないレベルの作品です。ハッピーエンドではあるのですが、あの後どうなったのか、エピローグで少し補完して欲しかった気もします。ですが全体に、テーマをしっかり前面に押し出した作りには、好感が持てます。柔らかいタッチの1枚絵は、私の好みでした。

ツールは吉里吉里で、軽快に動作します。パソコンでプレイするには、吉里吉里やNScripter、Live Makerがやはり快適です。選択肢はなく、プレイ時間は3時間前後でしょう。最初は物語の全貌がなかなか見えませんが、オムニバス形式の作品としても各々よく出来ているエピソードばかりですので、とっつきやすいと思います。「絆」「家族のあり方」をテーマに描いた作品の中では、かなりの秀作だと思いますよ。
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