第81回/今日も終わらない夜が更ける - call sacrifice heart(呼び声のするトコロ) - 病院・闘病
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第81回/今日も終わらない夜が更ける - call sacrifice heart(呼び声のするトコロ)

病院・闘病
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call sacrifice heart

call sacrifice heart準推薦
■制作者/呼び声のするトコロ(ダウンロード
■容量/41.0MB

先天性の心臓病で入院する名雪水(なゆきみな)。彼女の姉百合は、たった1人の妹のために、毎日病院通いを続けていた。水の病気は、心臓移植をしないと治らないという。わずかな奇跡にすがる百合。病院で出会う様々な人々。病院を舞台に人間ドラマを描いたマルチエンドのノベルゲーム。

ここが○

  • バラエティに富んだエンディングが多数。
  • モノクロの背景画など、雰囲気が上質。
  • キャラクター描写も上々。

ここが×

  • 全体にプレイヤーに対する配慮が足りない。(注・最新版では改良されています)
  • 分岐が分かりにくい。ラスト近くの盛り上がりがイマイチ。
  • Sacrifice Endには、遺憾の意を表したい。

■今日も終わらない夜が更ける

call angel voice」の作者さんによる新作。タイトルで分かるように、今作も前作同様、病院を舞台にした人間ドラマを描いた物語。仕事柄、病院を舞台にした物語は結構好きです。なので今作はすぐにダウンロードしてプレイしてみました。

前作のレビューを改めて読むと、「良いエピソードは多いが、展開を急ぎすぎているのと、エピソードを盛り込み過ぎ、的を絞り切れていない印象」と書いてあります。対して今作は、エンディング数が多いですが、それぞれのシナリオで関わるメインキャラクターは主に1人です。前作で感じた欠点を、きっちり解消しているのは好印象です。レイアウト等も、前作を踏襲しつつより洗練されていて、良い感じです。前作に登場したキャラも再登場するので、前作をプレイしていると、より楽しめるでしょう。

ただ、この作品に私が感じたのは「惜しい」の一語なんですよね。こう言う方向性の作品は大好きですし、キャラも丁寧に描かれてますし、文体も気取らず読み易いですし、素材を使用した音楽もかなり良い(前作は「素材を使用している割りに、ちょっと耳に残りにくい」と私が書いてます。こういうところもちゃんと改良されてるんですね)んですが、いくつかの欠点がちょっと作品全体の印象を下げてしまってるんですよね。

まず一番感じたのは、「ウェイトが異様に多く、長い」事。更に、ウェイトをマウスクリックでスキップできないため、かなりストレスが溜まります。何せ、アイコンをダブルクリックして起動してから、ゲームがプレイできる状態になるまで、およそ30秒かかるんです。これには参りました。また、フェードインやフェードアウトなどの各種ウェイトは、既読スキップでも全く飛ばせません。加えてウェイトの間にはセーブやロード、既読スキップができません。些細な事のようですが、実際にプレイすれば、これがかなりのストレスの元になるのが、すぐに分かると思います(今作は複数回のプレイが前提だから、なおの事です)。

そして、分岐の分かりにくさ。謎を解く事自体が目的ならともかく、シナリオ優先型ノベルなら、選択肢を分かりにくくする理由は見つかりません。が、今作は選択肢が分かりにくい……。基本は特定の人物とのコンタクトを重ねればいいんですが、選択肢ではどこに行けば誰に会えるかはまるで分かりません。よって、セーブ→選択→ロードの繰り返しが必須。NScripterならばセーブ場面からすぐスタートできますが、吉里吉里を使用した今作は、どうしても少し前の場面に戻されます。こうなると、上で書いた欠点が更にクローズアップされてしまう結果となってしまいます。もう少し、プレイヤーに対する配慮が欲しいと感じました。(06.9.15追記 最新版ではウェイトの問題は改良されているそうです)

その2点さえ我慢できれば、描かれているドラマはかなり上質な物だと思います。医学的なリアリティも、押さえるところは押さえ、端折るところは端折っていて、バランスが取れています。私は命子のシナリオが気に入りました。ただ、せっかく良い物語を描いているのに、一番盛り上がるべきクライマックスがあまりにさらっと流されたのはもったいないですね。プレイしている方は盛り上がっているのに、画面の向こうではもう終わっているという(笑)。ま、あまりくどく描いても何ですし、あれくらいがかえってちょうどいいのかも知れませんが。

が、全体に物語がよくできているこの作品の中で、私が「これはちょっと」と眉をひそめた点があります。バッドエンドに相当する「Sacrifice End」。これはいただけません。「移植」は、あくまで「誰かの死を無駄にしないため、命を誰かに繋ぐ」ものです。誰かの命を積極的に犠牲にして他の誰かの命を助けるなど、言語道断。医療に関わる者として、あの場面には強く遺憾の意を表します。

何だか、今回もまたきつめのレビューになってしまいましたが(汗)、個人的には気に入った作品です。小鳥遊(たかなし)先生は、「カレイドスコープ」の片桐先生ときっと話が合うんじゃないでしょうか(笑)。この作者さんは、もっと素晴らしい作品を作れる力があると思います。評価に悩みましたが、第一印象が良かったですし、次回作に期待を込めて「準推薦」。エンディング攻略で熱くならず、1本のお話をまずはじっくり味わって読んでみてください。
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