第675回/夢は故郷を駆け巡る - 永遠の夢見(PONTARIUM) - 学園・青春
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第675回/夢は故郷を駆け巡る - 永遠の夢見(PONTARIUM)

学園・青春
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永遠の夢見

永遠の夢見■制作者/PONTARIUM(ダウンロード
■ジャンル/田舎路線で思い出回想ノベル
■プレイ時間/30分

中学生の頃いつも利用していた、懐かしの汽車の中で、幼馴染の紗夜と再会したぽんたろーは、紗夜との思い出話に花を咲かせながら、列車に揺られる。思い出されるのは、紗夜と初めて会った頃の幼い日のこと、陸上部に打ち込んでいた中学生の頃のこと、そして……。揺れる列車の音がノスタルジーを掻き立てる、短編青春物語。

ここが○

  • 懐かしさを醸し出す全体の雰囲気。
  • 登場キャラクターがみんないい人。
  • 音楽や背景も、作品世界にぴったり合っている。

ここが×

  • 主人公の名前が投げやり。
  • ラストはどうにもすっきりしない。
  • 再プレイするとおまけメニューが消えてしまう。

■夢は故郷を駆け巡る

フリーノベルゲームでは断然人気のある、「夏の田舎」もののご紹介です。「夏に帰省」ものとは少し違いますが、2両しかない鉄道(「電車」と表記されていますが、田舎のローカル線なら大抵ディーゼル機関車か気動車だから、「汽車」の方が雰囲気に合っていたのでは)に揺られる冒頭から、どことなくノスタルジーを刺激されます。

列車の中で女の子と対話するという意味では、「夜半の夏、地下鉄にて」「第七号車」と似た雰囲気もありますが、独特のノスタルジックなムードは、「それじゃあ、またね」に似ている感じもします。きちんと描写はされていませんが、ヒロインの境遇も、「それじゃあ、またね」に似たものを感じますし。

永遠の夢見主人公のぽんたろー(この名前に最初吹いてしまった。ちょっと作品の雰囲気に合ってないような……。普通の名前じゃだめだったんだろうか?)が、故郷である奥瀬村を走るローカル線を走る列車でヒロインの紗夜と再会し、列車内で思い出話をするところから、物語が始まります。汽車の中での紗夜との会話シーンに、時折過去回想が挟まれるというスタイルで、話が進行していきます。

この構成が、とても作品世界に合っていました。設定自体はさほど新しいものではありませんし、過去回想を時折挟むという手法も、そこまで斬新という訳ではないのですが、汽車の中での会話と、過去の思い出シーンがバランスよく組み合わされ、お互いがお互いを引き立て合っています。この過去回想シーンは、イベントも適度に織り交ぜられている上、主人公たち以外の登場人物が、みんないい人たちで心が温まります。

信夫や隼人、それに中学校の陸上部の先生と、みんな主人公を違った形で支えてくれる、素晴らしい脇役でした。特に陸上部の先生はいいですね。陸上部の県予選のシーンは、主人公はもちろん、紗夜も先生もとてもいい位置で主人公を盛り立てており、またエピソードそれ自体もとても完成度の高い場面でした。間違いなく、この物語の魅力を高めている一つの要因になっていたと思います。

その後も列車のシーンと交互に回想シーンを挟みつつ進んでいくのですが、ラストに至って唐突に終わってしまいます。途中、紗夜が何かの問題(不治の病?)を抱えているようなことが示唆されるのですが、紗夜の事実も、結果どうなったかも何も描写されませんので、読了しても、何とも言えないもやもや感が残ります。「永遠の夢見」というタイトルから、色々想像できると言えばできるのですが……。

これが、例えば過去回想だけの物語であれば、そのように読者の想像に委ねる終わり方もありかも知れませんが、過去回想と列車のシーンを交互に挟む構成上、過去も現在もすっきり終わらないというのは、物語の終わり方としては隔靴掻痒の感があります。せめて、回想シーンか現在のシーンか、どちらかだけでも明確に何が起こったのか描写して、もう一方は想像にお任せしますという作りであれば、読者にある程度の想像の余地を残しつつ、消化不良感はかなり減ったのではないでしょうか。

と気になったところもあるのですが、個々のイベントはとても印象的ですし、構成も上手く、この作品ならではの世界を感じさせてくれる物語です。音楽もいい曲を選んでいますし、背景画像が何と言っても素晴らしい。夏の田舎の様子が、非常に伝わってくる写真ばかりです。また立ち絵も独特です。アニメっぽくない、デジタル全開ではない絵で、特に紗夜の絵は彼女にとてもマッチしていました。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢のない一本道で、プレイ時間は30分程度。読了するとタイトル画面から、次回作の予告編を少し見られます(が、再び起動すると見られなくなってしまう……)。物語としてはすっきりしない点が残るのですが、全体を覆う空気感やキャラクターのやり取りは、とても温かく、田舎暮らしの経験がある人ならば、共感しながら読めるのではないでしょうか。この時期にぴったりだと思いますので、設定に惹かれる方はご一読ください。
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