第701回/事実は夢より夢うつつ - 黒羊は夢に哭く(Random Walk) - 不思議系
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第701回/事実は夢より夢うつつ - 黒羊は夢に哭く(Random Walk)

不思議系
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黒羊は夢に哭く

黒羊は夢に哭く■制作者/Random Walk(ダウンロード
■ジャンル/悪夢が変える現実ノベル
■プレイ時間/30分

夢野ドグマは、祖母の実家がある郊外の田舎町で暮らしていたが、ある日ドグマに、入院中の祖母の容態が急変したというメールの連絡が届く。慌てて祖母が入院している病院に行ったドグマは、怪しげな男と出会う。睡眠障害に悩んでいるドグマに、男は最新の睡眠薬を分けてくれたのだが。ヒビカ市を舞台に繰り広げられる、夢と現実の物語。

ここが○

  • しっかり作られた舞台設定。
  • 高い文章力と描写力。
  • 短いが、強い引きでどんどん読ませる展開。

ここが×

  • せっかくの舞台が生かされているとは言い難い。
  • 唐突なラストの展開。
  • そして突然過ぎる終わり方。

■事実は夢より夢うつつ

」の作者さんによる作品です。前作は「ヒビカシティプロジェクト」というプロジェクトの一環を構成する作品で、この作品も舞台は同じヒビカ市となっています。ヒビカ市は架空の都市で、どのような街なのか、各区の特徴はどうなのかまで、かなり細かく設定が決められています。

そこらが気になる方は、是非前作をプレイしてみてください。一応今作でもヒビカ市に関する説明はあるのですが、この作品よりも、前作の方がより詳しく舞台となるヒビカ市の様子が描写されており、生活感もあってヒビカ市の魅力を十分に味わえますので、先に前作をプレイした方が楽しめると思います。

黒羊は夢に哭くさて、今作の主人公の名前は、高校生の夢野ドグマ(凄い名前だ)。両親は事故で、姉は殺人事件で失っており、身内は祖母しかありません。なかなか凄い設定で、これが展開に生かされるのかと思いきや、そういう訳でもありませんでしたから、この辺りはさらっと流しましょう。彼は、両親が亡くなってからは姉と、祖母の元で暮らしていましたが、姉が亡くなってから中心部のアセブ区で一人暮らしをしていました。

が、祖母が主人公の様子を見にアセブ区に来ている時に、ちょうど体調を崩して入院することになりました。主人公は不眠症を患っていることもあり、この機会に祖母の住む街外れのイノヤ区へ戻ろうと決意します。そんな矢先、病院にいる叔母から、祖母の様子が急変したというメールが届きました。ドグマは、急ぎ祖母が入院している病院に向かうのですが……。こんな出だしです。短い物語の割に、意外と設定が複雑で最初は少し面食らいました。

この作品、文章が非常に整っています。かなり文章力は高い方です。そして見逃せないポイントがあります。この作品は4行のテキストウィンドウで文章が表示されるのですが、きちんと文章が「4行で読む」ことを考慮した作りになっています。一度に表示される4行で、きちんと情景や心情が把握できるように、考えて書かれているのです。これはノベルゲームにおいては、ある意味文章の巧さより大事なことです。

例えば、4行しかないのに、4行では把握できないような長い描写が延々と続いたらどうでしょうか。ひっきりなしに文章を読み返す必要がありますし、読み返しても恐らくは情景が把握しにくく、物語の流れも掴みにくいはずです。ここを上手くやらないと、「文章力は高いけど、物凄く読みにくい」作品になり、非常にストレスが溜まります(そしてそういう作品が結構多いのです……)。この作品の、「4行であることを考慮して書かれた」文章は、非常に好印象です(まあ、後半は少し分かりにくくなるのですが)。

物語としては、短編とは思えない謎を提示し、その謎でもって後半まで強く引っ張ります。特に後半、インターネットの掲示板を活用してヒントを集めるところは、なかなかの緊張感です。ただ、ラストがどうにも唐突です。謎とドグマの秘密がある程度明らかになり、さてこれからどうなるのかと思ったところで、いきなり終わってしまいます。「もう逃げることはできんぞ、ライオン仮面」「ウワーッ!」で終わり、みたいな感じです(何だよそのたとえは(笑))。

後書きを読むと、他の作品で今作の登場人物たちが再び登場し、謎や疑問が明らかにされるようなことが書いてありましたが、現時点で続編らしき作品は公開されていません(web漫画なら公開されていましたが)。このような形式を取るにしても、もう少し収まりのいいところで切ることは出来なかったんでしょうか。

それと、せっかくの魅力的なヒビカ市の舞台が十分生かされているとは言い難い気がします。「潮騒と泡沫のサマー・デイ」に比べると、作中の場面もごく限られていますし、ヒビカ市らしい描写もあまりありません。まあ、プロジェクトを構成する一作品という位置付けですし、短い作品ですので、そこは難しいところだったのかも知れませんが、魅力的なヒビカの街をもっと味わってみたかった気がします。

ツールは吉里吉里ですので、安定していて軽く、とてもプレイしやすいです。選択肢はなく、プレイ時間は30分そこそこというところ。グラフィックスは大変美しく、綺麗なお姉さんが出てくる訳ではないのですが、1枚絵も大変魅力的です。ヒビカ市の魅力を味わうというイメージの作品ではないのですが、一風変わった不思議なお話。ヒビカ市にまた行ってみたい方は、軽く楽しんでみてください。
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