第726回/失くした思いに黄昏れて - 黄昏トロイメライ(Over Flowers) - 不思議系
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第726回/失くした思いに黄昏れて - 黄昏トロイメライ(Over Flowers)

不思議系
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黄昏トロイメライ

黄昏トロイメライ■制作者/Over Flowers(ダウンロード
■ジャンル/夏の黄昏で少女と邂逅ノベル
■プレイ時間/1時間半

逢崎昏斗は、故郷を離れて都会で暮らす大学生だが、夏休みに親友の紫藤夕哉から手紙を受け取り、数年ぶりに故郷に帰ってきた。夕哉や、幼馴染の川島茉莉との再会を喜んだ昏斗は、ふと懐かしい河原へ足を運んでみた。そこで出会った不思議な少女、汐雫。彼女は昏斗を知っているようだが。夕焼けが眩しい夏の田舎で繰り広げられる出会いと別れの物語。

ここが○

  • 整った文章。
  • 語り過ぎず、それでいて十分な描写力。
  • 夏の田舎の雰囲気がよく出ている雰囲気。

ここが×

  • ルビが中2っぽい。
  • 恋愛ものとしては少々無理やり感。
  • 力技としか思えないとあるキャラクター。

■失くした思いに黄昏れて

今までこのパターンの作品を何本ご紹介したか、数えるのも大変そうですが、「夏に田舎に帰省」をテーマとした作品です。そして、帰省した故郷で、謎の少女と出会うというのも、この手の作品の定番です。定番でありながら、今でも「夏に帰省」をテーマにした作品が多く作られるのは、やはりこの舞台は読み手の心を揺さぶる何かがあるのでしょう。私も、たくさん読んだのですが、やはり夏に田舎というだけで心が踊ります。

主人公は逢崎昏斗(あいざき・くれと)という名前の大学生。数年前になんとなく故郷を離れましたが、親友の紫藤夕哉(しとう・ゆうや)から手紙をもらい、久しぶりに帰ってきました。親友の夕哉と、幼馴染の河島茉莉(かわしま・まつり)との再会。この茉莉は分かりやすく主人公好き好きオーラを出しています。おまけに方言(九州の方言風)。すぐにプレイヤーの心を掴んでくれます(笑)。

黄昏トロイメライそして、河原で出会う謎の少女、黄間汐雫(おうま・しずく)。何やら昏斗を以前から知っているようですが、昏斗には見覚えがありません。そして汐雫は黄昏時の少しの時間しか、昏斗と会えないと言います。この汐雫の謎をベースに、話は緩やかに進んでいきます。背景は素材ですが、いいものを使っており、夏の雰囲気がよく出ていますね。

汐雫の秘密ですが、取り立てて珍しいものではありません。類似のプロットで組まれた作品は、たくさんあるでしょう。その中でこの作品は、絵がなく(立ち絵は影絵です)地味な見た目なのですが、丁寧な文章と、しっかりした描写で夏の田舎の雰囲気や、昏斗たちの何気ない日常描写を描き出しています。また、意外と動きを使った演出も凝っています。アイキャッチもセンスが光っており、文章の魅力を前面に出すため、あえて絵を使わなかったのかな、とも思わされました。

その試みは成功していると言っていいでしょう。文章力が高く、描写も適度です。情景描写も心情描写も、描き過ぎず飛ばし過ぎず、量が絶妙です。会話のテンポも軽妙。文章を読んで状況を思い浮かべる、ノベルゲームらしい楽しみを味わえる作品です。横長の画面でちょっと1行に表示される文字数が多いのですが、改行ピッチが広めに取られており、読みにくさはさほど感じません。

後半も、さほど目新しい展開はしません。こつこつと丁寧な描写を積み重ね、奇を衒わずに一歩一歩物語を進めるスタイルに変わりはありません。その堅実な作りには好感が持てます。ただ、1回目は何も明らかにならないまま終わってしまうので、「?」となるかも知れません。すぐ2回目をプレイしましょう。そうすると、少し描写やエピソードが追加された2周目が始まります。

この2周目ですが、汐雫のキャラクターが壊れ気味というか、茉莉に対するちょっといき過ぎた言動が気になりました。いくら恋のライバルとは言え「雌豚」と言ってしまうのはどうなのか(汗)。「雌豚」なんて口走ったキャラがラストで綺麗な言葉を語っても、ちょっと真実味がありません。その恋愛面においても、昏斗と汐雫が初めて会ったのが5歳で、数年一緒にいたとしても、恋愛関係に発展するには少し無理があるように感じました。なので、2周目のラスト自体に説得力を欠いてしまっています。

何より、ラストに出てくるとあるキャラクター。彼女に全てを説明させて、彼女自身の正体は謎のまま。私は3周目があるのかと思ったら、そんなことはありませんでした。これはどういうことかと頭を抱えたのですが、彼女の名前をよく見て「『デウス・エクス・マキナ』か!」となりました(もしかしたら違うかも知れませんが、そうとしか解釈のしようがない)。これはいくらなんでも力技過ぎます。もう少し上手い解決法がなかったものかと、しばらく考え込んでしまいました。

と、気になる点もありますが、丁寧な文章で綴られる夏の情緒には、捨てがたい魅力があります。若干ルビが中二風なのが気になるのですが(こういうのは節度が大事だと思うのです)、文章量があるのに心地よくすいすい読める作品です。ティラノスクリプト製で、選択肢は2周目の最後に1つだけ出てきます。プレイ時間は1時間半くらい。既読スキップがないので少し2周目が煩わしいですが、上手く飛ばし飛ばし読みましょう。
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