第706回/暑くて熱い夏を遊ぼう - 太陽よりも暑い夏(お風呂かこ) - 学園・青春
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第706回/暑くて熱い夏を遊ぼう - 太陽よりも暑い夏(お風呂かこ)

学園・青春
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太陽よりも暑い夏

太陽よりも暑い夏■制作者/お風呂かこ(ダウンロード
■ジャンル/夏休み楽しむ組ノベル
■プレイ時間/2時間

夏休みに入ったばかりのある日、高校3年生の悟は、坂道で自転車のブレーキが故障してしまい、そのまま海にダイブ。右腕を骨折する怪我を負い、病院に運ばれた。そこで出会った少女、静江。同室の入院患者の老紳士に頼まれ、静江を遊びに連れて行くことに。悟の親友栄太と、自転車を修理してくれた千尋も加わり、太陽よりも熱い夏が今幕を開ける。

ここが○

  • 背景写真が夏の田舎の雰囲気満点。
  • とにかく色々な遊びが登場し、実際に夏休みを過ごしている気分になれる。
  • 主人公たちの交流の様子がいい。

ここが×

  • 起承転結も伏線もなく、人によっては退屈に感じるかも。
  • 音楽がほとんどなく、演出周りは全体に寂しい。
  • 頻出する突然の視点変更が分かりにくい。

■暑くて熱い夏を遊ぼう

また非常に変わった作品のご紹介です。夏休みを舞台にした作品は多いのですが、今までに見たこともないような物語でした。「ふたつの恋慕」の作者さんの新作です。驚くことに、シナリオはもちろんのこと、立ち絵や背景写真、音楽や効果音に到るまで、全て作者さんの自作のようです。チーム制作で凄く豪華な作品も増えた中、こういう手作り感溢れる作品は、それだけで私には目をひきます。

立ち絵はお世辞にも巧みとは言えませんし、音楽に至ってはエンディングで単音の曲が流れるだけです(この辺りの音楽の寂しさは「ふたつの恋慕」同様です)。しかし、全ての要素を一人で作った作品には、チーム制作の作品にはない、「統一感」があります。この作品も、見た目豪華でもないですし、探そうと思えば粗はいくらでも見つけられるのですが、一人で作っただけあって、不思議な統一感がありますし、そこから来る何とも言えない魅力があります。見た目だけで敬遠するのは勿体無い作品だと思います。

太陽よりも暑い夏この作品を一言で表現すれば、「主人公達が、全力で夏休みを遊び尽くす」です。その遊びも、スマホやパソコンのゲームでも、カラオケでも、テーマパークでもありません。夏の田舎町を舞台に、小学生の頃にやったような昔懐かしい遊びで、夏休みを全力で楽しむという、今までに例を見ないような物語なのです。作りは典型的なカレンダー消化型。8月の頭から終わりまでです。

主人公は高校3年生の悟。彼は自転車で坂道を爆走している最初から、どう見ても高3に見えません(笑)。受験勉強をしている様子もありませんし、子供のように遊ぶ描写を見ていても、高校生らしからぬところがあります。リアリティがないと言ってしまえばそれまででしょう。しかし「昔懐かしい遊びで夏休みを遊び尽くす」というテーマには、むしろ高3という設定が相応しいように思いました。これが、小学生だったら当たり前で物語になりませんもんね。

登場する遊びは、おはじき、糸電話、しっぽ取り(でもこの遊びを私は知らない)、鬼ごっこ、泥だんご作り、靴飛ばし、缶蹴りなどなど、誰もが子供の頃に一度はやったことのあるものばかり。「ぐっぱーのそろい」「指すま」は、地方によって言葉が違うようで(私の地域は「うらおもて」で仲間を決めてました。「指すま」は、何だっけな……)、そういう「自分の思い出との共通点、違い」を見てみるのも面白いでしょう。

そして、主人公達はいちいちこれらの遊びに全力で取り組むのです。対戦形式での遊びでは、相手が小学生であっても手を抜かない真剣勝負。なので、他愛ない遊びにもそれなりのドラマが毎日生まれます。トランプや野球のシーンでは、簡単な戦況の模式図も出てきます。この作りは面白いですね。まあ遊びなので、勝っても負けてもどうということはありませんが。

文章はちょっとこなれていない感じがありますし、突然視点が変わるのが少々分かりにくいです。一人称の視点が変わるときは、発言者の名前が分かりやすいような仕掛けがあった方がいいように思いました。今作の場合は「ん、視点変わった? 他に千尋と静江と悟が出てるから、栄太になったかな」と、登場人物で判断するところが多く、ここは戸惑いを感じました。

そしてこの作品には、通常の物語で見られるような起伏がありません。起承転結がある訳でも、伏線が最後で解ける訳でもなく、ただ夏休みの最後までみんなで遊ぶだけです(ラスト近くには少しだけ人間関係の変化を示唆する描写がありますが)。メインキャラは男女2人ずつなのに、一切恋愛も絡みません。その意味では淡白とも言えますし、起伏もどんでん返しもある通常の物語を期待すると、肩透かしを食ったように感じるかも知れません(最初に登場した曰くありげなお爺さんも、それっきりだし、静江の病気についても結局何も語られず仕舞い)。

しかし、こんな物語があってもいいと思います。小説やゲームというより、まるで絵日記のような簡潔で余計な描写がない文章は、この作品の雰囲気にとても合っていましたし、とにかくテンポよく読み進められます。毎日遊びも変わるため、思いの他読んでいて退屈しませんでした。何より、秘密基地ですよ(笑)。秘密基地は男のロマンですよね。目立った起伏がないのに、「遊び」だけで意外とわくわくを感じさせてくれる作りは、他の作品には見られない、この作品だけの味です。

ツールはティラノスクリプト。選択肢は、トランプのシーンで少しあったような気がしますが、別に物語進行には関係しませんので一本道です。プレイ時間は2時間くらい。背景写真も自前らしく、夏の田舎の情緒が全編から感じられました。地味ですし、美麗な絵がある訳でもありません。しかしフリーならではの味わいがある作品で、私は結構気に入りました。もう夏休みは終わりましたが、子供の頃を思い出して、「夏休み楽しむ組」の活動を体験してみてはいかが?
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