第697回/不意に消えゆく白昼夢 - Day Dream(ねこかん) - 不思議系
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第697回/不意に消えゆく白昼夢 - Day Dream(ねこかん)

不思議系
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Day Dream

Day Dream■制作者/ねこかん(ダウンロード
■ジャンル/ノベル
■プレイ時間/20分

主人公高垣樹の母親は、3年前に突然失踪した。いつか帰って来ると希望を持っていたが、何の連絡もないまま3年が過ぎ、父親と妹の楓の3人で今は暮らしている。そんなある日、楓の様子がなんだかおかしい。もしかしていじめられているのではと思った樹は、楓に学校で何かあったのか尋ねるが、楓は言葉を濁すままだった。短いが捻りが効いた物語。

ここが○

  • 短いが意外性のあるストーリー。
  • 少々癖があるがしっかりしたキャラクター。
  • 捻りの効いた展開。

ここが×

  • 音楽がほとんどなく寂しい。
  • 最後まで読んでもすっきりしない。
  • 細かい謎がほとんど明らかにならない。

■不意に消えゆく白昼夢

今回も古めの作品。ふりーむでは2013年7月の公開ですから、6年前です。6年前なんて、大して「古い」という感じでもありませんが、フリーノベルゲームで6年というのはかなりの年月です。よっぽどのことがなければ(話題作でなければ)、6年前の作品なんて、なかなかプレイされませんからね。

フリーノベルゲームの世界に限りませんが、ごく一部の超人気作以外は、公開直後に話題になればまだいい方で、一度も話題になることなく消えていく作品も多数あります。だからこそ、定期的に古めの作品をご紹介できればと思いますし、そういう作品をご紹介くださる皆様にはいつも感謝しています(この作品も、質問箱でご紹介をいただきました)。自分でも定期的に過去作をチェックしに行きますが、私一人では絶対見落としますからね。

Day Dreamさてこの作品の主人公は高校生の高垣樹。3年前に突然母親が失踪し、父親の惇平、それに妹の楓の3人暮らしです。ある日妹の楓が、樹に何やら話を持ちかけるのですが、肝心なことを言わずに楓は自室に引っ込んでしまいました。訝しむ樹ですが……という出だし。設定からしてなかなか重いのですが、全編に渡ってかなり重苦しい雰囲気です。

唯一、楓の友人である大槻美希が、天真爛漫に見えるキャラクターで、暗い雰囲気のストーリーの中で少し明るいムードを出しているのですが、そんな美希が実は……という。重い展開の中の唯一の光を使って、もっと重くするという、読者を叩きのめすためには一番効果的な手法をとってきます(笑)。短いシナリオですが、最初から最後まできつい展開ばかりで、人によっては全然合わないかも知れません。

美希の策略により、中盤で更に陰鬱な気分になったところで、後半にまたとんでもないイベントが待ち受けています。加えてその後に明らかになる衝撃の事実。尺は短いのに、とにかく読者に終始揺さぶりをかけて来て、ラストでもう一捻りする展開ですので、短編らしからぬ読み応えがある物語です。最後まで読めば、タイトルの「Day dream」(白昼夢という意味です)に、得心がいくでしょう。

ただ、捻りの効いた展開の割に、伏線が綿密に張られている訳ではありません。加えて、作中に登場するいくつかの謎(例えば、美希エンドのラストの、美希の複雑そうな家庭環境とか)については、全然説明がありませんので、展開に捻りがある分、読み終えた後に釈然としないものが残りました。なので、美希が楓にあんなことをする理由も、ちょっと納得が行かないんですよね。

また、楓が実は……の部分も、そんな出来事が起こるようになるに至った理由の描写がないため、意外ではあるもののどうにも収まりが良くありません。もう少しストレートにテーマを絞り、しっかり描写した方が、同じく重い物語にしても、より読後感が良くなったのではないでしょうか。もう少し尺を長くして、美希の家庭の事情とか、楓がああなった原因を丁寧に描写すれば、物語の厚みが全然違ったのではないかと思います。

キャラクターについては、短い中でしっかり性格付けがされていました。楓が、最近流行りの妹キャラではなく、ちょっと古風なキャラクターで、とても魅力的でした。美希も、キャラクター立て自体は楓との対比が効いていて魅力的だと思います(彼女の性格にひかれるかどうかとはまた別問題ですが)。オリジナルらしい立ち絵も良く描けていると思います。

が、この作品は音楽がほとんどないんですよね。ほとんどないどころか、タイトル画面とエンディング以外に音楽がありません。意図があるのかないのか分かりませんが、流石に全く無音というのは、せっかくのノベルゲームという形式を生かしていないように思いました。定番の素材でもいいので、場面場面に合ったBGMを数曲流していれば、かなり印象が変わったのでは。

ツールはLive Makerです。選択肢は2箇所だけで、その選択肢で3つのエンディングに分岐します。美希エンド、楓ノーマルエンド、楓トゥルーエンドという感じでしょうか。どのエンドも正直に言ってあまり後味が良くないのですが、このような重く救いのない物語の味わいが好きだという方もあるでしょう。プレイ時間は20分。短編とは思えない捻りの効いたシナリオを味わってみてください。
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