第688回/点が繋がり線になる今 - キリトリ線(三尺寝) - 学園・青春
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第688回/点が繋がり線になる今 - キリトリ線(三尺寝)

学園・青春
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キリトリ線

キリトリ線■制作者/三尺寝(ダウンロード
■ジャンル/過去視で真実を探る学園ノベル
■プレイ時間/4時間半

高校3年生の梶康平は、さしたる将来の目標もなく学生生活を送っていた。将来について悩むものの、さして深刻には考えていない。そんな彼には、他人の過去を夢で見ることができるという特別な力があった。そして知り合う4人の女性。彼女たちやクラスメイトとの交流を通じ、康平は何を見るのか。そして康平に隠された秘密とは? 長編学園物語。

ここが○

  • イラストが非常に綺麗。
  • ちょっとドライながら個性的なキャラのやり取り。
  • 秘密が先への引きを上手く作っている構成。

ここが×

  • ドライすぎて感情移入しにくいやり取り。
  • 最後まで読んでもなんだかすっきりしない。
  • セーブロードが妙に使い辛い。

■点が繋がり線になる今

最近、高校が舞台の長編作品って、あまり見なくなったような気がします。より変化、捻りを求める方向へ行っているのかも知れませんが、高校生活というのは、ほとんど誰もが経験することですから、やはり感情移入しやすいという点、物語に説得力を持たせやすいという点(特殊な設定がないですから、描写しやすいですよね)で、質の高い物語を生み出しやすい素材だと思います。

この作品は最近公開された訳ではないのですが、普通の学園ものの親しみやすさに、ちょっと変わった設定をプラスして、興味深い内容に仕上がっています。何より最初に目をひくのは、圧倒的な立ち絵、一枚絵の美しさ。絵柄もアニメ調ではなく、少女漫画風とでもいうのか、ノベルゲームではあまり見ない感じで、オリジナリティがあります。

キリトリ線主人公の梶康平は、受験を控えた高校3年生。実は彼には、他人の過去を夢で見ることができるという変わった能力がありました。ただしいつでも見られる訳ではありません。その人との会話で「キーワード」を拾った場合のみです(青字で表示されます)。そのあと眠りにつくと、そのキーワードに応じたその人の過去が見られます。ちょっとSF風の、興味をそそられる設定ですね。

そんな康平が、色々な女性と知り合って繰り広げる、比較的長い期間の物語です。開始時が7月上旬で、冬の手前くらいまでありますから、4ヶ月くらいでしょうか。いわゆる「カレンダー消費型」であり、更に要所では行き先をマウスクリックで選ぶ「クリッカブルマップ型」でもあります。この形式、最近ではあまり見ないですよね。クリッカブルマップ形式の作品は、難易度が高い傾向にありますが、この作品は行った先で誰かと出会っても、その人と会話するかどうか選べ、会話しなければ他の場所にまた行けますから、そこまで難しくありません。

攻略対象は4人。まず、突然意識を失って倒れてしまうという癖(?)を持っている後輩の仁槻悠。二十歳を過ぎているのに何故か後輩という、チャメこと茶村優希乃。無愛想な後輩の高崎和未。それに友人の臼井白樺の姉で、意識を失って寝たきりになっている臼井椿。なかなか個性的な面々です。4人中3人が後輩というのも珍しい(1人は年上ですが)。基本は、同じキャラを狙って会って行けばそのキャラのルートに入れます。和未は登場前は加瀬に、椿は弟である臼井に会って行けばOKです。選択肢も結構ありますが、それほどシビアにならなくても大丈夫だと思います。その意味では、プレイヤーに優しい作品だと思います。

キャラクターはなかなか個性的で、主人公も変わった能力を持っているため、普通の学園ものとは違う、不思議な雰囲気で話が進んでいきます。そして、描写も人間関係も、どちらかと言えばかなりドライな描き方に終始しています。それはそれで、過剰にべたべたし過ぎず、比較的長い物語をさらさらと読ませてくれるメリットもあるのですが、こと人間関係においては、ドライ過ぎて、細かな人間関係の綾のようなものが、いまいち描き切れているとは言い難いきらいがあります。

例えば、悠は出会ってすぐに家に遊びに来ますし、チャメにしても似たようなものです。そして後半には何故か仲良くなっているため、ちょっと人間関係が説得力を欠いています。せっかく魅力的なヒロインが4人もいるのですし、もう少し青臭く描いても良かったのではないでしょうか。

さて、1つのルートが終わると、エピローグで何とも意味深な場面が描かれます。この秘密は、4人のヒロインのルートを読了し、再び最初から初めて、最初の場所選択場面である場所に行くことで解けます。タイトルの「キリトリ線」の意味も、分かるようになっています。ただ、この真実に対する伏線がほとんど張られておらず、説明も十分とは言えず、更にオチ自体も「今までの長い話は何だったんだ」という感じのものなので、プレイ時間の長さの割には、いまいちすっきりしないものが残りました。

そういう訳で、ちょっと釈然としないものは残るのですが、他の作品にはない独特の雰囲気を持った学園ものは貴重ですし、ドライとも言える描写も、合う人には凄く合うでしょう。実際、過剰に人間関係に踏み込んだ描写が苦手という人が会ってもおかしくはありません。また、考察が好きな方であれば、読み終えた後も色々と考えられるでしょう。あのオチを持ってくるため、あえて人間関係の描写は希薄にしたのではないかとも思えます。だとしたら、なかなかの策略だと思いました。

ツールは吉里吉里です。絵だけでなく音楽もかなりよく出来ています。読了後は、ラフ画も見られたり、おまけも充実。ただ、セーブやロードが妙に面倒です。システム自体は凝っていますが、最大4回もクリックしないといけないのは、ちょっとプレイヤーに不親切だと思いました。プレイ時間は、全部読んで4時間半から5時間くらい。じっくり楽しんでください。
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