第733回/愛するのではなく愛し合おう - 永久の白百合(夢幻飛翔) - 伝奇
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第733回/愛するのではなく愛し合おう - 永久の白百合(夢幻飛翔)

伝奇
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永久の白百合

永久の白百合準推薦
■制作者/夢幻飛翔(ダウンロード
■ジャンル/現代伝奇百合バトルノベル
■プレイ時間/1時間

吸血鬼になって10年の悠は、不幸を背負いつつ血を吸って生きながらえる生活に嫌気がさしていたが、凄腕魔法使いの少女風音に助けられる。恋仲になった2人は、風音の屋敷から一緒に逃げ出し、その日暮らしの生活を始めるが、そんな2人に迫る魔の手。やがて悠は否応無しに戦いに巻き込まれていく。百合要素のある現代伝奇物語。

ここが○

  • 展開のテンポが良く、気持ちよく読める。
  • しっかりした起承転結と、役割のはっきりしたキャラクター。
  • 百合ものだが、実は恋愛ものとして良くできている。

ここが×

  • とはいえ、百合が苦手なら読みづらいかも。
  • 括弧書きの読み仮名が中二風。
  • 最初からお互いの好感度が最大なので、そういう意味での面白みは薄い。

■愛するのではなく愛し合おう

最近は、また意図的に古めの作品を主体に探しています。そうして、古めの作品を当たっているときに見覚えのある作者さんの名前を見ると、旧友に再会したような気持ちになり、勇んでダウンロードしてしまいます。この作品は「安らぎは彼方へ」の作者さんによるもの。絵柄が同じで懐かしさを覚えました。このシリーズは結構たくさん出ており、百合ものの伝奇バトル。シリーズ各作品の間には直接の関連はないようなのですが(でも続編的な物語もある模様)、まずは第1作目からやるのがいいと思い、これをプレイしてみました。

主人公は悠という名前の女性吸血鬼。吸血鬼になった(された)のは10年前のようです。20才の頃に吸血鬼になったという描写があったので、30才くらいということになりますが、見た目は若々しく年齢を感じさせません(もっとも今日びの30才の女性なんて、昔と比べると若いものですが)。吸血鬼だから年をとらないということなのかも知れませんね。その悠が力を使い果たして倒れているところに、風音という少女がやって来て助けてくれるところから始まります。

永久の白百合最初に気になった点です。この作品は、ルビではなく括弧書きで読み仮名が振られているのですが(NScrにもルビ機能はあったような気がしますが)、そのルビが何というか中二風味です。以前にも書きましたが、こういうのはここぞという場面にしないと、ちょっと胃にもたれてしまいます。もっとも「安らぎは彼方へ」でも全く同じことを書いていますので、これがこの作者さんの作風なのかも知れませんが。

そしてこの作品は、いきなり最初で悠と風音が恋人同士になってしまいます(!?)。まあ、百合と言ってもそこまで踏み込んだ描写がある訳ではありませんし、百合ものが苦手な私でも、別に問題なく読めましたので、十分許容範囲内だと思います。気になる人は気になるかも知れませんが、この作品における百合要素は、単なる味付けではなく、作品のテーマに関わる重要な部分なのです。

というのも、途中で風音が悠の態度に疑問を抱き、彼女から離れるという描写があるんですよね。そこで悠は自分の態度や考え方を見直し、それが後半の最大の戦いで窮地を脱するための大事な布石になっています。恋愛要素が、ある意味展開の根幹を支えていると言えるのです。

とは言え、「男女の普通の恋愛じゃ駄目なのか?」と言われれば返答に窮するのですが(笑)、そこはそれ、百合要素こそがこの作品の個性だということで。まあ、最初から好感度MAXなのは少し恋愛ものとしての緊張感が薄いとも言えますし、悠と風音が惹かれ合う過程をもう少し描いても面白かったような気もするのですが、中盤で登場するライバルのソリティがいいアクセントになっていますし、その意味では恋愛ものとしての構成も良くできていると思います。

物語のジャンルとしては、吸血鬼だの魔法だのが出てくる現代伝奇バトルということになりますが、戦闘シーンも迫力があり、テンポも上々です。起承転結もしっかりしており、読者を上手く引き付ける力を持っている物語です。魔法については、少し設定を描き切れていないところを感じますし、設定に都合の良さを感じるところがなくもありませんが、尺の長さからして、あまりその辺りをくどくどと描くのもしつこいですし、このくらいで潔く切ったのは、ある意味英断とも言えるでしょう。その分、ストーリー展開を純粋に楽しませてくれます。

主要キャラクターは4人ですが、キャラクターの位置付けがはっきりしている上、動かし方が明瞭で、それぞれに重要な役割を担っており、キャラクタードラマとしてもなかなかレベルが高いと思います。何より作者さんが終始ノリノリで(死語)書いていることが伝わって来て、読む側も楽しくなります。こういう気持ちを味わえるのが、フリーノベルゲームの一番の醍醐味かも知れません。

ラストは、全てが解決した大団円とは言えず、少しすっきりしないところが残るのも事実です。しかし、逆にこの先の2人を想像する楽しみもあります。想像する楽しみと、問題の解決のバランスが上手くとれているいいラストなのではないでhそうか。どうやらこの作品のアフターストーリーも公開されているようですので、時間をみてそちらもプレイしてみたいなと思わされました。今回の敵アリウムが再登場する作品もあるようですよ。

ツールはNScripterです。選択肢のない一本道で、プレイ時間は1時間程度。プレイしやすいのですが、全画面テキストウィンドウの透過率が高く、少し文字が読みにくいようにも思いました。その分絵は見易いですから、どちらをとるかという問題かも知れませんが……。百合ものですからプレイヤーを選ぶ作品かも知れませんが、伝奇としても恋愛ものとしても、水準を超えた出来栄えです。先入観なしに読んでみてください。
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