第673回/届け広がれこの想い - それでも、うちのこかわいい(DTS3) - 日常
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第673回/届け広がれこの想い - それでも、うちのこかわいい(DTS3)

日常
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それでも、うちのこかわいい

それでも、うちのこかわいい推薦
■制作者/DTS3(ダウンロード
■ジャンル/趣味を持つ大人の情熱ノベル
■プレイ時間/15分

ドール(人形)が趣味の主人公。仲間とイベントに出たり撮影会をしたり、趣味を楽しんだりしていたが、結婚で仲間が趣味をやめていく。それでも趣味を手放さない主人公だが、いつしかドールの世界の中でもだんだん時代遅れの存在となっていた。そんな主人公は自分の想いを訴えるべく、同人誌の制作を思いつく。趣味を持つ全ての大人に送る短編ドラマ。

ここが○

  • 動きがあったり漫画風だったり、凝った演出。
  • 趣味を持つ人ならきっと心に響くテーマ。
  • だけでなく、人の繋がりの温かさを実感できる。

ここが×

  • セーブに入りにくかったり、少々プレイしにくい。
  • 少し説明不足なところも。
  • 取ってつけたようなバッドエンド。

■届け広がれこの想い

これをお読みの皆さんは、何か「自信を持って打ち込んでいる」と言える趣味をお持ちでしょうか。フリーのノベルゲームを愛好するというのは、かなり少数派の方でしょうから、もう既にそれだけで立派な、「人と違う趣味を持っている」と言えると思いますが、それ以外にも何かあるでしょうか。この作品はそんな、「趣味を持つ大人」であれば、きっと共感できる内容の物語です。

ちなみに私の場合ですと、手品(マジック)とサッカー観戦です。どちらも別に大人がやっていても恥ずかしい趣味ではないのですが、しかし大の大人がひねもすトランプやコインをいじっていたり、トランプを1ダース単位で購入したり、マジックのDVDが200本近く並んでいたりというのも、あまり普通ではないかも知れません(笑)。そしてこの作品の主人公の趣味は、ドール(人形)。私もよく知らない世界なのですが、作品で見るところによると、全高60cmで4万円もするような人形もあるようです。実は、序盤を読んだ時点では「危ない作品なのでは」と思ってしまったのは内緒エス(笑)。

それでも、うちのこかわいいそんなドールにお気に入りの衣装やら靴を着せて、写真撮影をしたりして楽しむ世界があるんですね。主人公はドールの世界にどっぷり浸かっていたのですが、何せお金がかかる趣味ですし、世間体もいいとは言えないのが現実。ドール仲間は、結婚その他人生の転機を気に、次々とドールの世界から足を洗ってしまいます。

この辺りは、趣味を持つ人間なら誰しも通る道でしょう。ドールでなくても、鉄道模型、釣り、楽器演奏、ラジコン、コスプレ、そしてもちろんフリーノベルゲーム制作等々……お金や手間がかかる趣味は色々あります。そんな趣味を持つ方は、序盤で主人公に非常に共感できるに違いありません。私自身、結婚して以前ほど手品にお金かけられなくなりましたし、手品関連のイベントにも滅多に出られなくなりましたしね。

更に主人公は、自分が愛するドールの世界ですらも、時代遅れの存在になっていってしまうのです。私もノベルゲームの世界では、どちらかというと時代遅れな存在になりつつある(もうなっている?(笑))ので、人ごとではありませんでした。この辺りの描写も、趣味を長く続けていれば必ずぶつかる葛藤だと思います。作者さんの実体験から来ているそうで、それだけに非常に主人公の心情が真に迫っていました。

そこで主人公は、自分の思いの丈を綴った同人誌を作り、イベントで出品しようと思いつきます。後半の展開も、そう都合よく運んだりはしません。お約束な展開はせず、「これが現実だよね」となってしまいます。自分の趣味の世界ですら居場所がなくなるって、居た堪れませんよね。しかしだからこそ、趣味を持つ全ての大人の心に、強烈に訴えてくる力を持った作品だと思います。

何と言ってもその後のまとめ方が非常に素晴らしい。現実でも十分ありうる範囲の綺麗な展開で、かつ安易な成功エンドでもなく、心がなんだか洗われるような展開を目の当たりにして、ちょっと感動してしまいました。終わりまで読めば、趣味を持つ大人はきっと、自信を持ってこれからも趣味に打ち込んで行こうという勇気をもらえるはずです(でも奥さんや子供に支障が出るのはだめですよ。家族に迷惑かけない範囲で楽しみましょう(笑))。

人物の絵は「コミPo!」というツールで作られたようです(主人公の絵は自作している箇所もある?)。そのせいか、背景も漫画風で構図もよく出来ています。ところどころに動きを伴った演出もあり、効果をあげていました。作者さんの処女作のようですが、各種ツールを上手く使い、見た目にもとても質の高い作品に仕上がっていました。ただ、セーブやスキップをするのにいちいち右下のアイコンをクリックするのだけは、少々面倒に感じましたが。

物語としても、起承転結がしっかり作られており、短編とは思えない構成と流れの良さを持っていました。少し説明不足に感じる場面もあったのですが、そこはそれ。漫画風の場面で十分状況や心情が想像できますし、全てを文章で説明しないのも、一つの演出です。この作品にはあったやり方だったのではないでしょうか。

ツールはティラノスクリプト(ティラノビルダー)。バッドエンドが3つとハッピーエンドが1つの合計4つのエンドで、プレイ時間は15分。15分のプレイ時間ですが、強いメッセージ性、起承転結の効いた展開、感情移入できる主人公の言動など、どれをとっても大変よく出来ている短編でした。創作に限らず、趣味を持つ大人は是非プレイしてください。悲しみも喜びも、主人公の思いがきっと心に響いてくるはずです。
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