第752回/君を感じるこの夕焼け空 - 嘘のように、赤い空の下で(Unreality) - 探索・謎解き
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第752回/君を感じるこの夕焼け空 - 嘘のように、赤い空の下で(Unreality)

探索・謎解き
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嘘のように、赤い空の下で

嘘のように、赤い空の下で■制作者/Unreality(ダウンロード
■ジャンル/夕焼けの屋上で謎解きノベル
■プレイ時間/30分

主人公の少年ユイは、彼が暮らしている施設の屋上で、セナという少女と出会った。セナは不治の心臓病を患っており、余命いくばくもないという。そしてセナは、記憶を全て失っているユイの記憶のことを教える代わりに、友達になって欲しいと持ちかけてきた。夕焼けのわずかな間だけ、屋上で過ごすセナとユイのひと時。夕焼けの赤が眩しい短編物語。

ここが○

  • セナとユイの、悲壮感を感じさせない軽妙なやり取り。
  • 短いながらも描写に隠された巧みな謎。
  • 上質の余韻を残してくれる終わり方。

ここが×

  • 短いだけに少し語り切れていないところも。
  • 舞台が屋上だけなので、少し平坦。
  • 謎の設定に対し、解法の一部に少し無理を感じる。

■君を感じるこの夕焼け空

1ヶ月以上続いた「旧作オンリー期間」もやっと終了し、新しい作品もまた取り上げていきます。今回は、NaGISA netで最も多く作品を取り上げている作者さん、「Unreality」(Yazukiさん)の最新作です。この作者さんの作品は、通常レビューで9作、掌編レビューで2作(1作は共作)と、なんと合計11作も取り上げています。そして、どの作品にもこの作者さんらしい工夫が凝らされていて、プレイしていると一度は必ず裏をかかれるという、よくできたパズルの解法を味わうような面白さがあるので、何度も取り上げたくなるんですよね。

そして今回も、この作者さんの持ち味が十分に活かされた作品となっています。前半で謎を提示し、後半でその真相を示すという構成で、同じ作者さんの作品で言えば「黒白の夜」に近い雰囲気を感じさせます。もっとも、あちらは明確にミステリーでしたが、こちらは見た目には謎解きものという訳ではありません。ただ、前半が謎を提示する「問いの章」、後半が真相を示す「解の章」という作りですから、やはりメインは謎解きと言えましょう。

嘘のように、赤い空の下で主人公は、ユイという記憶喪失の少年。とある研究所に軟禁状態なのですが、ある日、その屋上でセラという少女と出会います。セラは、重い心臓病に冒されているのですが、何故かユイに興味を示し、2人は夕暮れ時にだけ屋上で会うようになります。ユイの記憶、そしてセラの本当の目的は何なのか。短いストーリーの中で、その謎が解き明かされます。ジャンル選択に迷いましたが、ミステリーやサスペンスという感じでもないので、「探索・謎解き」に分類しました。

この作者さんは、キャラクターのやり取りにも独特の面白さがあるのですが、その作風は今作でも同じで、ユイとセラのやり取りを読んでいると、「ああいつもの感じだ」という安心感が(?)。冗長にならない範囲で、上手く会話で流れをコントロールしつつ、キャラクターの個性も上手く出していくのは、この作者さんが一番得意とするところ。今作でもその辺りは十分に発揮しています。もう少し全体にシリアス方向へ振っても良かった気もしましたが、これがこの作者さんの味というものでしょう。

前半は、最初ユイとセラのなんてことのない日常のやり取りが主に描かれますが、その中にユイに関する真相についてのヒントが隠されています。それほど意地悪な隠され方はしていませんので、注意深く読めばある程度の真実に到達するのは、それほど難しくないと思います。私も、完全にとは言いませんが、7割がたは正解できました。ヒントの提示や、難易度についても、「黒白」よりもかなり一般的になり、これならば誰でも謎解きの面白さを味わえるでしょう。

前半の「問いの章」が終わると一度タイトルに戻り、解決編である「解の章」を選択できるようになります。と言っても、ユイが謎を解く様子をただ読むだけで、別にプレイヤーが能動的に選択肢を選んだり、言葉を入力したりはしないのですが、こういう構成にすることで、一息ついてじっくり考える余裕も生まれます。作者さんが書かれているように、「解の章」に進む前に、もう一度「問いの章」を読んでじっくり考えても面白いと思います。

そして冒頭に出てくる「逢魔が時」という言葉が、後半の謎解き部においても鍵となっています。鍵というよりは、物語の幕を綺麗に引くための、プラスアルファの要素という感じです。しかしこの要素によって、ユイとセラが夕暮れ時にしか会わない理由にもなっていますし、加えてオチも非常に美しく決まっていました。謎についてももちろんですが、謎以外のそういうところについても、よく考えて構成されています。

ただ、謎について気になるのは、作中で出てきた設定ならば、ユイとセラの性別が違うのは、少し無理を感じました(私は、そこも叙述トリックによる何らかの引っ掛けがあるのではないかと最初思いましたが、ちゃんとユイは「男の子」と明記されてました)。男性と女性では遺伝子が違いますし、そこは少し説得力のある理由付けがあっても良かったような気はします。そこらは、尺の短さもあって語り切れていない印象です。

舞台は終始夕焼け時の屋上ですので、平坦と言えば平坦です。が、それを逆手にとって、夕焼け時に会うということに意味を持たせたラストはとても上手いと思いました。ツールはティラノスクリプト。プレイ時間は、「問いの章」が20分、「解の章」が5分の、合計25分〜30分というところ。選択肢はありません。謎について考えさせる物語ですが、謎が独りよがりな難しさではないところに、とても好印象を持ちました。今後も、持ち味を発揮した物語を読めることが楽しみです。
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