第680回/星から星へ飛び交う乙女 - Space Freeters! ~天駆ける宇宙の乙女たち~(あいはらまひろ) - SF
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第680回/星から星へ飛び交う乙女 - Space Freeters! ~天駆ける宇宙の乙女たち~(あいはらまひろ)

SF
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Space Freeters! ~天駆ける宇宙の乙女たち~

Space Freeters! ~天駆ける宇宙の乙女たち~■制作者/あいはらまひろ(ダウンロード
■ジャンル/宇宙冒険ガールズトークノベル
■プレイ時間/30分

時は宇宙大航海時代。富と名声を得るため、それに飽くなき探究心を満たすために、宇宙を飛び回る冒険者。人呼んで「ランナーズ」。彼らは組織に所属せず、自分の腕と力だけで冒険を続ける。そしてランナーズとして宇宙に出たばかりの3人、ラナ、クルミ、マリコ。いきなり海賊戦艦に出くわした3人の、明日はどっちだ? ライトなSF冒険物語。

ここが○

  • 読みやすく、過不足のない文章。
  • 丁寧で整った作り。
  • 必要十分にして、物語をしっかり支えている設定。

ここが×

  • 地の文章がないため、分かりにくい場面もある。
  • 会話場面がちょっとごちゃつくところも。
  • 銃撃のシーンに一言説明があれば。

■星から星へ飛び交う乙女

最近古めの作品ばかり取り上げていますが、この作品は10年前の公開です。古くからのフリーノベルゲームファンにはお馴染み、「Beyond the summer」「今宵サンタは街角で。」の、あいはらまひろさんの作品です。ですから、間違いないクオリティです。ファンの方ならば間違いなく楽しめますし、初めてあいはらさんの作品に触れる方でも、その質の高さを十分に味わえます。

あいはらさんと言えば、突飛な展開や凝った伏線の波乱万象な物語ではなく、何気ない日常と、登場人物の細やかな心情描写が何より特長なのですが、今回はそのあいはらさんらしさは十分に出しつつ、他の作品にはない新機軸。今作はSFなのです。ライトなスペースオペラと言いましょうか。舞台は最初から最後まで宇宙。そして、宇宙の冒険者「ランナーズ」である、3人の少女が主人公です。

Space Freeters! ~天駆ける宇宙の乙女たち~3人は、船長でありパイロットでもあるラナ、オペレーター兼食事係のクルミ、それに機関士のマリコ。宇宙船ラリ・ホー号に乗り込み、ランナーズとしてデビューしたばかり。この3人をサポートするのが、ラリ・ホー号に搭載されたAIの「まろうど」。「まろうど」というネーミングが、暗示的ですね(主役3人をサポートする役、ということなのでしょうか)。

この3人にまろうども交えたメンバーでのやり取りが軽妙で、テンポも良いため、非常に快適に読めます。。時には全然本筋と関係ない脱線ぶりも見せまして、若干脱線が目につくところもありますが、それも一興か。こういう「どたばた会話劇」がお好きであれば、きっと楽しく読めるでしょう。何せこの作品にはいわゆる地の文がありませんので、テンポの良さは無類です。

反面、会話がばたばたしていて少し分かりにくいところもあります。この作品は、会話時に顔グラフィックスが表示されて、これはもちろん分かりやすくていいのですが、立ち絵は表示されません。立ち絵がなく、ただひたすら会話文が続くので、時々「どういう方向のやり取りなのか」が分かりにくくなる箇所もあるのですね。

立ち絵があれば、現在会話しているのが誰と誰なのかが分かります(最近は、会話に参加しているメンバーを表示させつつ、発言していないキャラクターの表示が暗くなるような工夫をしている作品もありますね)。が、この作品は立ち絵がなく、更に地の文が一切ないため、時々会話の構造が掴みづらくなるところが見られます。ここまで地の文を一切カットせず、多少でも入れば、かなり分かりやすさが増したと思うのですが……。

まあこれは、この作品の長所と背中合わせのようなものとも言えますし、地の文がないのは、恐らくは狙ってやったことと思われますから、これはこれでありかも知れません。物語の構造自体は分かりにくくないですし、聞き覚えのない単語がずらずら並ぶくどい説明文章が続くよりは、よほどいいと思います。地の文がないという弱点を補っているのが、AIであるまろうどの存在です。こういう作りの上手さは、さすがです。また、こういうのを作ると、どうしてもむやみやたらに設定を盛り込み、読み手が混乱することもあるんですが、設定と提示の仕方に過不足がなく、大変親切です。これは、SFに限らず設定が物を言う作品を作るのであれば、多いに勉強になるところです。

作りの上手さと言えば、この作品は細かいところも非常によく出来ています。レーダー風の画面とか、銃撃戦(相手は撃たないから、銃撃戦とは言えないか?)のシーンなど、デコレーションも作り込まれていて、作品世界を彩っています。立ち絵、1枚絵がなく、ある意味地味な作品ではあるのですが、こういう作品を読むと「絵が用意できないから仕方なく文章だけ」ではなく、「想像力を掻き立てるため、あえて絵はなし」という作風が立派に成立し、そして時にはそれが豪華な絵のある作品以上のリアリティを持って訴えかけてくるということが、よく分かります。

後半の敵との銃撃戦の結果で、多少展開が変わりますが、一度も命中させられなくてもバッドエンドになったりはしませんので、ご安心ください。ただ、最初はルールが分からず面食らいました。あそこは、パネルが高速で点滅し、最後についたパネルを撃つらしいです。直前に一言説明があれば親切だったかも知れませんね。

ツールはNScripterです。選択肢はありません。プレイ時間は30分くらいで、読了後には数本のおまけが読めます。ストーリーとしてはさほど捻ったところがないのですが、きちんと盛り上がりどころやオチもあり、安心して読めるタイプの物語です。ちょっと百合っぽい描写もあるのですが(ガールズパーティという企画用なので、そのためらしいです)、描写はごく軽めですので、苦手な人でも大丈夫でしょう。SFが好きな人はもちろん、SFが苦手な人も、あいはらさん流の「ほのぼのガールズSF」を、味わってみてください。
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