第80回/全ての手がかりは作品内に - 機械仕掛けの鴉~前奏曲(Project Crow) - ミステリー・サスペンス
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第80回/全ての手がかりは作品内に - 機械仕掛けの鴉~前奏曲(Project Crow)

ミステリー・サスペンス
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機械仕掛けの鴉~前奏曲

機械仕掛けの鴉~前奏曲準推薦
■制作者/Project Crow(ダウンロード
■容量/18.4MB

大学1年生の岩崎創は、幼なじみの遠野真理絵のマンションの自室でくつろいでいた。不意に真理絵が怪しい物音を聞いたと言う。廊下に出てみると、同じフロアに住む女性が呆然と立ち尽くしていた……。否応無しに事件に巻き込まれる創。ダイイングメッセージが意味するものは? 本格的なミステリーノベル。

ここが○

  • 驚かされるどんでん返し。
  • 本格的な謎解き。ちゃんと全てのヒントが提示されており、フェアだと感じた。
  • 推理を助けてくれるTIPSが便利。

ここが×

  • 表現に無駄が多い。主人公の性格はどうにかして欲しい。
  • 動機にちょっと無理があるような。一部謎解きも少々強引な感。
  • ラストに少々興醒め。

■全ての手がかりは作品内に

推理ものを連続してご紹介。「鴉」は「からす」と読みます。何故「烏」じゃないのかはよく分かりませんが、かなり本格的な推理ノベルゲーム。「前奏曲」とタイトルにありますが、体験版という訳ではなく、完成した作品になっています。

開始してすぐ目に付くのは、主人公の創と真理絵の、少々電波が入った会話。と言うか、中盤にかかっても主人公の創は、わざとやってるとしか思えないような、絵に描いたような「嫌な奴」。これはちょっとなあ……。まあ、あのドルリイ・レーンも、裸で日光浴するような変人だし、推理ものの主人公なんてそんなものかも知れませんけど(笑)。そこさえ我慢すれば、じきに事件は起きます。ただ、全体に表現に無駄が多いです。恋愛ものならともかく、推理ものはもうちょっと贅肉を落とした表現の方が、私は好みですね。冗長な表現で、一部流れを損なってしまっている箇所があるのが、気になりました。

舞台はマンションのみで場所の移動も少ないため、ちょっと淡々とした印象ですが、かなり本格的な推理ものです。この手の作品では、証言内容などをメモしておくのが結構面倒なんですが、この作品では「TIPS」という機能で、主人公が得た情報を記録できます。これがなかなか便利です。ストーリーも基本的に一本道なため、そう難しいところはありません。

作者さんは推理小説好きらしく、論理的な面では見事に組み上げられたトリックだと思います。ヒントも十分提示されているため、私は非常にフェアだと思いました。ただ、動機が苦しい……。とりあえず、現実世界では絶対ありえなさそうです(苦笑)。動機にもうちょっと現実味があれば良かったんですけど。後は、一部のトリックがちょっとこじつけっぽい感じ。特にダイイングメッセージの謎は、言われてから初めて「ああ」と気付き、直後に「これは無理ありすぎだろ!」と思ってしまいましたから。これはいくらなんでも苦しすぎるでしょう。ミステリーでなく、なぞなぞなら上出来かも知れませんが(笑)。

さて、今作の見所は何と言っても驚きのどんでん返し。クライマックスに入った直後に私もすぐ気付き、「あー、そう言う事か!」と膝を打ちました。このオチの付け方には、一本取られました。私は2回目でグッドエンドに到達しましたが、かなり意地悪で、人によっては「インチキだ!」と思うかも知れません。個人的には、フェアなこの作品の中で唯一アンフェアな箇所がそこでした(笑)。どうしても分からない方は、作者さんのサイトにヒントがあります。

ただ、クライマックスの展開が、全てをぶち壊しにしてしまってます……。ネタバレになるので書けませんが、「普通常識のある人間なら、そこはそうじゃない行動を取るだろ?」と、きっと誰でもツッコみたくなる箇所があるのです。推理ものは、人間の行動をロジカルに組み上げ、それを解き明かす物語だけに、その「行動」が「常識で考えてありえない」ものであったら、その物語自体が破綻します。ラストで、「現実にあの状況であんな行動に出る人は多分1人もいない」行動を主人公がとってしまった為に、それまでの物語までも色あせてしまう結果になったのが残念です。

この作品の作者さんは、多分世間にあふれる「現実味のないミステリー」に対する問題提起のつもりで、この作品を書かれたんじゃないかと思うんです。普通考えて、ミステリー小説のような事件なんて、現実にはありえませんよね? この作品は、そんなミステリーに対するアンチテーゼのように、私は感じました。だとしたらなおの事あのラストはいかんだろう、と。

所詮フィクション。面白ければ、嘘っぽかろうが非現実的だろうが、何でもあり」と割り切るならあのラストもありでしょうけど(そして私はそれでもいいと思うけど)、この作品のテーマは、多分そうじゃないですよね? ラストの圧倒的な「非現実感」に、私は、主人公である創が、劇中で感じたであろう違和感と同様の違和感を、あのシーンで感じました。そこだけが残念な点です。

ごちゃごちゃ言いましたが、歯応えがある推理ノベルをお探しの方であれば、文句なく満足できる一品で、非常にお勧めです。じっくり腰をすえて挑戦してみましょう。衝撃のどんでん返しを、是非体験してみてください。
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