第692回/そこは墓場かオアシスか - 第二保健室(上京ペキニーズ ) - ナンセンス・不条理
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第692回/そこは墓場かオアシスか - 第二保健室(上京ペキニーズ )

ナンセンス・不条理
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第二保健室

第二保健室■制作者/上京ペキニーズ (ダウンロード
■ジャンル/閑職三十男の人生相談ノベル
■プレイ時間/1時間半

蟹山秀樹は、三十路の教師だが、過去のとある出来事が元で、第二保健室という誰も寄り付かない場所に飛ばされていた。たまにそこに訪れる生徒の相談に乗っていたのだが、ある日蟹山の元に塚原さなぎという女生徒が相談にやってくる。さなぎは総合演劇部に所属しているらしいのだが、彼女の相談内容は驚くべきものだった。シュールで不条理な学園物語。

ここが○

  • シュールで知的な笑いを取りに来る展開。
  • 選択肢で全然変わる展開。
  • 色々なエンドで事実が明らかになる、意外と凝った構成。

ここが×

  • シュール過ぎて合わない人には全く合わない。
  • 誤字誤変換が妙に多い。
  • 最後まで読んでもなんだかすっきりしない。

■そこは墓場かオアシスか

今回またもや古めの作品です。この作品、実はかなり以前に途中までプレイしていたのですが、あまりにもシュール過ぎる展開について行けず、放置状態になってしまいそれっきりでした。最近、古めの作品を積極的に発掘してプレイしていますので、改めて読んでみようと思い、再挑戦。無事全てのエンディングを見ることが出来ました。物凄い「怪作」とは聞いていましたが、怪作の名に違わない出来栄えでしたよ(笑)。

さてこの作品の主人公は、30歳くらいの男性教師、蟹山。教師とは言っても、生徒を教えることは全くしておらず、倉庫のような「第二保健室」で、時々やってくる生徒の相談に乗るようなことをしているだけ。会社で言えば完全な窓際族であり、まともな仕事をせずに給料だけもらっている蟹山を、疎ましく思っている職員も多いようです。

第二保健室そんな蟹山の元に、ある日一人の女子生徒がやってきます。塚原さなぎと言うその女生徒は、自分の所属する総合演劇部の問題を解決したいと訴えてくるのですが……。ここからは選択肢で結構激しく展開が分岐しますので、プレイしてみてください。まあどの選択肢を選んでも、展開はほとんどシュール、不条理の一言です。虫が大量に発生するシーンもありますので、そう言うのが苦手な人は幼虫意、じゃなくて要注意かも知れません。

昔はこういう、選択肢一つでかなり派手に展開が分岐する作品を見ましたが、最近はかなり減った印象です。作るのも大変ですし、メインの物語を薄くならないようにしようと思ったら、どうしても分岐は「即死」みたいなものになりがちです。そうならないように分岐を作ると、今度はメインのストーリーが薄くなりかねません。

その点この作品は、決してメインのストーリーの密度が薄くなることなく、多彩な分岐を作っているのが見事です。また、色々な分岐を読むことで、メインの事件とも関わりのある事実が少しずつ明らかになるという作りも大変巧み。ただの怪作ではない、「練られた怪作」です(笑)。シュールなオチがつく分岐も多いのですが、メインストーリーは意外ときちんとした作りで、そこにも驚かされました。

ただ、普通の物語のような起承転結はついていませんし、特に盛り上がりどころがある訳ではありませんので(全然盛り上がらない訳でもないのですが)、そういう意味では少々「食い足りない」ところを感じたのも事実です。せめて、ラストくらいはもう少し盛り上げて、綺麗な幕引きがあっても良かったような気はしました(それなりにまとまったオチはつくのですが)。

全てのエンディングを見ると「出世」なる番外編が読めます。こちらは、本編の登場人物である九十九花吉が主人公なのですが、本編の印象通りの悪人です(笑)。この番外編では、蟹山が何故第二保健室に追いやられたのかも判明し、結構読み応えがあります。そして、悪人が悪人らしい報いを受けるラストですので、その意味ではある種の爽快感はあるのですが、元々の主人公である蟹山が何ら報われていないというのが少々不憫ですし、読み終わっても少しすっきりしないものが残りました。これがこの作品の作風と言ってしまえばそれまでですが。

この作品、決してげらげら笑えるような物語ではないのですが、とにかくナンセンスかつシュールで、「考えたら面白い」というような、知的な笑いを取りに来ます。そのため、作風もですがその辺りも合う合わないがあるかも知れません。有名作でもなく、見た目も地味ですが、しかし合う人であればかなり楽しめるのではないでしょうか。私も、気が付けば全部のエンディングを見るまでやりましたので、その意味では意外と合っていたのかも知れません? ただ、誤字や誤変換が妙に多いのは少し気になりました。

ツールはNScripterです。選択肢が多いのですが、NScrですからセーブは9カ所しかありません。が、私がプレイした時は何とかその9カ所で全部のエンディングを網羅できました。エンディングは(多分)8種類です。プレイ時間は1時間半から2時間くらい。トゥルーエンドではエンディングに歌が流れます。この歌が結構良く出来ていますので、必聴です。明らかに普通ではない物語で、感情移入しながら読むというタイプのストーリーではないのですが、不思議な魅力があります。是非一度味わってみてください。
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