第682回/心残りは一年分 - 幽霊の君は(もふもふ尻尾研究会) - コメディ
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第682回/心残りは一年分 - 幽霊の君は(もふもふ尻尾研究会)

コメディ
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幽霊の君は

幽霊の君は■制作者/もふもふ尻尾研究会(ダウンロード
■ジャンル/幽霊の心残り探しノベル
■プレイ時間/45分

宮月修也が毎日通る通学路に、1年くらい前から制服を来た女の子が立っていた。ある日声をかけてきた彼女は、どうやら幽霊らしい。自分が誰なのか、名前すらも覚えていないという。成り行きから、修也は幽霊の少女の心残りを探すことになったが、相手が記憶喪失なだけに一筋縄では行かず。動画で油断していると、内容とのギャップに驚くこと必至。

ここが○

  • 思わず笑ってしまうキャラのやり取り。
  • 分岐ものとしてしっかり作り込まれている」。
  • その分岐を目で見せてくれるフローチャートが非常に分かりやすい。

ここが×

  • このノリは好き嫌いが分かれるかも。
  • 主人公の言動も好みが分かれそう。
  • U子の秘密が明かされる箇所は、少し唐突感。

■心残りは一年分

タイトルからお分かりの通り、幽霊もののご紹介です。幽霊ものと言えば「綾さんのお役に立たせてください!」「花は誰そ彼に死折れる子。」「幽霊には祈らない」などなど、個性的な作品が揃っています。幽霊ものって、設定から特殊ですから、ある意味「何でもあり」で、個性的な物語を作りやすいんでしょうか。この作品も負けず劣らず異彩を放っている物語です。

まずは、開始すぐに画面に出る「このゲームは貴方の為のゲームではありません」という表示に、何となく嫌な予感が(笑)。その後の豪華なオープニングデモが目をひきます。登場人物とそのセリフが順々に紹介されるという、定番のパターンではありますが、本編への期待を高めるには十分な出来栄え。そうして始まる本編ですが、なかなかにぶっ飛んでいます。

幽霊の君は主人公は高校生の宮月修也。通学路で女の子の幽霊に出会うところから始まります。その幽霊は、自分の名前すらも覚えていない記憶喪失。彼女に付きまとわれた修也は、彼女の心残りを探すべく、一緒に行動することになったのですが。……とこう書くと、何だか心温まる話が始まるような感じがするでしょう? そう思って読んでいると、いきなりの凄い展開に巴投げを喰らいます(笑)。

文章や会話は基本的に妙にシニカルなのですが、それでいてどことなくずれた、漫才のようなやり取りが笑いを誘います。幽霊だから「U子」というネーミングの適当さが、序盤のこの作品を象徴しているかと(笑)。当たり前の方法で作れば、心温まる物語が作れそうなテーマなのですが、正攻法を使わず、「感動させる」という方向へ全然振らない結果、他の作品にはない個性を放つ物語となっています。

主人公とU子のやり取りもずれていて面白いのですが、何と言っても僧侶(?)の「Tさん」が凄いキャラクターです。「修也次郎」がツボでした(次郎て何(笑))。彼を見る為だけにでも、この作品をプレイする価値があると言っても過言ではありません。まあ、彼が出てきた時点でまともなエンディングは期待できないルートに入ってしまっていますが、この作品は全エンディングを制覇する助けになる、非常に便利なシステムが搭載されていますので、その点心配ありません。

そのシステムとは、フローチャートの図が表示できることです。全ての分岐が模式的に描かれており、到達したエンディングも一目で分かります。しかもこれがいつでも確認可能なのです。これは凄いアイディアだと思いました(ちょっと「この世の果てで恋を歌う少女YU-NO」という作品を思い出しました)。選択肢が結構多い作品なのですが、このシステムのお陰で攻略が全く苦になりません。これは手間がかかったことでしょう。

エンディングは全10種類。エンドロールが流れるトゥルーエンド以外は、何だか投げやりな終わり方が多いのですが、トゥルールートに近くなると、U子の秘密が段々明らかになっていきます。彼女は一体何者なのか、何故彼女は死んでしまったのか、そして彼女の心残りとは何なのか。これらが徐々に明かされている作りは、なかなか巧妙です。お馬鹿なギャグゲーかと思いきや、物語としての作りもおざなりにされていません。

とは言え、主人公の言動にはかなり癖があるので、人によって合う合わないがあるかも知れません。バッドエンドに行く時の主人公の言動は結構酷く、「そりゃバッドエンドにもなるよね」と妙に納得してしまいました。しかし、トゥルーエンドでは主人公は、言動こそ最後まで若干おちゃらけ気味ではあるものの、ちゃんと物語の中で大事な仕事をしてくれており、その意味で、主人公らしい主人公と言えます。さりげないラストシーンの収まりの良さもあって、良い読後感を提供してくれました。ただ、U子の秘密(家庭環境などや絵に関する云々)については、少し唐突感も感じましたので、前半からもう少し描写があっても良かった気がするのと、神様のどうのこうのというオチのつけ方には、少し釈然としないものが。

最初に「貴方の為のゲームではありません」と言う挑戦的な文章が表示されるだけあって、万人受けする作風ではないかも知れませんが、分岐フローチャートを始めとしてしっかり作り込まれており、作品としての完成度は非常に高いです。背景はちょっと大雑把な手描きの絵ですが、これが立ち絵に不思議にマッチしています。

ツールはティラノスクリプト。エンディングは、トゥルー1つにバッドが9種類で、合計10種類です。プレイ時間は45分。上述のフローチャートがありますので、攻略は簡単です。感動するようなタイプの物語ではありませんが、変化球の作りの中で、しっかり作られたキャラクターがそれぞれの役割を果たした結果、単なるコメディ以上の物語に仕上がっているように思えました。単純に笑えるので、深く考えずにプレイしてみてください。
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