第681回/思い出ではなく未来を描こう - 君のいる明日(ほろほろほろろ) - 学園・青春
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第681回/思い出ではなく未来を描こう - 君のいる明日(ほろほろほろろ)

学園・青春
  • comment4
  • trackback-

君のいる明日

君のいる明日準推薦
■制作者/ほろほろほろろ(ダウンロード
■ジャンル/女の子の友情と過去との決別ノベル
■プレイ時間/2時間

高校2年生の御嶋莉英は、始業式の登校時に妙におどおどした女生徒に出会う。新入生かと思い道案内をしてあげた莉英だが、実は彼女が自分のクラスの転入生と知って驚く。その女生徒怜佳は、何故か莉英には積極的に話しかけてきた。だんだん2人は仲良くなるのだが、2人にはそれぞれ秘密があって……。色々なテーマが絡み合う学園青春恋愛物語。

ここが○

  • タイトルの意味がラストで分かる奥の深さ。
  • 複数のテーマが絡み合う重層的な構造。
  • 等身大のキャラクターと飾らない描写。

ここが×

  • とにかく読みにくい。
  • その上文章読み返しができない。
  • 複数のテーマが、時に的を絞りきれていない。

■思い出ではなく未来を描こう

最近は、特にweb小説でやたらめったら長いタイトルが目立ちます。「俺が〜したら〜だった件」なんてタイトルは、もうほとほと見飽きました(笑)。こういうタイトルは流行なのでしょうが、web小説では「タイトルで内容が説明しやすい」というメリットもあるものの、覚えにくく、読み終えた頃にはタイトルを忘れているというデメリットがあります。また、ラストに至ってタイトルの意味が分かるというような、粋な使い方もできません。

そしてこの作品。シンプルなタイトルなのですが(「君といた夏」と似てますね)、このタイトルにはきちんと意味があって、ラスト近くでタイトルの意味が分かるのです。これは気の利いたタイトルワークですね。やたらタイトルを長い文章風にするのも、たまにであるなら読み手にアピールするでしょうが、あまりに連発されると工夫のなさを感じてしまいます。こういう意味のあるタイトルには、好感が持てます。

君のいる明日この作品には、絵が全くありません。前回の「Space freeters!」は、顔グラフィックスがあり、文章表示は下部ウィンドウでしたが、この作品はそれもなく、全画面ウィンドウ。典型的なノベルゲームタイプです。絵がない分読み応えがあり、飾らない素直な文章、丁寧な描写が楽しめました。美術部、病気という組み合わせは「四角い恋人」を少し思い起こさせました(物語の味わいは全く違いますが)。

ただ、これは最初に書いてしまいますが、あまりにも読みにくいです。横長のウィンドウにびっしり文章が表示される上、改行ピッチも広めとは言えず、フォントサイズも小さめ。更にルビは一切振られていません。また、小説の決まりごとが全然守られていないため(段落の頭や会話文の後は一字下げる、感嘆符や疑問符の後は一字空ける、三点リーダーは偶数回繰り返すなど)、ぱっと見で明らかに目に優しくありません。

加えて、文章だけの作品なのに読み返し機能がないのです。これには流石に参ってしまいました。ノベルゲームだからと言って、厳密に小説の決まりを守らないといけないとも思いませんが、単純に見にくいです。せめて、1行の文字数や文字サイズを調整し、時々適切に空白行でも挿入すれば、かなり印象が変わったのではないかと思うのですが。

さて、主人公は高校2年生の御嶋莉英と、彼女のクラスに転入してきた星乃怜佳。物語のテーマは主に3本です。1つは莉英と怜佳の友情物語、2つ目は莉英の過去の問題、3つ目は怜佳に隠された秘密、4つ目は莉英と加山くんとの関係。短い物語ではないのですが、盛り込まれたテーマが結構多く、それらが並行して語られます。更に視点が頻繁に変わるので、読んでいる途中で「あれ? 視点変わった?」となったことも(これももう少し分かりやすければ)。

この4つのテーマが、バランスよく絡んで進んで行き、だんだん後半へ向かって物語が盛り上がっていきます。この展開バランスが上手いですね。中盤まではほとんど日常描写ばかりで少し退屈なところもありますが、莉英の過去や怜佳の秘密が少しずつ明らかになっていき、しかもそれが徐々に繋がっていく様子は、読み応えがありました。それぞれのテーマそれ自体はよくあるものですが、組み合わせ方が良かったように思います。

が、テーマを4つも盛り込んだため、一部で的を絞り切れていないように思える箇所もありました。主に恋愛描写です。過去の彼氏である遥との描写がいまいち薄い割に、ラストシーンがああいう描写というのは、ちょっと収まりが良くないと思いましたし(最初私はあの手紙の相手は怜佳だと思って、助からなかったのかと思いました)、加山くんについては、途中まではどう見ても莉英とくっ付きそうに思えなかったのに、いきなり気持ちが接近してしまっています(後半まではかなり出番も少ないですし)。

逆に、莉英と怜佳の関係はかなりしっかりと描かれており、説得力もあります。同性愛的な描写ではなく、純粋な友情でいいのではないかと思ったのですが。何故なら、そのために怜佳と莉英の関係に、奇妙な「すれ違い」を感じたからです。純粋な友情であれば、もっと2人の気持ちが通い合って見えたのでは? 莉英は、怜佳には友情を、加山には恋心を抱いているのですが、怜佳はそれを一人で両方持ってしまっているため、そこにバランスの悪さ、一方通行的なものを感じてしまったのです。まあ同性愛的と言ってもあくまで精神的な描写に留まっており、露骨な表現はありませんので、そこはまあいいかなと。

冒頭にも書いた通り、タイトルの意味が分かる後半の展開は今作一番の見所で、胸に迫ってくるものがありました。凄く洗練されているという訳ではないのですが、その分フリーらしい勢いを感じられる物語です。ツールはティラノスクリプト(ビルダー?)で、プレイ時間は2時間。選択肢はありません。地味なのですが、2時間を飽きさせずに読ませてくれる青春物語。このジャンルがお好きならばお薦めです。
関連記事

Comments 4

-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/20 (Sat) 16:21 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>内緒コメントの方

ご連絡ありがとうございます。確認してみましたが、リンクの間違いがどのページなのか分かりません。よろしければ、どのページか教えていただけないでしょうか?

2019/07/21 (Sun) 09:28 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/21 (Sun) 11:38 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>内緒コメントの方

修正いたしました。自分ではなかなか気付きませんので、ご報告大変助かります。ありがとうございました。

古い作品にも、素晴らしい物語は多数ありますので、興味をひかれた作品は是非プレイしてみてください。今後ともNaGISA netをよろしくお願いいたします。

2019/07/21 (Sun) 17:14 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply