第677回/そしてこの言葉は真実になる - 灼夏幻夜(STARVAN!!) - 伝奇
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第677回/そしてこの言葉は真実になる - 灼夏幻夜(STARVAN!!)

伝奇
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灼夏幻夜

灼夏幻夜準推薦
■制作者/STARVAN!!(ダウンロード
■ジャンル/幻術バトル人情ノベル
■プレイ時間/30分

ある夏の夜、不良たちに絡まれている少女大塚早音を、柳田義之はとある術を使って助け出した。早音は行方不明になった恋人泰秀を探していると言う。一方義之は怪しい薬物を作っている男を探していた。成り行きから二人は一緒に行くことになるが、どうやら義之が探している男は早音の恋人らしかった。生きる希望を見出す伝奇風バトルノベル。

ここが○

  • バトルシーンが小気味良く迫力がある。
  • 熱く、生きることの素晴らしさを描くストーリー。
  • 短いながら起伏に富んだ展開。

ここが×

  • 短いので、人間関係その他語りきれていないところが。
  • システムや絵は荒削り。
  • 一部の描写が謎のまま。

■そしてこの言葉は真実になる

クロス×ヒート!」の作者さんの作品です(が、こちらの方が先に公開されています)。主人公の名前も似ていて、あちらは「柳下義之」、こちらは「柳田義之」です。まあ別に関係はないと思いますが。作者さんのサイトを見ると、「クロス×ヒート!」が一番のお薦めで、この作品はあまりお薦め度が高くなかったのですが、なかなかどうして良くできた物語でした。異能バトルものなので「伝奇」に分類しましたが、妖怪の類は出てきません。

「クロス×ヒート!」も非常に熱い物語でした。そしてこの作品は、あの作品とは作風が異なり、伝奇風のバトルアクションものです。主人公の義之は「煉獄」という一種の幻術の使い手です。これは、自分の経験を元に相手に感覚を伴う幻を見せると言うもので、あくまで自分が経験した感覚しか与えられないというのが、なかなか凝った設定です。

灼夏幻夜この手の作品では、こういう設定がまず非常にややこしくて、中盤までは何が何だか分からないということも多いのですが、この作品の場合は過剰に設定に凝りすぎることもなく、程よい設定の凝り具合でした。設定を盛り込むのって作者側にしてみればとても楽しい作業ですから、どうしても凝りすぎてしまい、知らず知らずのうちに読者に不親切になりがちですが、この作品は節度が利いていて良かったですね。

主人公の義之は、ある麻薬を大量生産している男を追っていましたが、その道中で不良たちに襲われている少女を助けます。その時に「煉獄」の力を使うのですが、冒頭いきなり首だの腕だのが吹っ飛ぶシーンから始まりますので、度肝を抜かれるかも知れません。設定通り、これは現実には起こっていることではありませんし、そういう描写は冒頭だけですので、そういうのが苦手な方は冒頭だけ我慢してください。

主人公の性格もそうなのですが、この物語も「クロス×ヒート!」同様非常に熱いです。こういう物語って、ともすれば主人公が世界や人間という存在に対して妙に皮肉っぽくなったりして、作品の雰囲気全体が何やら厭世的になることも少なくないのですが、今作は主人公が前面に「人間の生きる力、希望を持って生きることの尊さ」を押し出しており、またそれが嫌味になっていません。これはこの作者さんならではの作風だと思います。

短い物語ですので、結構飛ばし気味にストーリーが進んでいきますが、脈絡のない飛ばし方をするのではなく、きちんと順を追って展開しますし、その中で紆余曲折がありますので、読んでいて置いていかれることもなく、退屈することもありませんでした。特に終盤の展開がいいですね。義之の、泰秀に対する態度が格好いいです。主人公たるもの、こうでなくてはと思わされました。

ただ、短い中にかなり色々盛り込んでいますので、一部語り切れていないところもあります。例えば、柳田の家についてとか、早音の境遇とか、早音と泰秀の関係については、ほんの数行でさらりと流されるだけです。ここを少し詳しく描写すれば、もっと物語の厚みが増したような気もするのですが、そうするとこの独特のテンポの良さも失われるでしょうから、難しいですね。この作品を2時間で読んでみたかったような気もしますが、30分で終わる為にこの作品の良さが際立っている、とも言える気がしますし。

それと、煉獄が「自分が過去に味わった経験、感覚しか相手に与えられない」のであれば、冒頭の描写からして、義之は過去に首を切られたり腕を切られた、ということになりますが、これにも説明がなかったので、若干もやもやするものが残りました。まあ、本筋からすると些細な点と言ってもいいのかも知れませんが、ここら辺り含めて、過去回想などを上手く挿入すれば、より完成度が高まったかも知れません。

とは言え、わずか30分の物語でここまでしっかり起承転結のある、読み応えのあるストーリーを作り込むというのは、なかなか出来るものではありません。ラストシーンもいいですし、エピローグも上手く本編を補完していて、読後感もとても良好でした。主人公の義之はもちろんのこと、ヒロインの早音やライバルの泰秀、ちょい役のシンゴなど、短編なのにキャラクターも非常によく作られていたと思います。

ツールはNScripterです。文字表示速度を変更しても反映されなかったり(NScrにはよくある現象ですが)、全体に色々と荒削りな感は否定できませんが、地味な見た目で敬遠するのは勿体無い良作です。プレイ時間は上に書いた通りの30分で、選択肢はありません。戦闘シーンに迫力がありながら、気軽に読める異能バトルものを読んでみたい方は、この作品はまさにストライクゾーンだと思いますので、是非どうぞ。
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