第672回/君は飛べない青い鳥 - 青い鳥は籠の中(灰色) - ミステリー・サスペンス
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第672回/君は飛べない青い鳥 - 青い鳥は籠の中(灰色)

ミステリー・サスペンス
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青い鳥は籠の中

青い鳥は籠の中■制作者/灰色(ダウンロード
■ジャンル/兄妹の歪な絆確認ノベル
■プレイ時間/20分

主人公の女子高生、小鳥は10歳年上の兄日雀と2人暮らし。平凡な生活を送っていた小鳥は、ある日兄に軟禁されてしまい、友人であるひーちゃんとはもう会うなと言われてしまう。日雀は「これからは俺が守ってやる」と言うのだが、その真意は一体。そして、小鳥に隠された過去とは? 重層的な構造と意外なラストが印象的な短編ノベル。

ここが○

  • 短いにも関わらず構成が上手い。
  • 読者の裏をかくラスト。
  • 後味がいい話ではないが、エンターテインメント性を犠牲にしていない。

ここが×

  • 空白行なのにクリックしなくてはならない箇所が頻出。
  • 名前表示欄に意味がない。
  • やはり読み手は選ぶ話だと思う。

■君は飛べない青い鳥

メモリーロスト・ネバーランド」「10月32日のハロウィン」の作者さんの作品です。ノベルゲームの作者さんは多いですが、これほど個性がはっきりしている作者さんも、そうはいないでしょう。一部の例外を除けば、登場人物は何かをこじらせたようなキャラクターばかりで、展開もお世辞にも心温まるとか、ほのぼのする物語ではありません。なので、読み手を選ぶことは事実ですし、この作品も、合わない人には合わないかも知れません。

この作品の主人公は、高校生の小鳥と、その10歳年上で、小鳥が通う高校の教師である日雀(ひがら)の2人。兄妹なのですが、禁断の関係になったり、「妹萌え」のような展開は全くしませんので、そこには期待しないでください(笑)。2人は、時に憎まれ口を叩き合いながらも、お互い支え合いつつ仲良く暮らしていたのですが、そんなある日異変が起こります。

青い鳥は籠の中ある日、下校しようとしていた小鳥を日雀が突然有無を言わせず自分の車に乗せ、自宅に連れ帰ったと思うと、なんと小鳥に足枷をはめて軟禁したのです。その上、小鳥の友人であるひーちゃんに「もう関わるな」と言い、携帯電話の連絡先まで消されてしまいました。いきなり不穏な展開で、この先どうなるのかと思わせてくれます。

そして終盤に出てくる選択肢で、物語は分岐します。どちらのエンディングも、どことなく物足りなさを感じてしまい、この前半だけだとレビューを書くほどではないかなと思ったのですが、2つのエンディングを見ると、タイトル画面に新たなメニューが登場し、この物語の背景に秘められた真実が明かされていきます。ここからが本番と言ってもいいくらい。

この後半も、物語単体をとればそこまで新しい展開という訳ではありません。似たような設定を使った作品は、他にもあるでしょう。しかしこの作品の場合、前半を上手く隠れ蓑にして、後半に隠された事実を提示し、プレイヤーに意外な驚きを与えるという構成の上手さにおいて、類似の他作品とは一線を画する内容となっています。この作者さんは、人間の暗部をえぐるようなダークな展開、どこかねじれたようなキャラクターばかりが目立ちますが、実はこういう構成の上手さこそ真骨頂なのではないかと思います。

ダークで鬱な物語だけなら書く人はいくらでもいますが、この作者さんは、ダークな物語を作りつつ、決してプレイヤーを蔑ろにしていないんですよね。エンターテインメント性をきちんと盛り込み、どんなにダークな物語、感情移入できないような登場人物を出しても、きちんと読み手が「面白さ」「楽しさ」を感じられるような作りになっているのです。もちろん、物語それ自体でエンターテインメント性を出すのも手ですが、それをせずにノベルゲームならではの構成で面白さを出して見せるところが、この方の作品の売りだと思います。

後半のシナリオもエンディングは2つです。やはりどちらも綺麗なハッピーエンドではありません。が、こういう味の物語があってもいいと思いますし、二段構えの重箱を開けるような作りの物語はとても面白いと思います。上で書きましたように、エンターテインメント性のある作りですから(楽しい物語という意味ではありませんよ、念の為)、意外と間口は広い作品なのではないでしょうか。とは言え、独特の雰囲気はやはり合わない人には合わないかも知れませんが。

プレイはしやすいですし(ただ、マウスホイール上回転で読み返しが突然できなくなることが。ツール側の問題かも)、既読テキストの色が変わるのも親切です。ただ、名前表示欄が空白なのが謎です。その分画面が狭くなりますし、この作品の性格からして、名前表示はあった方が分かり易かったかも知れません。それと、何も表示されないのにクリック待ちになる箇所が多発し、少し煩わしく感じました。

ツールはティラノスクリプトで、プレイ時間は全部読んでも20〜30分です。プレイ時間の短さの割に、凝った仕掛けが施されており、この作者さんの作風がお好きなら楽しめるでしょうし、構造的な面白さがありますので、この作者さんの作品に触れたことがなければ、この作品から入ってみるのがいいかも知れません。ちょっと歪な兄妹の絆の物語を、味わってみてください。
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