第700回/さらば愛しき日常よ - Blazing Soul ー白閃ー(Blue Sphere Oratorio) - アクション・ドラマ
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第700回/さらば愛しき日常よ - Blazing Soul ー白閃ー(Blue Sphere Oratorio)

アクション・ドラマ
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Blazing Soul ー白閃ー

Blazing Soul ー白閃ー準推薦
■制作者/Blue Sphere Oratorio(ダウンロード
■ジャンル/帝国軍人と魂喰鬼のバトルノベル
■プレイ時間/2時間半

帝国軍に所属する若き士官、カミナギ・ヤマトは、仲間のイトウ・ハヤテやクナカミ・サクヤと共に鍛錬と任務に励む日々だった。才能を持ちつつもそれを開花できないヤマト。ある日、帝国の僻地に跋扈する魂喰鬼により北方の地が壊滅したとの報を受ける。ヤマトは、仲間たちと共に敵を討つために現地に向かうのだが。動きのある演出が物凄いバトルノベル。

ここが○

  • グラフィックス、立ち絵、1枚絵のレベルが非常に高い。
  • 動きのある演出が凄まじい。
  • 後半の盛り上がりよう。

ここが×

  • とにかく文章が硬くて読みにくい。
  • その上、改行などの工夫もなく一気に文章が表示され、一層読みにくい。
  • その文章とキャラのやり取りがアンバランス。

■さらば愛しき日常よ

私はどちらかというと日常系の物語が好きなのですが、時々明らかに日常ではない物語を読むと、大きな刺激をもらえます。同じ傾向の物語ばかり読むよりは、色々読んでみた方が、やはりいいようです。この作品は、作者さんからプレイして欲しい旨を伝えられ、遅ればせながら読み終えました。昭和初期辺りの日本を思い起こさせる、架空の帝国が舞台のバトルものですが、とにかく、見た目で圧倒されるような作品は久々でした。

まず、立ち絵や1枚絵のレベルが凄まじいです。並みの絵師さんではありません。そして、動きを伴った演出が物凄い。過去にプレイした作品の中でも、これほどの作品は見たことがないほどです。絵柄はアニメ風なのですが、それが動きのある演出にぴったりマッチし、まさしくゲームではなくアニメでも見ている気にさせてくれます。オープニングやエンディングのムービーも非常に凝っており(歌入り)、アマチュアがこれほどの作品を作れることに感服しました。

Blazing Soul ー白閃ーと思ったら、この作品はクラウドファウンディングにより制作されたようです。まあ、これだけの物を作ろうと思ったら、そりゃある程度のお金はかかりますよね(追記/作者さんによると、クラウドファウンディングのお金は、本編制作ではなく最後の予告編の曲のために使われたそうです)。そういう意味で、色々な意味で「フリーらしくない」作品です。私はどちらかと言えば「フリーらしい」手作り感のある作品が好きなのですが、流石にここまでやられると、シャッポを脱がざるを得ません。恐れ入りました。

まず気になった点を。この作品は、全画面ウィンドウと下部ウィンドウが適宜切り替わるシステムなのですが、文章があまりにも硬すぎます。とにかく、硬い表現、熟語、修辞法が連発し、すらすら読めるレベルではありません。それならそれで、空白行を多めに入れる、段落の頭は一字下げるなどの工夫があればまだいいのですが、特に全画面ウィンドウの時は、句点(。)で文章が途切れず、大量の文章がどばっと表示されるため、より一層読み辛くなる結果に。これは何らかの配慮が欲しかったところです。

加えて、終始説明的でお世辞にもテンポがいいとは言えません。せめて戦闘シーンだけでも、描写よりはリズム、テンポ感を重視しても良かった気がします。また地の文に比べると、会話文はかなり砕けていて読み易いですのですが、そのため地の文と会話文にアンバランスさを感じてしまいました。地の文で突如一人称と三人称が切り替わるのも、かなり面食らいました(場面転換時などではなく、本当に突然人称が変わる)。文章の作法がどうこうではなく、これは単純に分かりにくく混乱しますから、せめて人称変化は、場面転換時に限って、またそれと分かり易い仕掛けを作った方がいいように思いました。

と、文章は読んでいて気になった点もありますが、シナリオはとてもよくできています。物語はバトルものなのですが、異能バトルという感じではありません。必殺技風のものも出てきますが、どちらかというと「技術を極めた結果」の技という感じで、その意味では硬派なストーリー。物語の全体像はシンプルで、伏線により意外な事実に驚かされるタイプの物語ではないのですが、序盤、中盤、終盤と、うまく溜めと引きを使って次第にピークへ持っていく手法は見事で、ラスト手前のバトルシーンは非常に盛り上がります。

キャラクターは多いのですが、どのキャラクターもしっかり性格付けがされていて、個性的です。とは言え、この作品のメインは、あくまでヤマトとハヤテ。この2人の関係は、最初から最後まで非常に見応えがありました。剣のライバルとして、そして友人としての複雑な思いが、ラストで炸裂するシーンは、一番の名場面です。男同士の友情を描いた物語として、出色のストーリーでした。逆に、その他のキャラは少し出番が薄かったですが(キャラの個性とは別問題として)。

それにしてもこの作品の演出は物凄いです。演出が凄いだけでなく、きちんとメリハリが効いていて、穏やかなシーンまで演出でうるさくなったりはしていません。日常シーンは静かに流し、戦闘シーンは全開で見せてくれる。このメリハリで、戦闘シーンの迫力が際立っていました。演出は、やたら凝ればいいというものではなく、やはりオンオフの切り替えが大事なんだと思わされます。

ラストは、ハッピーエンドではありません。かなり悲劇的な終わり方です。ラストバトルが呆気ないのですが、クライマックスはその前でしょうし、その後の終わり方を考えればあれくらい軽く流すくらいがいいのかも知れません。ラストは賛否両論かも知れませんが、この物語はあくまでヤマトの成長を描く物語だと思いますし、そう思えばあの終わり方はありだと思います。日常が失われ、また日常が始まっていく。いいラストです。ただ、途中と最後に出てきたあるキャラは、もう少し目立たせても良かった気がします。

ツールはティラノスクリプト。プレイ時間は2時間半から3時間。選択肢はありません。とにかく文章が読みにくいので、なかなか一気には読めないかも知れませんが、決して分かりにくい物語ではありませんので、どんどん盛り上がる物語をゆっくり楽しんでください。なお、この作品には続編があるようです(制作中? 最後に予告編のアニメが見られます。これがまた凄い)。この作品単体でもきちんと完結しているので、単独でも問題なく楽しめます。熱い男のバトルものが読んでみたい方は、プレイしてみる価値がある一作です。
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