第684回/四人でひとつの幸運を - 四葉のクローバー(Unreality) - ミステリー・サスペンス
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第684回/四人でひとつの幸運を - 四葉のクローバー(Unreality)

ミステリー・サスペンス
  • comment0
  • trackback-

四葉のクローバー

四葉のクローバー■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/四人の夢と現実ノベル
■プレイ時間/40分

一葉が気が付いた時、そこは見知らぬ部屋のベッドだった。どうやらそこは夢の中の世界らしく、その世界では一葉、二葉、三葉の3人が前触れもなく入れ替わるのだ。夢の世界での高校生活を楽しみつつ、現実世界では3人はこの世界の謎について話し合う。果たして夢の世界に隠された秘密とは? 短編ながら仕掛けが面白いライトサスペンス。

ここが○

  • 二重三重に張り巡らされた、読み応えのある面白い仕掛け。
  • 日常シーンも楽しく読める。
  • すっきり綺麗なラスト。

ここが×

  • 仕掛けに説得力を持たせる描写が少し不足の感。
  • 過去の秘密が若干唐突。
  • 綺麗は綺麗だが「それでいいのか!?」と言ってしまいそうなラスト。

■四人でひとつの幸運を

永遠の紡ぎ」「黒白の夜」でお馴染みの作者さんの作品。なんと今回でこの作者さんの作品は、全て取り上げたことになります(通常9作品、掌編1作品)。10作品というのは、NaGISA netで最多登場です。これだけの本数がありながら、どの作品も捻りを効かせた読み応えのある作品が多く、それだけでも敬服に値します。

この作者さんの書く物語は、とにかくどの作品も、トリックと言いますか、仕掛けに凝っています。叙述トリック風であったり、独特の設定を使ったどんでん返しだったり色々なのですが、どの作品にも必ず読者の意表を突くポイントがあり、それが読むときの楽しみの一つでもあります。この作品も期待を裏切らない面白い仕掛けがあり、短いながらも楽しめる物語でした。

四葉のクローバー冒頭に少し意味深な場面が描写された後、病室で主人公の諏訪野一葉が目覚めるところから物語が始まります。一葉にはどうやら記憶がないようで、治療の一環として西尾高校という高校に通うことになりました。その高校には、百合気味の委員長藤原エリカや、隠れヲタの生徒会長天羽雲母がいて、賑やかながら楽しい学園生活。女性キャラしか出てこない物語なので、ありきたりな描写だと性別バランスの悪さを感じそうなのですが、学園生活の描写が面白く、それを感じさせませんでした。

ところが、普通の学園生活を送っていた一葉の人格が、何の前触れもなく運動は得意なものの勉強はからっきしで姉御肌の二葉や、逆に運動は全然で勉強は得意な三葉と、ころころ入れ替わってしまうのです。その度に周りのエリカや雲母は大混乱。これは「夢の中だから」ということなのですが、この辺りのパニックぶりは読んでいてもとても面白く、単純にパニック系学園コメディとしても、とてもよく書けていると思いました。

そして夢から覚めた現実世界では、一葉、二葉、三葉はちゃんと3人います(変な表現だな)。3人は現実世界で、夢の中の話を色々するのですが、奇妙なことに3人とも同じ夢を見ているのです。更に、翌日には前日見た続きのシーンから夢が始まります。現実世界で色々と夢の中での対策を考える3人。

さて、中盤までは特に謎らしい謎もなく、よくある学園もののように進んでいきますが、中盤からいきなり物語が動き始めます。この仕掛けが何と言いますか、発想の転換の勝利ですね。単純に1つの仕掛けだけで物語を作っているのではなく、仕掛けと設定を上手く絡ませて、短いのに鮮烈な驚きを与えてくれました。なるほど上手く考えてあるなあと。隠されている設定の1つは、サスペンス系の物語ではよく使われるものですが、意外と物語にマッチさせるのは難しいものです。その意味で、この作品は設定と謎がしっかりリンクし、一本の物語として非常に上手く仕上がっていたと思います。

ただ、一葉たちの過去についての描写が非常に少なく、そこは少し唐突感を感じました。途中ほんの少しだけ過去回想みたいな感じで書かれてはいるのですが、「え、そんな重要な過去がそんなにさらっと流されるの?」という印象は否めません。原発云々のところも、もう少し描写が欲しいように感じました。物語としては非常にまとまっているので、もう少し長い尺で読んでみたかったですね。

そしてラスト。ラスト近くまでは、どう考えても綺麗にまとまりようがない展開をするのですが、掟破りなハッピーエンドにはたまげました。その為読後感はいいのですが、少し好き嫌いが分かれるかも知れません。「それ根本的な問題が解決していないどころか、余計に大変なことになるのでは!?」と思ってしまったのは内緒です(笑)。まあ、賑やかで最後までこの作品らしい幕引きとも言えますし、これはこれでいいのかも知れません。

この作品は、サスペンスとしてもよく出来ているのですが、学園部分との落差が魅力です。エリカや雲母のキャラクターも面白いですし、雲母の父親をみんなで説き伏せるシーンは、キャラクターの魅力がとてもよく出ていた上、展開上でも非常にいいアクセントになっていました。こういう「緩くコメディ風だけど、最後でびしっとサスペンス」というのは、この作者さんならではの作風です。

ツールはLive Makerで、選択肢はありません。プレイ時間は40分くらい。こういう作風の作者さんは多くありませんから、是非とも今後ともこの方向でまた新しい作品を公開されることを期待しています。百合っぽい描写が結構あちこちにあるのも、この作亜さんのお約束です(笑)。短編ながらしっかりした構成の作品ですし、全体に雰囲気が明るいですから、サスペンスを苦手とする人でも、軽く楽しめますよ。
関連記事

Comments 0

Leave a reply