第743回/涼しくなるほど恐怖して - 暑いから(たぶんおそらくきっと) - ホラー
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第743回/涼しくなるほど恐怖して - 暑いから(たぶんおそらくきっと)

ホラー
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暑いから

暑いから準推薦
■制作者/たぶんおそらくきっと(ダウンロード
■ジャンル/夏のホラー詰め合わせノベル
■プレイ時間/1時間半

ある夏の暑い日。あなたの目の前の少女は、あまりの暑さに「怖い話をしよう」と言い出した。怖い話をすると涼しくなるから、という訳で、少女はあなたにいくつかの質問をしてくる。あなたにできるのは、首を縦にふるか、横に振るか。少女が話す、10種類の普通じゃない「怖い話」。語られる話とは? そして果たして少女とあなたの関係は?

ここが○

  • とにかく怖い。ホラー好きなら満足できるはず。
  • ただ怖いだけでなく、色々な方向性からくるバラエティの豊かさ。
  • 独特の文章表現の豊かさ。

ここが×

  • グロテスクな描写なども多く、苦手な人は耐えられないかも。
  • 後味がいい話は一つもないので、そういうのが苦手な人も避けておいた方が無難。
  • 結局最後まで読んでも、肝心なことがよく分からない。

■涼しくなるほど恐怖して

最近、以前よりはホラー作品を取り上げるようになりました。何せ以前はホラーはほとんどと言っていいほど取り上げませんでしたからね。まあ私が苦手なだけなのですが、ホラーの中には「ホラーならでは」と言える、特異な作風のものも多く、食わず嫌いはもったいないということで、最近はなるべく毛嫌いせずにプレイするようにしています。

この作品は、「ネガイノ屋上」「四色さん」の作者さんによるもの。どちらも独特の作風で、特に「四色」はかなりグロテスクな描写のホラー掌編でしたが、如何せん短すぎて、描写そのものには怖さもあるものの、単なるびっくり箱的な驚かさせ方と言えなくもありませんでした。この作品もさして長くはないのですが、「四色」よりは大幅に物語性が高まっており、怖さも大幅にアップしています。

暑いから「ネガイノ屋上」は、怖さの中にも、最後はちょっと心温まる結末を持った物語でした。で、レビューで私は「恐らくこの作者さんの作風としては、『ぞっとするような終わり方』の方なんでしょうが」と書きましたが、果たしてその通りでした。この作品は、10本の短編ホラーが選択肢によって展開する、ホラー短編集なのですが、どれもこれも、読後にぞっとするような怖さを感じる作品ばかりです。

しかも、ただ怖いだけではなく、怖さがバラエティに富んでいます。ビジュアル的な怖さあり、霊的な怖さあり、不条理な怖さありで、よくもこれだけ色々な怖さを感じさせる作品を、10本も書けたものだなと感心しました。中でも、「世にも奇妙な物語」風の、不条理でじわじわくる怖さの作品が結構あります。「クローン交換」などは、まさにそのタイプの怖さでした。

サスペンス的、心理的な怖さで言えば「好き嫌いはダメ」。つのだじろうの怪談的と言いますか、「そのシーン」の様子を想像すると、かなり怖いです。ラストシーンもインパクトがあり過ぎて、夢に出そうなほど。そしてグロテスク系の怖さで言えば、「無機物食欲」「高品質食材」「若返り輪廻」辺りが、かなり背筋が寒くなります。特に「無機物食欲」は、本編も怖いのですが、その後どうなるかを考えると更に背中がゾクゾクする、一粒で二度怖い(?)作品。「高品質食材」も、あの場所でその後も行われることを想像すると、かなり恐ろしいものがあります。

また正攻法幽霊的な怖さならば「虐め殺し」「ストーカー」。ですが、異常な(褒め言葉です)怖さの作品が多い中、むしろ普通に感じるかもしれません。そうかと思うと「異世界勇者」のように、途中まで「何だこりゃ?」と思わせておいて、驚きのオチが付くという作品もあります。選択肢を選ぶことで、語り部の少女が話す内容が変わっていって、10本のシナリオに分岐していくのですが、徐々に分岐させていくという作りで、よくこれだけ破綻なく色々な怖さの作品を書けたものだなと、感服しました。

立ち絵や1枚絵はないのですが、背景写真の加工の具合がまたよく、ストーリー展開に合わせてここぞという時にとんでもない写真が来るので、インパクトが物凄いです。描写もかなりグロテスクなものが多いので(特に「無機物食欲」はおぞましい)、そういうのが苦手な方は手を出さない方が無難かも知れません。開始直後に注意書きでもそう表示されますが、それほどの強烈さがあります。

と、ホラー短編集としては非常によく出来ていますが、ラストまで読んでも、語り部の少女と、それを聞かされる主人公(なのか?)がどういう状況にいるのか、2人の関係は何なのかは分からずじまいです。読者の想像にお任せします、ということなのかも知れませんが、そこはもう一歩踏み込んで描いて欲しかったように思いました。全部のエンドを見ると、最初の選択で3番目の選択肢が追加され、それを選ぶことで最後のエンドが見られますが、怖いことは怖いものの、締めくくりとしては少々物足りなさがあるんですよね。

また、後味がいい話も一つもありませんので、「ハッピーエンドじゃないと具合が悪くなる」という方にもお薦め出来ません。しかし文章力自体は高く、語り手の少女が怖い話を面白がりつつ淡々と語る様子が、更に怖さを増幅させています。ただ、文章表現の決まりごと(段落の頭を1字下げる、「!」「?」の後は1字空ける、等)が守られていないため、少し読みにくく感じる箇所もありました。

ツールはNScripterです。エンドは合計11種類で、エンドリストがあるので親切。このエンドリストが、分岐ごとに区分けされて表示されるので大変分かりやすく、助かりました。1本辺りは10分かからないくらいで、プレイ時間は全部読んで1時間半。とにかく怖いのがお好きな方であれば、これだけ変化に富んだホラー短編集もなかなかないと思いますので、文句なく楽しめるはずです。でも、苦手な方は本当にくれぐれも迂闊に手を出さないように気をつけてください。そう注意したくなるほどの怖さを持った作品ですので。
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