掌編ミニレビュー第19回 - ビデオレター/冷たい夏の日/ラムジュート - 掌編ミニレビュー
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト(通常) - 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別
作品リスト(掌編) - 新着順名前順ジャンル別
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

掌編ミニレビュー第19回 - ビデオレター/冷たい夏の日/ラムジュート

掌編ミニレビュー
  • comment0
  • trackback-

55. ビデオレター

ビデオレター準推薦
■制作者/あき(ダウンロード
■ジャンル/日常
■ツール/ティラノスクリプト


この作品は、「シチュエーション系掌編」と言いましょうか、掌編にはよくある作りの作品です。が、設定、キャラクターがしっかりしており、シチュエーション系としてはそれなりにしっかりした流れも作られているため、物語としても楽しめる作品です。何より、全編静かなピアノのBGMで統一した選曲センスがいいですね。作品の雰囲気に、とても合っていたと思います。

主人公の真希は、結婚を控えた女性。母を病気で亡くし、父親が男手一つで育ててきました。そんなある日、たまたま見つけたビデオテープ。それは亡き母親のビデオレターだったのです。このビデオレターを父親と見ながら、静かに話は進行します。真希もいいですが、父親のキャラクターがとてもいいですね。亡き母親のメッセージを見て、顔を洗いに離席するシーンには、男の美学を感じました。

ラストは、特に大げさな盛り上がりがある訳ではなく、静かに物語の幕が下りますが、この作品には合った幕引きなのではないでしょうか。いい終わり方だと思います。絵も綺麗で曲も素敵で、家族のちょっとした場面を、飾らない筆致で丁寧に描いた佳作です。疲れた時、心が癒されたい時に読んでみてはいかがでしょうか。

56. 冷たい夏の日

冷たい夏の日■制作者/灰色(ダウンロード
■ジャンル/シリアス・感動系
■ツール/ティラノスクリプト


癒される作品の次は、あまり癒されない作品のご紹介です(笑)。「罪咎オペレッタ」「10月32日のハロウィン」の作者さんの作品で、かなり初期の作品のようですが、独特の作風は変わりません。いきなり主人公が「8年前姉を殺した」と独白し、驚かされます。そこだけ読むと、ちょっと「贖罪と命」っぽいところもあります。

が、お話が進み過去の事実が明らかになると、意外にも(?)そこまで歪んだ話という訳ではありません。ちょっとは歪んでいますが、お話としては正攻法の作り。そして、そのまま予定調和的にラストに進むのかと思いきや、ラストでこれまた見事に(?)読者の期待を裏切ります。この短い中に、読者の先読みを促しておきながら、ひらりと身をかわすという作りを盛り込んでいる辺り、この作者さんのストーリーテリングは、やはり普通ではありません。

欲を言えば、累(かさね)を上手く使って、主人公が前向きになるラストが見てみたかった気もしますが、今のままでもそういう未来が想像できなくもないですし(大変な未来も想像できますが(笑))、そこは読者に委ねるということでしょう。和んだり感動したりするタイプの物語ではないのですが(「シリアス・感動系」に分類したけど)、味わいのある掌編です。

57. ラムジュート

ラムジュート■制作者/いねむりスフィンクス(ダウンロード
■ジャンル/恋愛
■ツール/吉里吉里


上の「ビデオレター」で「シチュエーション系掌編」という言葉を使いましたが、これぞまさにシチュエーション系。掌編では「野に咲く蓮華を手にとって」を作られた作者さんです。由宇が幼馴染の小夏と、海に出かけてどうのこうのするだけです。明確な起承転結がある訳でもありません。が、2人の部活の設定や、海に出かけたという舞台、過去の2人のやり取りの記憶を上手く利用した、台詞のやり取りの面白さが、この作品の持ち味であり見どころです。

由宇と小夏は、いかにもな幼馴染同士。ひょんなことから由宇は小夏に海に誘われます。もう少し、由宇の小夏に対する思いを描写しておいても良かったような気もしますし、「ゴリラは幼少期を過ごした個体とはつがいにならない」という描写は若干余計だった気がしなくもないですが、由宇と小夏の小気味良いやり取りと、最後の丁々発止の駆け引き(と言えるのだろうか(笑))が見ものです。

シチュエーション系掌編だと、本当に何の事件も起こらない作品も珍しくありませんが、この作品は会話と設定だけできちんとラストに物語を引っ張る力を持続させており、流石に書き慣れているなと感じさせられました。幼馴染同士の、じれったくもほんわかするやり取りを読んでみたい方なら、きっと楽しめるはずです。
関連記事

Comments 0

Leave a reply