第699回/綴る思い出、届く真実 - Onetrues(ワントゥルース) - ミステリー・サスペンス
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト(通常) - 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別
作品リスト(掌編) - 新着順名前順ジャンル別
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第699回/綴る思い出、届く真実 - Onetrues(ワントゥルース)

ミステリー・サスペンス
  • comment0
  • trackback-

Onetrues

Onetrues■制作者/ワントゥルース(ダウンロード
■ジャンル/文通相手を探して彷徨うADV
■プレイ時間/30分

伏見景央は、小学生の頃に引っ越していった幼馴染みの上野瑠璃と、数年来文通を続けていた。お互いが高校生にあったある日、景央は瑠璃に会いたいという手紙を送り、瑠璃が住む街へ遠路出かけて行く。しかし手紙の住所に行っても、瑠璃の姿はなかった。景央は瑠璃を探して見知らぬ街を彷徨うが、意外な事実が。ちょっとだけ推理が必要な短編ADV。

ここが○

  • 推理を助ける独特のシステム。
  • 段々真実が明らかになる展開。
  • 短いが先が気になる作り。

ここが×

  • 途中で読めてしまう展開。
  • ラストにいきなり出てくる重要人物。
  • タイトルからロードできないのが少し不便。

■綴る思い出、届く真実

基本的に、上のジャンル説明では、よほどのことがない限り「〜ノベル」と書いていますが、この作品は「ADV」を称して間違いないと思います。ちょっとした推理を要求される、短編物語です。主人公には、幼い頃に仲が良かった女の子がいたのですが、引っ越してしまい、それ以来ずっと文通を続けているという設定。今はメールでもLINEでも、何でも連絡をとる手段があるのですが、あえて文通という辺りが渋い設定です。

LINEやメールは手軽ですが、やはり手で書く手紙でないと伝わらないというものがあると思うのです。決して古びないデジタルのやり取りと違い、手紙は古びるからこそ、時間の経過を感じさせますし、時間の経過を感じさせるからこそ、手紙にはそこに「思い出」が刻印されるのです。デジタルなやり取りでは、そのようなノスタルジーを出すことは難しいでしょう。フリーノベルの名作には、手紙をスパイスに使った作品が多いですが、その辺りに理由があるのではないでしょうか。

Onetruesさてこの作品は、文通相手の瑠璃に会いに行った景央が、瑠璃を探すという内容です。文通をしていたくらいなので、当然住所は知っていたのですが、その住所に行っても瑠璃はいません。どうやら、直接やり取りするのが恥ずかしく、おばあさんの住所から送り、おばあさんの家に届いた手紙を受け取りに行っていたという設定(展開上の都合でしょうが、若干苦しい設定のような気も……)。

こうして景央は、瑠璃を探すため、見知らぬ街を走り回ります。あちこちで情報を集めると、その情報が「メモ」として記録されていく仕掛け。この仕掛け自体は、過去にも似たようなシステムの作品はありましたが、この作品は加えて、登場する3人の女の子について、情報が入ってくる度に推理で選択できる項目が増えていくという作りです。

実際に推理で選択肢を選ぶのは後半なのですが、このシステムのお陰で、前半からある程度「こうかな?」と当たりをつけておくことができ、推理パートになってから記憶をひっくり返す必要がありません。これは親切なシステムですし、ストーリーとシステムがぴったりマッチして、プレイしやすさと分かりやすさを高めている、とても見事な工夫だと思いました。

この作品は、加えて瑠璃から過去にもらった手紙が、随所に挿入されます。この手紙の内容も、推理のヒントになるため、手紙が登場する度に内容が記録され、いつでも見られるようになります。手紙の内容と、集めた証拠を照らし合わせ、矛盾を探していくというのが推理の基本なのですが、ゲーム性の一要素である上、手紙を何度か登場させることで、瑠璃との思い出を、文字だけでプレイヤーに実感させる、とても上手い作りです。でも、ある手紙で「肉料理が好き? それとも魚料理? 間をとって野菜料理?」という一文には、「なんで肉と魚の間が野菜なんだ」と突っ込みを入れてしまいましたが(笑)。

そしてラスト前に来て、推理パートです。と言っても選択肢を選ぶだけなのですが、選択項目が多いので少し大変です。ただ、注意深くプレイしていればさほど難しくないでしょう。間違えるとかなり投げやりなバッドエンドに行ってしまいますので、ご注意を。まあ、何度かやれば正解に辿り着けるでしょう。

ただ、正解の鍵となる人物は、途中に一切登場しません。それどころか、存在すら示唆されていません(考えれば、そういう人物の存在には誰でも行き着くとは思うのですが)。これは推理要素がある物語としては、ちょっと描写が足りないと言わざるを得ません。なので、ラストの描写も、いまいち訴える力が弱いように思いました。せめて手紙で少し存在を匂わせるくらいしても良かったのでは。それと、タイトルから直接セーブできないのが、少し不便に感じました。

しかし、システムとストーリーが、無理なく融合して全体の完成度を高めている、良くできた短編推理作品でした。ツールはUnity用の「宴」というツール。操作感はまずまずです。プレイ時間は、30分前後で、トゥルーエンドとバッドエンドの2種類があります。プレイ中いつでもチュートリアルが見られるのも親切。ストーリーは語り足りないところもありますが、独特のシステムを上手く物語にマッチさせた手腕は、高く評価されるべきだと思います。難易度も適度ですので、ちょっとした日常推理ものがプレイしてみたい方は、気軽にやってみてください。
関連記事

Comments 0

Leave a reply