第679回/木の葉は散っても想いは残る - それから枯れ落ちた木の葉は(CRAVE) - 病院・闘病
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第679回/木の葉は散っても想いは残る - それから枯れ落ちた木の葉は(CRAVE)

病院・闘病
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それから枯れ落ちた木の葉は

それから枯れ落ちた木の葉は■制作者/CRAVE(ダウンロード
■ジャンル/最後の一葉に想いを託す恋愛ノベル
■プレイ時間/30分

高校生の京太郎には、毎朝部屋まで起こしに来てくれる白河咲という幼馴染がいた。お互い密かに想いを寄せ合ってはいたものの、一歩踏み出せないでいたのだが、夏休み前についに京太郎が告白し、咲もそれを受け入れた。幸せな毎日が待っているかと思いきや、咲が京太郎に告げたのは思いも寄らぬ事実だった。王道を行く短編恋愛ストーリー。

ここが○

  • 清々しいほどの直球ストーリー。
  • 2人のやり取りも王道だが心地良い。
  • 背景や音楽の出来栄えがいい。オリジナルだとしたら凄い。

ここが×

  • 直球すぎて捻りには欠ける。
  • 何故か文字表示速度変更ができない。
  • 後半、咲が手術を受けるまでにはもう少し紆余曲折があっても良かったのでは。

■木の葉は散っても想いは残る

今回もまた、古めの作品からのチョイスです。ここのところ、あえて古めの作品を狙ってプレイすることが多くなっています。単に、過去プレイしたのにレビューしていない作品を補完する意味もありますし、また今の作品では得られない感覚を求めてという面もあります。初出は2007年くらいと思われます。ある意味、フリーノベルゲームが一番上り調子だった頃ですね。

だからと言って、今の作品よりも当時の方が質が高かったという意味ではないのですが、制作者とプレイヤーの数のバランスが非常に取れていて、いいものを作ればきちんと評価されたという、どちらにも一番いい時期だったのではないかと思っています。そんな頃に作られたこの作品は、超がつくほどの王道ストレート。夏休み明けの初っ端から、主人公を起こしにくる幼馴染の女の子。この安心感ですよ(笑)。

それから枯れ落ちた木の葉は主人公の京太郎と咲は、幼い頃からいつも一緒の幼馴染同士。この冒頭部から、付くや付かざるやの微妙な距離感の幼馴染恋愛ものが展開するのかと思いきや、実は京太郎は夏休み前に咲に告白しており、無事にOKをもらっていたのでした。無事、夏休み明けからリア充デビューという訳です。

そこから2人の楽しくも甘い学園生活が始まります。事実、序盤はいちゃいちゃというほどでもない、見ているだけでほのぼのしてくる高校生カップルの日常が描かれるのですが、しばらくして雲行きが怪しくなってきます。どうやら、咲は告白の時に、京太郎にある秘密を話したようです。そしてその秘密は中盤頃に明らかになります。咲は生まれつき心臓に持病を持っていたのでした。

中盤以降は、咲は入院してしまうので、主な舞台は病室に移ります。なのですが、咲の病状が目立って描写される訳ではないので、そこまでの悲愴感はありません。ここは好みが分かれるところでしょう。もっと病院ものらしさを前面に出すのも一つの方法でしょうが、そうすると前半の雰囲気との乖離が気になってしまうかも知れません。この作品の場合は、短編でもありますし、あれくらいさらっと流す方が合っているように思いました。

ただ、後半にはもう一捻りがあっても良かったのではないでしょうか。このストレートさがこの作品の魅力であるのも間違いないのですが、後半からラストへの「着地方法」は、流石に少しは捻りがあった方が、物語としての読み応えが上がった気がします。具体的には、咲が手術を受けるに到るまでの場面です。

ここで、血液型に問題があって手術が受けられない旨が描かれるのですが、そこから手術を受けるまでに、もう少し緊迫感のある展開を作ってみるのはどうだったでしょうか。展開はそのままでも、例えばだんだん衰弱していく咲や、自分にはどうしようもできない京太郎の葛藤を描くだけでも、かなり変わったはず。それが、ある日いきなり手術が決定してしまうものですから、少し拍子抜けしてしまいました。

ですが、ラストはなかなか上手いまとめ方だったと思います。O.ヘンリーの「最後の一葉」を少し下敷きにしたような展開なのですが、高校生らしさを見せつつ、適度に主人公らしさも見せたラストシーンは、最後を締めくくるには十分でした。欲を言えば、ラストのキーアイテムについて、前半から何らかの伏線を張っておけば、ラストシーンの感銘が、より深いものになったかも知れません。

それと、音楽や背景がよくある素材ではなく、いいものを選んでいます。曲は多分オリジナルと思われますが、メインテーマとエンディングテーマがアレンジ違いだったり、曲を使った演出もなかなかのものでした。こういうのは、曲を自作すればこそですね。もちろん物語は、捻りがないと言えばそれまでです。こういう物語を全く面白いと思えない人もいるでしょう。ですが、直球だからこそ伝わってくる作者さんの思いというものもあります。

この作品は、そういうところがよく感じられて、私がフリーノベルゲームを愛好する理由を、改めて実感させてくれた次第です。ツールは吉里吉里。吉里吉里なのに何故か文章表示速度が変更できず、それが少々不便ではあります。短編ですから我慢しましょう。選択肢はなく、プレイ時間は30分です。凝ったシナリオ、捻った舞台設定の作品の合間には、こういう作品もいかがでしょうか。このような素直な手触りに触れられるのも、またフリーノベルゲームという世界の魅力の一つだと思うのです。
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