第729回/等身大の小さな奇蹟 - インプリントオブメモリー(えるさわ) - 学園・青春
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第729回/等身大の小さな奇蹟 - インプリントオブメモリー(えるさわ)

学園・青春
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インプリントオブメモリー

インプリントオブメモリー■制作者/えるさわ(ダウンロード
■ジャンル/神社部のお社大移動ノベル
■プレイ時間/1時間

転勤族の親を持つ高校生の柊灯矢は、幼馴染の三科綾が住む故郷の渋山へ戻ってきた。転校初日、綾の友人である零香、綾と共に、彼女たちが所属する「神社部」へ誘われ、ほぼ強制的に入部することに。近くにある三軒稲荷神社の保守が主な活動だったが、ある日その小さな神社が壊されるときき、3人は神社を守るため立ち上がる。風変わりな青春物語。

ここが○

  • 神社部という設定が面白い。
  • 3人のやり取りや、院長との絡みが軽妙。
  • 程よくシリアス、リアルなラスト。

ここが×

  • テキストウィンドウが横長で、かつ透過度が高く読み辛い。
  • 一部の展開は少々無理やり過ぎる気が。
  • 誤用が少し気になる。

■等身大の小さな奇蹟

学園ものの舞台も色々で、部活というのは定番ではありますが、今作の舞台は今まで見たことも聞いたこともないような部です。なんとその名も「神社部」。主人公の灯矢は最初「ジンジャー部」と勘違いしていました(笑)。ネーミングだけでインパクトがありますが、その活動実態は実は地味で堅実。学校の近くにある、小さな神社(社?)の保守、掃除を行うというもの。

灯矢は、父親が転勤族で今まで全国を転々としていたのですが、幼馴染もいる故郷で落ち着きたいということで、故郷の渋山に帰ってきました。その自宅に、幼馴染の三科綾が起こしにくるところから、物語が始まります。定番と言えば定番な出だしですが、このお約束全開の冒頭部を見ると、どことなく心が落ち着くのが、フリーノベルゲーム愛好家の性かも知れません(笑)。

インプリントオブメモリー教室で、灯矢は綾の親友、零香を紹介されます。その零香は、昔大病を患っており、病院の近く(学校の近くでもある)の小さな三軒稲荷神社(稲荷神社は狐を祀っている神社です)の白狐のお陰で、病気が回復したという過去がありました。そのため、その神社には人一倍思い入れがあり、自分なりに掃除をしていたりするうちに、部活動にまでしてしまったのでした。

そして3人の「神社部」の活動が幕を開けます。なにせ地味な部活ですので、いったいどの様に物語が進むのかと思いきや、比較的早く物語が動き始めます。なんと、神社のある森が開発により切り崩されることになり、そのため神社も取り壊されることになったのでした。由緒正しき神社ならともかく、無人で誰の所有物かも分からないため、どうすることもできません。かくて、神社部の3人は何とか三軒稲荷神社を守るために、立ち上がったのでした。

まず気になるのは、文章が読みにくいです。文体の問題ではなく、単純にテキストウィンドウの横幅の問題。ワイドウィンドウをほぼいっぱいに使っているため、どうしても読みにくくなります(適宜改行を入れてはいるのですが)。またテキストウィンドウの透過率が高過ぎ、これも読み辛さを助長しています。決して長い作品ではありませんが、この辺りには少し配慮が欲しかった様に感じます。また、二、三、誤用が気になりました。「うわばみ」は大食漢ではなく大酒飲みのことですし、「遺跡」は建物や場所のことですから、勾玉や出土品を「遺跡」と呼ぶのは、少々違和感を感じました。

さて、物語です。図書館で神社の由来を調べたり、郷土の民俗学者の学芸員に話を聞いたり、色々3人も頑張るのですが、どうにもなりません。署名を集めもするのですが、たった1日では事態を動かせるはずもありません。なので中盤で物凄い力技の展開となります。見ていて「いいのかこれは!?」となってしまいました。せっかく学芸員の佐久間さんも力を貸してくれたのですし、もうちょっとその辺りの絡め手があっても良かったのでは。署名という「それは無意味なのでは」という手から、「それはいくら何でも強引なのでは」という手段に飛んでしまうため、その辺りの展開にはどうしても無理を感じてしまいました。

しかし、主人公たち3人のキャラクターの描き分けや、立ち絵はないものの院長先生など、登場人物の使い方ややり取りはよくできており、キャラクタードラマとしては魅力のある物語です。展開そのものには無理を感じなくもなかったのですが、キャラクターのやり取りの勢いで物語を進ませてしまうパワーを持っています。院長が、一見無茶にも思える3人のお願いをきいてあげた理由にも、実はちゃんと理由がある点には、なるほど上手く考えたなと思わされました。

この物語、よくある「奇蹟」に頼ろうと思えばいくらでもできたでしょう。しかしあえてそれをしていません。途中までの展開に力技を感じながらも、読み終わった時には不思議と後味の良さを感じたのは、奇蹟に頼らず、彼らが自分にできることを頑張り、周りの大人が手を貸してくれた結果、起こり得る範囲での「等身大の奇蹟」によるハッピーエンドが訪れたからではないかと思います。その意味で、とても節度が効いており、いい幕引きだったと思いました。

ツールはティラノスクリプト。選択肢はなく、プレイ時間は1時間から1時間半くらいです。キャラクターがよくできていますので、せっかくなら恋愛要素を入れても面白かった様な気もしますが(恋愛要素は全くありません)、それをやると主題がぼやける恐れもありますし、この作品はあくまで「神社部」の物語に絞ったところに、面白さがあるのでしょう。少し変わった学園・青春ものを読んで見たい方にお薦めします。
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