第704回/奥様は可愛い名探偵 - 万に一つの偶然(琉Games) - ミステリー・サスペンス
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト(通常) - 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別
作品リスト(掌編) - 新着順名前順ジャンル別
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第704回/奥様は可愛い名探偵 - 万に一つの偶然(琉Games)

ミステリー・サスペンス
  • comment0
  • trackback-

万に一つの偶然

万に一つの偶然■制作者/琉Games(ダウンロード
■ジャンル/拾った鞄のサスペンスノベル
■プレイ時間/30分

岡田久はどこにでもいるような平凡なサラリーマン。ある日帰宅途中の電車の中で、間違えて他人の鞄を持って帰ってしまう。困った久だが、翌日会社に落とし主と思われる男から電話がかかってきた。これで一安心と思いきや、待ち合わせ場所には誰もこない。困った久は、思わぬ騒動に巻き込まれて行く。影絵が懐かしい、短編サスペンスノベル。

ここが○

  • 気軽にサスペンスの雰囲気が味わえる。
  • 主人公と奥さんの洋子のやり取りが自然で和む。
  • 整っていて読みやすい文章。

ここが×

  • 文章以外の要因でかなり読み辛い。
  • 活躍していない気がする主人公。
  • サスペンスにしては展開が平坦。

■奥様は可愛い名探偵

絵がある作品が続きました。今回は、影絵のみの作品。ジャンルはサスペンス。ミステリーと言えなくもないのですが、推理要素がある訳でもなく、どちらかと言えばサスペンスだと思います。影絵でサスペンスというと、かまいたちの夜のような閉鎖空間(クローズドサークル)ものかと思いきや、全く違う切り口から作られた物語で、なかなか新鮮です。「巡る少女と彼女の望み-」の作者さんの新作です。

この作品、文章が縦書きです。なので小説でも読んでいるかのような独特の雰囲気があります。ただ、フォントの関係か、妙に読み辛いのが難点です。しかも、文章が句点(。)で止まらず、複数の文章が一気に表示され、多いところだと一度に10行くらい表示されるため、ちょっと読み手に負担をかけてしまっている感があります。文章自体は丁寧かつ平易でとても読み易いのですが。改行ピッチをもう少し広くとれば、かなり印象が違ったかも知れません。

万に一つの偶然主人公は普通のサラリーマン、岡田久。ごく平凡な電車通勤のサラリーマンです。いつものように遅めの仕事を終え、疲れて帰りの電車に乗った際、間違えて自分の鞄と他人の鞄を間違えて持って帰ってしまいました。翌日、会社に落とし主と思しき男から、鞄を受け取りたいという電話が来たので、待ち合わせ場所を支持したのですが、相手の男は待ち合わせ場所に現れません。

こんな出だしで始まります。ごく普通の主人公が徐々に事件に巻き込まれて行く様子が、飛ばしすぎもせず、流れが淀むこともなく、上手く描写されています。地味な物語ですが、読み手をだんだんストーリーに引き込む作りがよくできています。冒頭のニュースが実は後で事件に関係してくるなど、構成もしっかり作られていると思いました。

実は主人公の久は、結構気弱で「お前もうちょっとしっかりしろよ」と言いたくなる男なのですが(笑)、それに対して妻の洋子が、久の足りない部分を上手く補っており、この2人がとてもいいコンビネーションです。事件も、ほとんど洋子が解決してしまっているような(笑)。慎重すぎて(事件に対しても妻に対しても)なかなか物事を進められない久に対し、洋子は感情を前面に出し、好奇心のまま行動するキャラクター。性格に可愛さも感じさせてくれますし、物語のアクセントにもなっています。この2人の組み合わせがとても面白いです。

とは言え、久にもう少し主人公らしい見せ場があっても良かったような気もします。最初から最後まで、要所はほとんど全て洋子がきっかけで物語が動き、久はほぼ何もしていない(洋子に引っ張られているだけ?)ですし。この2人の組み合わせとしてはとてもいいのですが、やはり1つくらいは久にもいいところを見せてあげても、と思いました。

オチは結構あっさりしています。もう少しサスペンス色を前面に出して(人が1人死んでるんですし)、はらはらどきどきさせてくれるような仕掛けを盛り込んでも面白かったかも知れません。せめて、ラスト前くらいはもっと引っ張っても……。まあ、本格サスペンスという訳でもありませんし、ちょっとした事件に巻き込まれた、対照的な夫婦の日常物語と思って読めば、十分楽しめます。

ところで、メニューは画面下部に並べられているのですが、このメニューが文字表示ウィンドウの外にあるのです。色もちょっとくすんだ感じなので、場面によってはこれが背景画面に紛れてしまい、大変見辛くなります。色使いを工夫するかデザインを工夫するか、もう少し見易くする工夫があっても良かったような気がします。まあ、短編ですからそれほどメニュー画面を使うこともないとは思うのですが。

ツールはティラノスクリプト(ビルダー)。選択肢はなく、プレイ時間は30分くらいです。こういう物語こそ、選択肢があれば面白かったような気もしますが、30分でちょっとしたサスペンスを味わえるという意味では、十分この物語なりの面白さを提供してくれていると思います。ラストは綺麗に事件が解決し、読後感は爽やかですので、そこはご安心ください。サスペンスが苦手な方でも、気軽に読める物語だと思います。
関連記事

Comments 0

Leave a reply