掌編ミニレビュー第22回 - Please call me…?/Eat me/再会はエレベーターの中で - 掌編ミニレビュー
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掌編ミニレビュー第22回 - Please call me…?/Eat me/再会はエレベーターの中で

掌編ミニレビュー
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64. Please call me…?

Please call me…?■制作者/ハルノサクラ(ダウンロード
■ジャンル/不思議系
■ツール/ティラノスクリプト


「Please call me 〜」は「私を〜と呼んで」という言い回しですが、「タクシーを1台お願いします」のつもりで「Please call me taxi」だと「私をタクシーと呼んでね」という意味になってしまうという、有名なジョークがあります。この作品はそれをテーマというか、モチーフにしたちょっとした不思議な物語。英語の言い回しを使った主人公櫛田と、ヒロインの若菜のやり取りで物語が始まります。

と、普通の青春ものだと思っていたら、後半にはちょっと意外な真実も明らかになり、掌編らしからぬ捻りが加えられた意欲作です。それまでに、何かそれを示唆する描写があるわけではないので、若干唐突さを感じなくもないのですが、最後も英語のジョークを使って締めており、短い作品ながら凝った構成の面白さを味わえます。また、櫛田と若菜の気取らないやり取りもいいですね。ただ、もう少しシリアスさも感じさせる描き方をした方が、後半が生きたような気もしますが、この作品の場合は、この「さらりとした軽さ」がいいところなのかも知れません。

文章も会話もそして構成も、結構工夫がされており、独自性を感じさせてくれる作品です。そういう工夫は、長い作品であまりやり過ぎるとくどく感じるものですが、この作品はその意味で塩梅がちょうどよく、掌編らしい気軽さと、掌編ならではの工夫が盛り込まれた意欲作だったと思います。

65. Eat me

Eat me■制作者/つぐみ(ダウンロード
■ジャンル/SF
■ツール/ティラノスクリプト


これまた非常に変わった作品です。見た目はモノクロームの線画。BGMも効果音も一切なく、読者を突き放したような作りにも見えます。しかし、独特の設定と意外と言ったら失礼ですが、深い内容を持った作品でした。一見不条理系の物語にも見えますが、読んで何が何だか分からない、なんてことはないと思います。それでいて、色々と想像する余地もあります。

登場するのはNFS(「なんか不思議な生命体」の略らしい。和む(笑))という謎の生物。このNFSと色々コンタクトと会話したり道具を与えたり、色々とコミュニケーションを取っていくと、徐々に世界観やNFSとは何なのかが見えてきます。もちろん作中ではっきり説明されるわけではないのですが、この作品の場合は、文体といい描写といい、適度にオブラートにかかったその描き方が、非常に効果を高めているように思いました。

登場するNFSは、どれもゆるキャラのような見た目なのですが、隠された事実を知ると、考えさせられます。せめてBGMでもあればとは思ったのですが、このシンプルさを体験すると、BGMがないことすら演出の一環なのではないかと思わされるので不思議です。4種のエンディングの中には終わり方が非常に素っ気ないものもありますが、考えてみるとどのエンドも深いと重ますよ。

66. 再会はエレベーターの中で

再会はエレベーターの中で推薦
■制作者/あき(ダウンロード
■ジャンル/恋愛
■ツール/ティラノスクリプト


ビデオレター」の作者さんの作品です(公開はこちらが先)。この作品には感心しました。プレイ時間が短いため掌編枠でのご紹介ですが、一般枠で紹介しようかと思ったくらいです。「ビデオレター」もいい作品でしたが、この作品も劣らぬ出来栄え。10分に満たない物語でこれだけ心を動かすというのは、おいそれとできるものではありません。この作者さんの能力の高さを感じさせてくれました。

主人公の祐二が、以前片思いしていた女子高生と、ショッピングモールのエレベーターでばったり会うのですが、トラブルでエレベーターが止まり閉じ込められてしまいます。「ビデオレター」もそうでしたが、この作者さんはシチュエーションの作りが非常に上手いです。読み手の興味をひくシチュエーションに、更にキャラクターの設定も上手に利用したイベントの作り方も秀逸。非常に効果的に物語を引っ張り、最後で見事な落ちを付けてくれます。

ちょっと寂しい終わり方ではあるのですが、掌編でこれだけ余韻を感じさせる物語は、なかなか書けるものではありません。ヒロインの名前が最後まで分からないのも、切なさを高める上で効いていましたね。この作者さんは、是非もっと長い物語を読んでみたいです。悲しくも少し希望を感じさせるラストシーン。1時間の作品に勝るとも劣らない読後感の作品です。お薦めします。
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