第686回/魔王の笑顔、少女の素顔 - 死神のKISS(荒咲りゆ) - ファンタジー
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第686回/魔王の笑顔、少女の素顔 - 死神のKISS(荒咲りゆ)

ファンタジー
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死神のKISS

死神のKISS■制作者/荒咲りゆ(ダウンロード
■ジャンル/魔王と少女の日常ノベル
■プレイ時間/15分

魔界の王に仕える人間の少女、凛音(名前任意)。気さくではあるものの圧倒的な実力を持つ魔王の元に、今日も人間の勇者がやって来たが、魔王はあっさり返り討ちにしてしまった。そんな魔王は、ゲームが好きだったりと意外とお茶目で庶民的一面が。そんな魔王と凛音との、楽しく平穏な日常も、いつかは終わる日が来る。ほのぼの魔界日常ノベル。

ここが○

  • 魔王と凛音のやり取りが楽しい。
  • 声の演技が上手くハマっていて盛り上がる。
  • それまでの雰囲気を一変させるラスト。

ここが×

  • 設定が少々怪しい。
  • ラストは意外だが、何らかのフォローが欲しかった。
  • なので読後感がどうもすっきりしない。

■魔王の笑顔、少女の素顔

たそがれユヴァスキュラ」「永3-Eimin-」の作者さんの作品です。ノベルゲームコレクションの登録番号から察するに、この作品がどうやら一番古いように見受けられます(違ったら教えてください)。この作者さんの作品は、主人公が全員女性ですが、キャラクターメイキングはどの作品にも共通しているように思えます。性格が同じということではなく、方向性が似ているということですね。

また、主人公の相手役の男性キャラクターも、方向性は似ているのですが、それぞれに強調されている性格が違って興味深いです。「永3-Eimin-」のキーヤ、「七日目の花嫁」の龍神様、「たそがれユヴァスキュラ」の黎牙など、似ているところもありますが、それぞれ細かい性格付けが違います。そこらの味わいの違いを楽しむのも、同じ作者さんの作品を色々プレイする面白さです。

死神のKISSこの作品は、全部読んでも15分の短編です(台詞を残らず通して聞けば、もう少しかかるかも)。なので最初は掌編レビュー枠で取り上げようと思ったのですが、超短編とは思えない面白い趣向が盛り込まれていますので、通常枠で取り上げることにしました。この物語の舞台は、魔族が跋扈する魔界です。その魔界を統べる魔王と、魔王に仕える人間の少女、凛音が主人公です。この魔王は、魔界に攻めてきた人間の勇者を、あっさり一蹴するだけの圧倒的な実力の持ち主ですが、ゲームにはまっていたり、意外と庶民的なところもあります。

そんな魔王と凛音の、凸凹コンビぶりが楽しく、やり取りを見ているだけで面白いでしょう。凛音に料理のリクエストをしたり、2人で人間界にゲームを買いに行ったり、独特の設定と展開のずれが笑いを誘います。この作者さんは、こういう「ずれているけど嫌味がない。べたべたしてなくて微笑ましい」キャラクターのやり取りや関係を書かせると、非常に上手いなと思わされました。

そんなほのぼのした日常から、ラストは急転直下の展開を見せます。流石にこの展開は全く読めませんでしたので、驚きました。起こる事件も突然ならば、展開もそしてキャラクターの変化までもがプレイヤーを不意打ちしますので、読んだからは必ず驚くでしょう。そしてここに至って、タイトルの意味が分かります。短い作品ですが、プレイヤーに与える衝撃は尋常一様ではありません。

ただ、確かに意外なラストではあるものの、読後感がいいかと言われると、それはちょっとと言わざるを得ません。魔王への想いを何ら語ることなく、淡々と職務を遂行し、一方の魔王は最後まで疑うことがありません。せめてエピローグででもいいので、何らかのフォローが欲しかったような気がしました。逆に、ただのおちゃらけキャラだと思っていた魔王の印象が、最後で大幅に変わったのも事実ではあります。

その印象を更に強めるのが、読了後に読める2つのおまけシナリオの2つ目です。ここまで読むと、作者さんが描きたかったのは、メインの主人公である凛音ではなく、むしろ魔王の生き様(死に様)だったのではないかとも思えてきました。だとすれば、確かに読後感はすっきりしない終わり方ではあるのですが、この終わり方にはそういう意味では意義があるのではないかとも感じました。

それと、魔王の元に勇者が攻めてくるのに、人間界へ行ってみるとテレビゲームが売っていたり、メイドカフェがある完全な現代日本だったのには、少しずっこけました(笑)。中世欧州の方が雰囲気出て良かったような気もしますが、それだと魔王がゲームで遊ぶところが見られませんね(笑)。まあ、こういうごった煮感もこの作者さんの持ち味という気もしますから、これはこれでいいのかもと思いました。

ツールはティラノスクリプト(ビルダー?)です。プレイ時間は上に書いた通り15分で、選択肢はありません。。読了後はおまけシナリオが2本読めて、このうちの1本目が笑えますので必見です。また、凛音以外はモブキャラまでもフルボイスなのですが、この声がなかなかの好演です。短い作品ですから、全部の声を聞きながらプレイした方が楽しめるかも知れません。この作者さんの男女の掛け合いの描き方が好きな方なら、きっとお気に召すでしょう。かっこいいのにどこか抜けたヒーロー(魔王をヒーローとはこれいかに)の生き様を、とくとご覧あれ。
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