第711回/天は人の世に恋を作れり - 恋愛のすゝめ(薔薇園で紅茶とビスケットと絵本を) - 恋愛
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第711回/天は人の世に恋を作れり - 恋愛のすゝめ(薔薇園で紅茶とビスケットと絵本を)

恋愛
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恋愛のすゝめ

恋愛のすゝめ準推薦
■制作者/薔薇園で紅茶とビスケットと絵本を(DL
■ジャンル/お札と恋するタイムトラベルノベル
■プレイ時間/4時間

出版社に務める桜花院ミヤコは、自分を認められず、他人にも心を開けない性格。そんなある日、謎の声に導かれた彼女は、全く見覚えのない場所で突然目覚めた上、自分が何故そんな場所に来たのかの記憶も無くしてしまう。記憶を無くしたミヤコの目の前に現れたのは、これまた見覚えのない相手。お札と恋する、一風変わった女性向け恋愛ノベル。

ここが○

  • 特にサブキャラクターが非常に魅力的。
  • 上手く史実も取り入れた展開。
  • 三者三様の分岐が楽しめる。

ここが×

  • 一部時代にそぐわない言葉遣い。
  • 唐突に終わってしまう諭吉ノーマルルート。
  • アナザーエンドまで終わっても、少し釈然としない。

■天は人の世に恋を作れり

私は、恋愛もの全般が好みですので、女性向け作品も意外とプレイします(レビューまで書くのは、それほど多くないですが)。この作品は、典型的な女性向け作品ですが、主人公が26才という設定。女性向け恋愛ノベルとしては、主人公の年齢が高めです。しかし、主人公は恋愛経験があまりなく、描写だけ見ていると高校生か大学生くらいでもあまり違和感がありません。逆に、社会人主人公だからこそできる描写も多々あり、この設定は成功しているように思いました。

主人公の桜花院ミヤコ(苗字固定、名前は任意)は、26才の社会人。出版社に勤めています。実は実家がかなりの大金持ちで(財閥の令嬢?)、色々あったために(その辺りは本編で確認してください)自分に自信がなく、他人とも心から打ち解け合うことができません。そんなミヤコがある日帰宅し、何気なく財布の中の紙幣に目をやったところ、謎の声に導かれて見覚えのない世界に飛ばされてしまう、という出だしです。

恋愛のすゝめそして、選んだお札によって、飛ばされた先で3枚のお札の肖像画に描かれた3人と出会います。千円札の野口英世、五千円札の樋口一葉、そして一万円札の福沢諭吉。この3人との恋愛物語です。タイムトラベルものは比較的よくありますが、相手がお札。今までに例を見ない、何とも斬新な設定の作品ですね。

相手が実在の人物だけあって、もちろん時代設定も100年以上前です。そのため、描写も結構難しいところもあるとは思いますが、当時の風俗描写もしっかりしており、違和感を感じる点はあまりありませんでした。お相手となる3人も、恋愛ゲーム風にアレンジはされていますが、ちゃんと史実のエピソードも盛り込んでおり、知っている人ならにやりとできる場面も結構ありました。

ただ、言葉遣いが割と今風で、そこは読んでいて違和感を感じる場面もありました。「ざっくり」なんて言葉は当時ありませんし(「大雑把に」で良かったのでは)、無闇に「とか」を連発すると、てきめん今風になってしまいますからね。だからと言ってやたら古風にすればいいというものでもないですし、そこら辺りのさじ加減は難しいところではありますが。

個人的には、お札の額面順(千円→五千円→一万円)の順に読むことをお薦めします。千円札の野口英世は、デンマークの研究所に務めています。成り行きで、英世の部屋に住まわせてもらうことになったミヤコ(どのルートでも、相手の家に世話になりますけど)。物語としてはさほど起伏はないですが、意外と積極的な英世が面白い。ラストも、全部のルートの中でも一番ハッピーエンドな印象です。

五千円札の樋口一葉。一葉は女性のはずなのに、百合展開になるのだろうかと思っていたら、まさかの(笑)。このルートでは、一葉の妹である邦子がいいキャラクター。恋愛描写は少し薄い気がしましたが、史実を上手く織り込んで、ラストはかなり劇的な展開。ハッピーエンドではないですが、非常にまとまりのある、余韻を感じさせる終わり方でした。ただ、ミヤコの記憶云々は、このルートが一番薄かったように思います。

一万円札の福沢諭吉。恋愛ものとしては、このルートが一番よく出来ていました。お互いいい年なのに、初々しくて見ていて頬が緩みました。ここでは周吉が非常にいい役どころ。全ルートで、サブキャラクターが大変効果的に働いており、キャラクターメイキングの上手さが光る作品でした。しかしこのルートは、終わり方が若干消化不良気味です。その消化不良を解消するには、諭吉トゥルールートを読みましょう。諭吉トゥルールートは、単なる恋愛ものではなく、ミヤコの抱えていた問題も最後に上手くシナリオに絡み、悲恋ではあるものの、前向きで希望を感じさせるラストで、とてもすっきりした読後感でした。ラストに相応しい出来栄えです。

が、全ルートを読んでも、ミヤコを招いた謎の声については、色々よく分からないところが残ります。一応、アナザールートというのが読めて、「あんたかい!」な人が登場しますが、このルートでも何だかきちんと解決しませんし。そこをもう一歩踏み込んでくれていたら、と、読み終えた時に思いました。

3つの分岐は、ハッピーエンドあり悲恋ありでバラエティに富んでおり、恋愛ものが好きならば文句なく楽しめると思います。ツールは吉里吉里なので、大変軽く安定しており、遊びやすいです。1ルートだいたい1時間で、3人のルートにトゥルーエンド、アナザーエンドで5ルート合計4時間。選択肢は、最初のお札選択と、あとはトゥルールート分岐のところくらいで、簡単に攻略できます。豊富な1枚絵と、ルートによって異なるミヤコの服装で、男性がプレイしても楽しめるはずです。
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