第710回/罪の裁きは胸三寸 - 裁判長!どうしますか?(めフめフ) - シリアス・感動系
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第710回/罪の裁きは胸三寸 - 裁判長!どうしますか?(めフめフ)

シリアス・感動系
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裁判長!どうしますか?

裁判長!どうしますか?■制作者/めフめフ(ダウンロード
■ジャンル/ファンタジー世界で裁判疑似体験ADV
■プレイ時間/30分

ベテラン女性裁判官のトワコは、ある日皇帝である勇者に呼び出され、法律に捉われず、自分の判断のみで判決を下せる「特別裁判官」に任命された。半年間の試験運用ではあるが、自分の判断で全て決められる立場に、トワコは苦悩しつつも自分の正義を信じて判決を言い渡していくが、その先には何が待ち受けるのか? ライトな裁判体験ADV。

ここが○

  • 気軽に裁判の雰囲気を味わえる。
  • 派手さなはいが、トワコの苦悩や決意が描かれた展開。
  • 法治国家のあり方を問う、意外と重いテーマ。

ここが×

  • いかにもな伏線が投げっぱなし。
  • 自由にセーブできない。
  • 裁判シーンはもう少し踏み込んでもいいのでは。

■罪の裁きは胸三寸

フリーノベル・ADVでは大変珍しい、裁判をテーマにした作品のご紹介です。過去には「ゲームで裁判員! スイートホーム炎上事件」という作品がありまして、そちらはゲームながらも意外とシビアな判断が求められる、リアル方向に振ったものでしたが(まあ制作が大阪弁護士会ですからね)、こちらは舞台もファンタジー世界で、裁判自体も大変お手軽です。あるいは、陪審員の丁々発止のやり取りを描いた作品としては、「ダークハーフ」もありましたね。

今作の舞台はハーフエルフだのゴーレムだのが出てくる、架空のファンタジー世界。主人公のトワコはベテランの女性裁判官です。トワコはある日、皇帝である勇者に呼び出され、「特別裁判官」に任命されます。これは、現行法の枠を越えて、裁判長の裁量のみで量刑を決められるという、とんでもない制度。旧来の風習を全て打破したい皇帝が、このようなことを考えたのでした。

裁判長!どうしますか?トワコは、自分に課せられた責任の重さを感じつつ、この任命を受けます。そして合計4つの裁判の判決を下すと、こういう内容です。フリーノベルゲームの主人公って、大抵が若いか、たまに渋い中年男性のこともありますが、年齢をある程度重ねた女性が主人公というのは非常に珍しく、その時点でまず目をひきました。トワコのキャラクターが、裁判の時はもちろん毅然としているのですが、基本的には柔らかく、好感を持ちました。

1つ目の事件は、夫婦間で望まない夜の営みを強要した夫に対する判決を求められます。2つ目の事件は、死刑になるために無差別殺人を犯したハーフエルフの男。3つ目は、法律では取り締まられていないものの、危険な作用を持つ薬草を売りつけた売人に対する判断。最後は、実の父親に幼い頃から性的虐待を受け続け、ついに父親を殺してしまった女性に対する裁判。

いずれも、日本でも類似の事件が起こっており、ある程度事件に詳しい人ならば「ああ、あの事件がモデルね」とわかるでしょう。それだけに、量刑を決めるとなると大変難しい判断を迫られそうですが、そこはそれ。ゲームですから3つの選択肢から選ぶだけです。夫婦間のセクハラ紛いとか、いわゆる合法ドラッグで死刑に出来たりしますが、ゲームだから仕方ないということで(笑)。

事件の説明があって量刑を決めるまでは、本当にあっという間なので、例えば検察と弁護側のやり取りとか、そういうものを入れてみても面白くなったような気もしますが、そうすると複雑になり過ぎますし、このくらい割り切って単純化した方が、ゲームとしては正解だったのかも知れません。判決を言い渡すと、トワコが量刑理由を簡単に述べますが、一応どの理由もそれなりに理にかなっており、量刑というものを考えさせられます。

そして、実はメインの裁判だけでなく、皇帝である勇者の裏での画策や、町ではクーデター云々などという不穏な要素もみられます。後半、これらの要素が展開で生かされるのかと思ったら、そんなことは全くありませんでした。これらの要素を伏線として生かしたら、更に物語の奥深さが増した気もしますし、使わないのならこれらの思わせぶりな描写はいっそ削除して、メインのトワコの物語に絞った方が良かったように思いました。

4つの事件からは、それぞれ作者さんの問題提起が感じられます。が、何せ量刑は自分で決められるため(正解がないため)、押し付けがましさがありません。このような社会問題をテーマにする上で、これはとても上手いやり方だなと感心しました。案外、個々の事件に対する細かい思想よりも、作者さんは法治国家というものについて、改めてその意義を問おうとしたのかも知れません。そう考えると、シンプルながら深い作品です。

実はこの作品、自由に動き回れるごく限定された場面でしかセーブできません。物語的にはそこまでセーブの必要性は感じないのですが、少し不便に感じました。と言うのも、この作品は量刑選択と選択肢に選び方で4つのエンドがあるのですが(終了後のおまけで詳しく語られます)、一度終了すると、見ていない他のエンドも自由に見られるようになるのです。更に、4つの裁判すらもここに自由にやり直せるという親切設計。ただ親切ではありますが、これでは周回プレイの必要がありません。自由にセーブできるようにして、ちゃんとプレイさせてから各エンディングを見られる仕様にした方が、ゲームとしては良かったような気がします(この親切設計は、ある意味とてもありがたいのですが)。

ツールはWolf RPGエディターで、プレイ時間は30分くらい。4つのエンドは、それぞれ味わいがあって、しっかり作られています。突然RPGのような戦闘が始まってしまうのも、意外といいアクセントになっていました。見た目は色物にも見えますが、短編ながらしっかり作り込まれて、テーマ性も感じる佳作です。気軽に異世界の裁判長を体験してみてください。
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