第716回/空は広くて眩しくて - 空色フェスティバル(enjoy!) - オムニバス・その他
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第716回/空は広くて眩しくて - 空色フェスティバル(enjoy!)

オムニバス・その他
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空色フェスティバル

空色フェスティバル■制作者/enjoy!(ダウンロード
■ジャンル/空がテーマの掌編集ノベル
■プレイ時間/20分

夕焼け空を見て、一緒の病院に入院していた少女のことを思い出していた少年。記憶を失って自殺を図ろうとする少年と、それを止めようとする少女。高校を卒業してニートになったまひると、幼馴染のあまね。空の色について質問してきた幼い妹に、兄が答える話。「空」をテーマにした、1本5分で読める掌編集。

ここが○

  • 整っていて描写もよく書けている文章。
  • レイアウトが適切で、目に優しく読みやすい。
  • 空をテーマにした統一感と、背景写真の美しさ。

ここが×

  • ルビが一切振られていないのは少し不親切。
  • 少しあっさりし過ぎていると感じる話も。
  • 段落の頭は一字下げた方が読みやすい。

■空は広くて眩しくて

今回も古めの作品。1本5分で読める掌編の詰め合わせ。全部で5本あります。オムニバスの場合は、舞台設定や時期に共通のテーマがあるもの(「がーるずえんどういーく」「今年のクリスマスは中止しないお知らせ!」など)、ジャンルが共通の作品を集めたもの(「Giggle。くすくす」「ハルカナココロ」など)、特定のキーワードをテーマにしたもの(踏切」「ノベルゲームアンソロジー『冬』」など)がありますが、この作品のテーマは「空」です。上の例でいけば「特定のキーワードをテーマにしたもの」に相当します。

開始するとすぐに、美麗なイラストのタイトルがお出迎えですが、作品中ではイラストは一切登場せず、文章だけです。最近、絵がついた作品が圧倒的に多数でしたから、たまに字だけの作品を読むと、やはり独特の楽しみがあります。この作品は、字だけの作品の例に漏れず、決して凝り過ぎない、さりとて淡白過ぎもしない理想的な文章です。文章力や描写が十分でありながら、ノベルゲームらしさもあるいい文章だと思います。

空色フェスティバル
最初は1本目の作品しか読めず、それを読了すると2本目が、それを読み終えると3本目が……という作り。つまり順番に読まねばなりません。順番通りに読めば、全体の掌編が1つに繋がるなんてことはなく、全ての話は完全に独立していますから、最初から好きな話を選ばせてくれても良かったような気もしますが、これも1つの構成でしょう。

1本目は「斜陽の涙」。いわゆる病弱もので、作りとしては典型的なサンドウィッチタイプ(冒頭→過去→また冒頭の時間に戻る、という作り)。夕焼けの赤がストーリーのいいアクセントになっていて、上質な余韻を残してくれます。ラストは色々な解釈ができますが、掌編ですし、明確に描写せずにあえて読者に解釈を委ねるのは、ありなのではないでしょうか。5本の中では、私が一番好きな話です。

2本目は「そんな関係」。自殺しようとしている記憶喪失の少年と、それを止めようとする少女の話。掌編にするには少し盛り込んでいる要素が多い上、少し淡白なところもあるようにも感じますが(特に、記憶喪失については、原因が語られていない上、ラストでも解決する訳ではないので、少々すっきりしないものが)、主人公たち2人の関係は微笑ましく、ラストもいい締め方なのではないでしょうか。

3本目は「触れたい」。「あなた」に触れたいと思いつつ、それが叶わない誰か。ちょっと言葉では説明し辛いのですが、読んでいるうちに「あなた」「私」が何を示すのかは、すぐに分かると思います。絵本のようなストーリーで、これも綺麗な終わり方。印象的な台詞のやり取りと、美しい背景写真で見せてくれる、掌編らしい良さが感じられる一品です。

4本目は「私の人生もこんな青空のように澄み渡ったら。」。高校を卒業したものの、就職できずにニートになった少女まひると、幼馴染の少年あまねのちょっとしたやり取り。まひるとあまねのやり取りは楽しく、ラストも定番ながら頬が緩むようなほのぼのぶり。物語としてはかなりあっさりめで、取り立てて起伏がある訳ではなく、「一場面を切り取った」ような作りではありますが、掌編ですからこういうのもありでしょう。

最後の5本目は「灰色、ときどき水玉模様」。雨の降る日に、幼い妹を幼稚園に迎えに行った、中学生の兄。この2人の会話で進みます。これも明確な起伏がある訳ではないのですが、「空の色」を上手くテーマに盛り込み、幼児とその兄らしい会話のやり取りだけで徐々にラストに導く、その構成は巧みで、読んだ後は心がほんのり温まります。全5本とも、掌編らしい面白さを持ちつつ、きちんとまとまりがあり、どれもいい読後感でした。

ツールは吉里吉里です。レイアウトというか、適度に空白行を入れたり、過剰に長い文章で画面を埋めつくさないようにしていたり、読みやすくする工夫は好感が持てました(ただ、段落の頭は一字下げた方が読みやすいと思いますし、ルビが一切ないのは少し不親切に感じました)。全て一本道のお話で、全部読んでも20分かかりません。派手さはありませんが、少しの時間で心に安らぎをもたらしてくれる物語ばかりです。ちょっとした空き時間に楽しんでください。
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