掌編ミニレビュー第20回 - うおおけ/俺とアイツと喋るぬいぐるみと東京の青い空/世界を見つめる眼差し - 掌編ミニレビュー
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掌編ミニレビュー第20回 - うおおけ/俺とアイツと喋るぬいぐるみと東京の青い空/世界を見つめる眼差し

掌編ミニレビュー
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58. うおおけ

うおおけ■制作者/□(ダウンロード
■ジャンル/不思議系
■ツール/Live maker


風変わりな作品です。主人公は、美しい鱗を持ち、毎日海中で優雅な舞を舞う魚。その魚が、ある時浜辺で人間の女性に捕らえられ、家に連れ帰られて桶の中に入れられます。その家にいたのは姉と弟の2人で、弟は目が見えません。ある日姉は出かけたきり帰って来ず、弟は心配して泣きじゃくる日々。見かねた魚は、月に頼んで美しい鱗の代わりに声を与えて欲しいと頼むのですが……。

このあらすじからも分かるように、童話のような雰囲気を持った話です。何より、独特のタッチで描かれた絵が大変美しい。掌編ですが絵の枚数も多く、どの絵をとっても非常に幻想的です。物語も、理詰めで考えるとよく分からないところもあるのですが、素敵な1枚絵と、淡々とした筆致が醸し出す、何度も物悲しい雰囲気は、他の作品では見られないものです。

終わり方が少し唐突な気もしますが、色々想像できて、これはこれで掌編の1つの形としてありだと思います。句点がない箇所があったり、変なところで改行していたり、少し作りが粗いところもあるのですが、この作品でしか味わえない魅力を持った物語です。

59. 俺とアイツと喋るぬいぐるみと東京の青い空

俺とアイツと喋るぬいぐるみと東京の青い空■制作者/Einsomkeit?(ダウンロード
■ジャンル/シリアス・感動系
■ツール/吉里吉里


掌編では少し珍しい気がする、闘病(不治の病)ものです。ただ、病院(闘病)シーンの割合が多くありませんので、「シリアス・感動系」としました。主人公は、剣道部で背も高く見た目もごつい、木村寛秀。その友人佐々木誠は、さらさらの髪の可愛い感じの少年。そして誠には「可愛いものが好き」という趣味がありました。この作品、実はBLものです。とは言え、そこまで直接的な描写がある訳ではないので、BLや百合が苦手な私でも、それほど支障なく読むことができました。

普通の友情もの(または男女の恋愛もの)でも良かったような気はするのですが、この物語は掌編にも関わらず、ちょっとした展開や道具が後半での伏線になっていたり、作りが凝っていました。立ち絵がない地味な作品でしたが、物語作りや台詞回し、キャラクターメイキングはとてもしっかりしており、掌編らしからぬ読み応えがある作品です。

なお舞台は晩夏の北海道です。主人公の寛秀がしつこいくらいに「北海道はでっかいどー」と連呼する以外に、あまり北海道らしい描写はないのですが(笑)、そこはまあ気にせずに、短い作品ですが、短さを感じさせない密度があるドラマが描かれた物語で、プレイ時間以上の「濃さ」を感じさせてくれました。

60. 世界を見つめる眼差し

世界を見つめる眼差し■制作者/山下式(プレイする
■ジャンル/シリアス・感動系
■ツール/Script少女のべるちゃん


今回変化球の作品ばかりなのですが、この作品もかなり変わっています。両親が離婚し、家族の愛というものに懐疑的になった主人公が、ただひたすら独白で人生とは、幸せとはという命題について自分の考えを述べ続けます。文章力は高いですが、文章表示領域が狭く、延々と独白が続くため、少し読み辛く感じました。のべるちゃんの仕様はよく分かりませんが、この形式ならば全画面テキストウィンドウの方が読みやすかったと思います。

そして主人公は中学校で、幸せな家族に恵まれたクラスメイトの言葉で、世界が一変します。その友人の言葉を虚構だと突き放すのではなく、さりとて一瞬で綺麗事を認めるのではなく、現実的でかつきちんと説得力のあるパラダイムシフトが簡潔に描かれていて、作者さんの筆力の高さを感じさせました。

もちろん、普通の意味で「面白い」物語かと言われると、そうではないのですが(エンターテインメント性はないです)、掌編ながら哲学風の作品を見ることができたのは、新鮮な驚きでした。意味不明な理論ではなく、ちゃんとまとまりがあります。なお、作中で「高尚な音楽」としてラヴェルとドビュッシーの名前が出てきましたが、作者さんはフランス印象派のクラシックがお好きなのかも知れませんね。
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