第713回/2人で1つの真実を - 如月令嬢殺人事件(hiyokko) - ミステリー・サスペンス
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第713回/2人で1つの真実を - 如月令嬢殺人事件(hiyokko)

ミステリー・サスペンス
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如月令嬢殺人事件

如月令嬢殺人事件■制作者/hiyokko(ダウンロード
■ジャンル/カップルで殺人事件捜査ADV
■プレイ時間/45分

志摩満と宝田光は、付き合って2年の大学生のカップル。ある日光が友人の如月夢子のマンションに遊びに行き、ベッドで休んでいたところ、目覚めると夢子が殺されていた。第一発見者の光は有力な容疑者にされてしまう。満と光は、容疑を晴らすために聞き込みを始めた。浮かび上がってくる意外な人間関係。果たして真犯人は? レトロ風味の推理ADV。

ここが○

  • 意外と凝ったトリックで、推理の楽しさを味わえる。
  • 懐かしさを感じるシステムが推理ものに合っている。
  • 声の演技が良好。

ここが×

  • ウィンドウが横長なのに画面が縦長という謎。
  • トリックが凝っている割に、動機その他が少し希薄。
  • のっけから能天気過ぎる気がする光。

■2人で1つの真実を

さよなら、また明日」の作者さんの作品です。「さよなら」は、ほろ苦い青春の1ページを描いた恋愛ものでしたが、今回はがらりと雰囲気が変わり、ライトなユーモアミステリー。いかにも推理小説を思わせるタイトルロゴが、期待を高めます。主人公の2人は大学生のカップルです。最初はバカップルかと思ったんですが(笑)、この2人のやり取りが微笑ましく、読み進めるうちに好感を持ちました。この主人公たちの描き方は上手いですね。

主人公の志摩満と宝田光の2人は、付き合って2年になるカップル。そして光が友人の如月夢子の家に遊びに行き、なぜかベッドで休んでいる間に、部屋の中で夢子が殺されていました。死因は花瓶による撲殺。部屋で人が殴られて死んでいるのに目覚めなかったのはおかしいということで、光は有力容疑者にされてしまいます。このままでは犯人にされかねないということで、光は彼氏の満に助けを求めてきたのでした。

如月令嬢殺人事件初めていきなり驚かされるのは、通常のパソコン用ノベルゲームのウィンドウサイズなのに(少しだけワイド)、表示される画面はスマートフォン仕様の縦長画面ということです。このため、見た目よりもかなり画面が狭く感じます。ウィンドウサイズも変更できません。なぜこのような仕様になったのか、謎です。パソコン用の横長画面ならば、かなり開放感があって見やすかったと思うのですが……。

さて、この作品は結構登場人物が多いです。そしてなんとフルボイス。演技が自然で好感が持てました。特に主人公である満と光のやり取りが非常にいいですね。「さよなら、また明日」でも、登場人物の発言にはかなり現実味があったのですが、この作品でも、もちろん物語らしいデフォルメはあるものの、それが過剰になることなく、キャラクター描写にリアリティがあって、声の演技が好演であることも手伝って、立ち絵がないのに非常にキャラクターに臨場感がありました。

システムは、コマンド選択式の昔ながらのアドベンチャーです。知り合いに合って聞き込みをし、情報が得られれば新たに聞き込みできる人物が増えるというのが、基本です。また、聞き込みができる内容が増える場合もあります。これを繰り返し、少しずつ事件の真相に迫っていきます。昔懐かしい風味ではありますが、推理ものだと、単純に文章を読ませるだけよりも、このようなシステムの方が物語に合っているように思いました。

犯人が分かれば、警察に勤務する叔母の白玉和歌子に自分の推理内容を聞かせます。それが合っていれば、いよいよ犯人との直接対決。ここを二段階に分けたのも上手いやり方でした。まずプレイヤーに事件の大枠を把握させておいてから、容疑者と対決する。プレイヤーにも分かりやすいですし、物語の盛り上げ方としても理にかなっています。

何となくゲームを進めていると、推理パートで行き詰まるかもという心配があるかも知れませんが、選択式ですし、推理を間違ってもやり直すだけですので、しらみ潰しに選択肢を選んでいけば、そのうち正解にたどり着くでしょう。文字入力式だと危なかったかも知れません(?)。トリックはなかなか凝っていて面白いですし、犯人を追い詰めるシーンも見応えがあります。ただ、もう少しプレイヤーに分かりやすく真相をそれとなくほのめかしても良かったかも知れません。推理シーンで突然主人公が、プレイヤーが気付かなかったことをずばずば指摘しますから(それはそれで、読んでいる分には爽快ですが)。

細かいことを言えば、リアリティの面で少し気になるところがなくはありません。しかし、登場人物同士のやり取りがリアリティがあり、そのやり取りでこの世界観そのものを読者に納得させることができているため、細かいところはあまり気になりませんでした。こういう、キャラのやり取りで世界観にリアリティを持たせることができるのが、この作者さんの美点という気がしました。

ただ、トリックは面白いのですが、犯人の動機や人間関係のドラマという意味ではちょっと薄く、そこをもう少し物語に絡ませてみれば、より推理ものとして面白くなったような気がします。ま、短編ですからそこまでしてしまうと大変でしょうけど。それと、友人が殺されて容疑者扱いされているのに、最初から妙に能天気な光に、読み始めは違和感を感じました。これも、「そういうキャラクターなのだ」と思えば、途中から気にならなくなりましたけど。

ツールはティラノスクリプト。ADVなので選択肢は多いですが、一本道でエンドも1つです。プレイ時間は45分。エンディングがちょっと素っ気無いですが(いきなりタイトルに戻るだけ)、程よいゲーム性で気軽に推理の面白さを楽しめる、短編推理ものの佳作だと思います。難易度も手頃ですし、キャラクターのやり取りも楽しいですので、このジャンルが苦手な人でも手軽にプレイできると思います。
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