第703回/紫煙は淡い恋模様 - ハロー、神様Worker(Nutrients) - 不思議系
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第703回/紫煙は淡い恋模様 - ハロー、神様Worker(Nutrients)

不思議系
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ハロー、神様Worker

ハロー、神様Worker■制作者/Nutrients(ダウンロード
■ジャンル/パラレルワールドの運命調整ノベル
■プレイ時間/4時間

和仁倉春人は、酒、煙草、ギャンブル、そして女にしか興味のない男。そんな彼に、ある日メールが届いた。報酬の高さに釣られて承諾の返信をした春人に、異世界の運命を調律するという使命を課せられる。補佐役のエミルと共に異世界に赴き、そこで出会ったのは陽実花という女子高生。彼女が世界の鍵を握るらしいのだが。長編スペクタクル。

ここが○

  • 豊富で個性的なキャラクター。
  • アイキャッチや戦闘時などの演出。
  • 人間関係が徐々に変化している様子の描写。

ここが×

  • 主人公に癖が強すぎて、読み手を選ぶ。特にセクハラジョーク。
  • 誤用が多い。
  • ラストの解決法がかなりあっけない。

■紫煙は淡い恋模様

今回もなかなかの長編です。ただ長いだけでなく、フルボイスだったり、オープニングのアニメーションが入っていたり、戦闘時にはちょっと動きのある演出があったり、アイキャッチにキャラクターのその時の心情を示す一言があったり、凝った作りです。かなり気合いが入った作品です。タイトルも独特ですが、一言でこの作品の世界観を表した、いいタイトルだと思います。

主人公の和仁倉春人は、酒、煙草、ギャンブル、女にしか興味のない、かなりの駄目人間。駄目人間というか、クズですね(笑)。そんな彼は、その日も借金取りから逃げつつパチンコを打っていたのですが、見事に大敗。そして自棄酒を呷って帰宅した春人のスマートフォンに、宗教を思わせる怪しげな勧誘メールが届きます。怪しい仕事をすると、破格の報酬がもらえるという条件に惹かれて、その仕事を受ける返信をした春人。

ハロー、神様Workerそんな彼は、再びパチンコを打ちに行き、当たりが来かけたところで、メールを送ってきた組織に、強引に連れて行かれてしまいます。そこで彼が依頼された任務は、なんと異世界の「運命調律」。このままでは滅ぶ運命にある世界を調整し、世界を救ってほしいというもの。大変な任務に腰がひける春人ですが、報酬には変えられず、エミルという天使と共に異世界へ。はてさて、という出だしです。

まず気になった点です。主人公の春人が、パチンコ中毒のどうしようもない男という設定はいいのですが、それにしてももう少し描写が何とかならなかったでしょうか。シリアスな場面でもお構いなく変なジョークを連発するのが何とも。特にセクハラジョークには、反応に困ってしまいました。ひと昔前の、いわゆる葉鍵系か、更にその前のエルフ系の主人公の、悪いところを継承してしまっている感じ。そうすることで、彼のシリアスな活躍場面とのギャップを狙う意図は分かるのですが、少しやり過ぎの感があります。

もう1つ。妙に誤用が多いです。中でも「嗚咽」は、「この場面で春人がむせび泣くだろうか?」と、読んだ瞬間どういう意味で使われているのか分からずに、しばらく考え込んでしまいました(しかも2カ所)。何度か前後の文章を読んで、恐らく「嘔吐」の意味だろうと結論づけましたが、流石にこれは意味が違い過ぎです。まあ平仮名で「おえつ」と書くと、何となく嘔吐っぽくはありますが……(え?)。他にもありましたが、ここは一番気になりました。それと、地の文の時にも「春人」という名前が表示される為、時々混乱しました。

さて、気になる点を最初に書きましたが、物語自体は大変エンターテインメント性が高く、楽しめるものです。キャラクターは女性ばかりですが、どのキャラクターも個性的で魅力があります。春人とエミルのやり取りが一部過剰に感じるところもありましたが(セクハラ発言が多いですから(汗))、全体的には会話テンポもよく、センスを感じさせるやり取りも多々ありました。

物語は、春人が異世界(と言っても日本によく似ている)で出会った、屋上から飛び降りようとしていた女子高生御桜陽実花が物語の核になるのですが、彼女とのやり取り、関係が少しずつ変化する様子はとてもよく描けていました。また、佳永も(怖いけど)いい立ち位置のキャラクターでしたね。そこにエミル、アニィなどの天使側のキャラクターが上手く絡み、シナリオの流れもはっきりしていて、長い物語ですが退屈せずに読めました。

ただ、佳永との関係が一気に変わる中盤、そして物語が本格的に動き始める後半と、そこまでは非常に良かったのですが、ラストの解決法があまりに呆気なく、ちょっと拍子抜けしました。敵方の、名前だけ出てくる黒幕的な人物は、本当に最後まで名前しか出てこずに、いまいち対決も盛り上がりませんし、決着の付き方も実にあっさり。また、最後の窮地を脱する手段も、それまでに前振りが何もなかったため(陽実花のピアノとか、父親の好きな曲とか、一切言及がなかった)、唐突感は否めません。一応綺麗な解決ではありますが、少し消化不良を感じました。ラスト近く、エミルが消えていたのも少し寂しいものがありました。過去の失敗事例と妹との確執を上手く絡ませれば、彼女にも見せ場を作れたのでは。

しかし全体を通してみれば、程よくアップダウンがついており、キャラのやり取りとシナリオ自体の起伏で、しっかりラストまで読者を引っ張る力を持った物語でした。ラストシーンは、もっと感動的にしようと思えばいくらでもできたでしょうが、程よく抑えが効いていて好印象です。あそこまでしたなら、冒頭のシーンに繋げて、綺麗な「サンドウィッチ」にした方がまとまりが良かったかも知れませんが。

ツールはティラノスクリプトです。その為大変重く(起動が大変)、ロードしてもう一度やったら途中何度やり直してもフリーズする、なんて目にも遭いましたが、それがティラノです(?)。選択肢のない一本道で、プレイ時間は4時間。フルボイスなので、全部聞けば6時間くらいかかるかも知れません。声優さんはみんな熱演ですが、個人的にはエミルの演技が気に入りました。ほどよく現実的で程よくファンタジックで、とてもエンターテインメントな長編。休日にでもじっくり読んでみてください。
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