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第691回/見知らぬ君と出会う春 - 春の姫(Sea slug)

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春の姫

春の姫■制作者/Sea slug(ダウンロード
■ジャンル/高校生のボーイミーツガールノベル
■プレイ時間/50分

中高一貫教育の夕凪学園。今日から高等部に進学する須藤雪夜は、クラス発表の掲示板の前で立ち往生する女生徒を見つけ、彼女をこっそり前へ通してあげた。そして、学年の間で評判の美少女と、ある日屋上で偶然出くわした。彼女潮見乙姫こそ、始業式の掲示板の前で雪夜が助けた子だったのだ。王道ストーリーで送る、ボーイミーツガールの恋愛物語。

ここが○

  • 王道で微笑ましい展開。
  • 主人公の弟、妹がいい存在感で物語を支えている。
  • だんだん仲良くなる様子の描写。

ここが×

  • いまいち存在感が薄い友人の貴志。
  • 乙姫が明確に雪夜に惹かれる理由が少し弱い。
  • 文章読み返しができず、スキップもし辛い。

■見知らぬ君と出会う春

前回ご紹介の「笑顔の君で」も、正統派でストレートな展開の恋愛ものでしたが、あれはまだ舞台設定が大正時代辺りの日本でした。が、この作品は現代日本の高校が舞台ということで、まさにこれぞ正統派恋愛ものと言える物語です。こういう作品、最近あまり見なくなりましたよね。流行もあるのでしょうが、妙に尖った作品が多い今、逆に今こういう作品を作れば、目立つかも知れません。

この作品は、典型的なボーイミーツガールタイプの恋愛ものです。舞台となるのは、中高一貫校の私立夕凪学園。主人公の須藤雪夜(「ゆきや」と読むんでしょうか。あるいは「せつや」かも。ルビないから分かりません)は、中等部から夕凪学園に通っており、今日は高等部の始業式。そして同じく夕凪学園の中等部に通う妹の彩芽、今日から中等部に入学する弟の雅明の三兄弟です。

春の姫そして、クラス発表の掲示板の前で立ち往生する美少女を助けるのですが、その少女は、外部から夕凪学園高等部に新しく入学してきており、エレベーター組がほとんどのため、その美貌も手伝って転校生のような噂になるのでした。ある日屋上で雪夜は彼女と再会し、そこから2人の物語が始まります。ヒロインの名前は潮見乙姫。途中深海生物に興味を示すシーンがありますが、名前のせいかも知れません(笑)。

2人はクラスメイトではないので、出会う場所は限られているのですが、その限られたイベントで、2人の仲がだんだん接近していく様子が、とても上手く描かれていると思います。ほとんど昼食時だけの交流にも関わらず、そこに些細な描写を適度に折り込んでいる様子がとても巧みです。王道でありながら、とても楽しく読めるのには、2人の関係の描写の上手さが何より大きいと思います。

そして、それを支えているのが妹の彩芽と弟の雅明。この手の作品では、兄弟や姉妹というのはそう大きな役割を果たさないことも多いのですが、この作品においては、この2人がとても効いていたと思います。直接的に後半の先輩告白シーンで活躍した彩芽はもちろんのこと、中学校に入ったばかり(つまりついこの前まで小学生)の雅明が、控え目ながらしっかり兄をサポートしており、この2人がとてもいいキャラクターでした。雅明は数年後が凄そうです(笑)。

反面、同級生の貴志が全然目立っておらず、空気みたいな存在でしたが、普通の恋愛ノベルにおける、主人公を支える親友ポジションに彩芽と雅明がいるということなのでしょう。確かに貴志は全然目立っていませんでしたが、無理に貴志まで動かそうとしてバランスを崩すよりは、これで良かったのかも知れません。

後半は、乙姫が告白されて云々という展開になります。まあ、美少女なのですからそうなりますね。そこから雪夜が自分の気持ちに気付くという流れ。この流れも、定番の手法ではありますが、変に「あの子とはただの友達だから」と雪夜が自分の気持ちを頑なに認めようとしないのではなく、素直に行動するところが好感を持てました(そういう作品多いですが、大抵読み手が疲れてしまいます)。

ただその後、彩芽が助けに入るところは、展開がちょっと中途半端に感じました。雪夜のせっかくの活躍が霞んでしまってますし、あっさり証拠写真を渡してしまい、その後特にその先輩絡みの展開がないので、そこからラストへの引っ張りが少々弱く感じてしまったんですよね。乙姫が「好きな人がいる」というのが嘘だというのも、ラストへ繋ぐならば少し違うやりようがあったような気がします。そこらを含めて、乙姫が雪夜に惹かれるようになった理由がもう少ししっかりと描かれていれば、と思いました。

しかし全体にはとても綺麗にまとまったお話です。主人公2人と彩芽、雅明という主要キャラクターの使い方がとても巧みですし、とにかく全編に渡って描写や台詞に嫌味がなく、気持ちよく読めます。ただ、エフェクトをカットできず(ティラノの作品は大抵そうですが)、文章の読み返しができないのはちょっとマイナスポイントです。スキップはあまり使わないでしょうが、これも使いやすいとは言えません(ctrlキーで飛ばせず、メニュー画面を開かないといけない)。

ツールはティラノスクリプト。選択肢は数カ所あるのですが、その後の描写が少し変わるだけで、分岐したりはしません。プレイ時間は1時間弱というところ。立ち絵が乙姫しかないのが少し寂しいのですが(全画面ウィンドウでもないですから、この作品に関しては、他のキャラクターに立ち絵があった方が効果的だったように思いました)、しっかりしたキャラウター描写がそれを補っています。ボーイミーツガール恋愛ものは最近多くないですから、貴重ですよ。このジャンルがお好きならば、きっと楽しめます。
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