第687回/首長竜は三度口を開く - 飲み込めないくびながりゅう(サゲスミン王子描きLOKI) - オムニバス・その他
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第687回/首長竜は三度口を開く - 飲み込めないくびながりゅう(サゲスミン王子描きLOKI)

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飲み込めないくびながりゅう

飲み込めないくびながりゅう■制作者/サゲスミン王子描きLOKI(ダウンロード
■ジャンル/首長竜と戯れる不思議ノベル
■プレイ時間/15分

主人公は毎日首長竜に会いに行っていた。その首長竜は、何故か飲み込むのが苦手で、何を与えても吐き出してしまう。果たしてこの首長竜は一体何なのか? 何故飲み込むことができないのか? そしてこの世界はどうなっているのか? 全ての秘密が、たった1回の選択肢で全然変わってしまう、風変わりな短編物語。

ここが○

  • 独特のタッチのイラストが綺麗。
  • 選択肢1つで全然違う分岐を楽しめる。
  • どの分岐でも、世界観にオリジナリティがあって面白い。

ここが×

  • 後書きの解説には蛇足感が。
  • 人物の絵柄は好みが分かれるかも。
  • 終わり方がすっきりしないエンディングも。

■首長竜は三度口を開く

時々合作ものは見ますが、共通ルートから先の分岐を、複数のシナリオライターが書くという作品は、そう多くありません。ぱっと思いつくのは、「エイト・ストーリーズ」、そして「ななつぼし」でしょうか。……って、どっちも私が関わった作品やないかーい!(笑) まあ、それはそれとして、どちらも面白い作品ですので、是非やってみてください(宣伝)。

この作品も、同様の手法で作られた作品ですが、3つの分岐を作ったのは、3人の兄弟とのことです。兄弟であれば、実際に顔を付き合わせて、いつでも打ち合わせもできるでしょうし、ある意味合作には一番向いている環境かも知れませんね。まあ、全員創作の趣味を持っている兄弟(または姉妹)というのも、そうはいないでしょうが。とにかく、短編分岐ノベルとして非常に真面目に作られた作品です。

飲み込めないくびながりゅう冒頭は、主人公が湖に棲む首長竜に、餌を上げようとするシーンから始まります。しかし首長竜はどうしても飲み込むことができず、吐き出してしまいます。困った主人公は、事態を打開すべく新たな作戦に打って出る、というところで選択肢。ここの選択肢により、その後の展開が3種類に分岐します。上で書いたように、3種類の分岐は三兄弟が作っており、展開が違うばかりか、設定も変わってしまいます。こういう面白さは、複数作者の合作ならではの強みですね。

最初の分岐は、首長竜の設定が特殊で、SF風の展開です。SFショートショートという感じ。SFらしい展開、オチが付きます。掌編としてよくまとまっていますが、後書きが少々蛇足にも感じました。あそこまで書くなら、本編でそこまで描写しても良かったのでは。その方が収まりがいいように思いました。まあ、後書きがなくてもお話としてはきちんと形になっているのですが。

2番目の分岐は、ちょっと暗い展開。主人公には病気の妻がいるという設定のお話が進行します。ちょっとブラックというか、不条理なストーリー。主人公に対し、博士が妙にシニカルなその対照的な描写が面白い。ただ、この話は趣味が分かれるかも知れません。ある意味ではハッピーエンドと言えなくもないのですが。ちなみにこの話だけ、後書きがほとんどありません。この話こそ、少ししっかりフォローアップが欲しかった気もします。

3番目の分岐は、一番ほのぼのしたお話。首長竜がものを飲み込めなかった理由も、現実にもありえそうなもので、「そりゃ飲み込めないよね」という(笑)。この3番目の話が一番肩の力を抜いて読めるでしょう。終わり方も綺麗で、派手さはないものの、3本のお話を締めくくるのに相応しい内容だったと思います。

絵は、フリーノベルゲームでは非常に珍しいタイプの絵柄です。色使いもポップで、水色やオレンジの葉の椰子の木も、いいアクセントになっています。人物の絵柄は好みが分かれるかも知れませんが、このファンシーな絵柄のお陰で、1本目や2本目のシナリオの、ちょっとダークだったり、ちょっとシニカルだったりする印象がかなり軽減されており、全体の雰囲気を柔らかく保っているのが、この作品ならではの魅力だと思います。

選択肢によって、世界観までも全然変わってしまうのですが、短い物語だけに大きな破綻もなく、どの話も綺麗にまとまっています。私も合作ノベルで2作とも共通ルートを書いたので分かるのですが、共通ルートってやはりよくある出だしにした方が書きやすいですし、後も続けやすいんですよね。ですがこの作品は、こういう変わった共通ルートから、更に3本とも全く違う物語が出来た辺りが凄いと思います。兄弟制作ならではと言えましょう。

ツールはティラノスクリプト。選択肢は1ヶ所だけで、プレイ時間は1ルート辺り5分。合計15分というところです。とにかく、他にないオリジナリティのある世界観と物語です。もちろん、後味がいいとは言えないルートもあるのですが、全体の雰囲気はあくまでライトでポップ。味わってみる価値のある作品だと思います。
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