第753回/愛は必ずここにある - ドリーミングナイト(零山まりす) - アクション・ドラマ
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第753回/愛は必ずここにある - ドリーミングナイト(零山まりす)

アクション・ドラマ
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ドリーミングナイト

ドリーミングナイト準推薦
■制作者/零山まりす(ダウンロード
■ジャンル/夢で人生を変える男ノベル
■プレイ時間/1時間

家では妻と娘に疎まれ、会社でもうだつの上がらない課長、飯塚義三。ある日、飲み会で泥酔して帰宅した際、美しい女性が出てくる夢を見た。その女性、ユメに不思議な母性を感じた義三は、再び夢でユメと会う。そして思い出す昔の出来事。果たして、ユメが義三を夢に招いた意図は。そしてユメの正体は一体? 疲れた現代人に勇気を与える短編ドラマ。

ここが○

  • 等身大の主人公に勇気をもらえる物語。
  • 色鉛筆で描かれた柔らかい色調が独特でいい。
  • 粋で、家族の絆を感じさせるラスト。

ここが×

  • 文字表示、音楽など細かい調整がなおざり。
  • 少々どぎつい展開もするので、人を選ぶかも。
  • ユメの正体が少々唐突に感じた。

■愛は必ずここにある

再び新しい作品探索に戻っていますが、私は「既に感想がたくさんついている作品」は意図的に避ける傾向にあります。それより、見落とされているような作品を見つけてご紹介するのが楽しいのですが、この作品はまさに、ティラノゲームフェスが盛り上がる中(まあ公開が最近なので、対象外ですが)、ぽつんと取り残されたように評価も感想もついておらず、そのことが逆に私の目をひきました。

プレイしてまず、独特のイラストが目に飛び込んできます。絵柄としては、決して凄くテクニカルで巧いというタイプではないのですが、色鉛筆の柔らかいタッチが心地良く、ともすればぎすぎすしがちなこの物語を、上手に和らげてくれていました。とても雰囲気にあったイラストで、私は大変気に入りました。

ドリーミングナイトさて、この物語の主人公は飯塚義三という男。中小企業に勤務するサラリーマンで、会社では部下に煙たがられ、家では妻子に疎まれる、頭髪の危機にも瀕している、絵に描いたようなうだつの上がらない中年男。こういうタイプの主人公は大変珍しいので、序盤から「お、どんな物語が始まるのだろう?」と思わせてくれました。こう思わせただけでも、この作品の掴みは成功だと思います。

まず苦言から書いてしまいますが、この作品はノベルゲームとしての細かい調整がかなりなおざりです。文章は変なところで改行したり、ウィンドウからはみ出すすれすれまで文章が並んだりしますし、クリック待ちの時に、一度ではなく二度クリックしなくてはならない箇所が頻出したりもします。文字速度を変更しても、途中で突如遅くなったと思ったらずっとそのままになったり、挙げ句の果てには、なんと「BGMが2曲同時に流れる」シーンまであるのです。これには若干苦笑いでした(そもそも曲がないシーンが多く、それも気になったのですが)。

と、作りとしては気になる点が多々あるのですが、物語自体はいい意味で期待を裏切られる内容でした。最初は、夢の中で出会った少女ユメとの交流から始まり、「ユメとの交流で、変わらない現実をまた過ごすという、よくあるタイプの不思議系ファンタジーかな」と思っていたのです。ところが、中盤にユメの正体(?)が判明する辺りから、物語は急転直下。とんでもない展開へ進んでいきます。

この、ユメの正体が明らかになる箇所には、少し唐突感を感じなくもありません。本当に突然来るイベントですので。ですから、前半から少しそれをほのめかすような描写があっても良かったようには思いました。しかし、そこからの展開が最大の見所です。義三が、勇気を持って小市民なりに悪(?)に立ち向かう決意をし、それを、疎まれていると思っていた妻の美代子が支えてくれるシーンは、今作屈指の名場面で、非常に感銘を受けました。

ただ、ここで挿入される藤原りかの過去のエピソードは、色々とえぐいので、人によって合う合わないがあるかもしれません。加えて、ここだけ妙に分量が多いので、前後の部分と比較しても、少しバランスの悪さを感じました。まあその部分の描写によって、いかにりかが「ああいうことをしても当然な女」であるかがしっかり示されているというのは事実ですが、りかの過去がじっくり描かれるのに対し、その後の解決編がさらりと流されてしまうので、若干の収まりの悪さを感じました。解決編がもう少し長ければ、バランスが良かったかも知れません。

事件が解決したからと言って、義三の生活が何か劇的に変わる訳ではありません。しかし、義三の生活と考え方、そして家族との関係が確実に変化した様子が伝わってきて、非常にいいラストだったと思います。特にケーキの演出は粋で、前半とのギャップも手伝って、家族の絆の強さを強く感じました。見た目も性格も、全然格好良くない男だけに、そのジレンマが痛いほど伝わってきて、大変感情移入しやすかったように思います。

文章は、あまりレトリックに走らずに素直に綴るタイプで、基本的には読みやすくあります。が、人称がひっきりなしに変化したり、その意味では少し読みにくいところもある文章でもあります。まあ、基本が素直な文章ですので、これくらいは許容範囲ではないでしょうか。物語としての起伏と、しっかりしたテーマ性が一体となり、とてもよくできていたシナリオでした。

ツールはティラノスクリプト。選択肢は途中2ヶ所だけあり、それによって2つのバッドエンドとトゥルーエンドの、合計3つのエンドに分岐します。バッドエンドは本当に救いようのない結末ですので、トゥルーエンドを見る前に回収してしまいましょう。プレイ時間は全部読んで1時間というところです。ビジュアル的に派手ではなく、システムも色々と突っ込みどころがあるのですが、「これぞフリーノベルの良さ!」というのをじっくり味わえる良作です。是非プレイしてみてください。こういう作品に偶然出会うと、フリーノベルゲーム探しってやはり面白いなと、心底思わされます。
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Comments 2

零山まりす  
ありがとうございます

NaGISAさま
コメントが大変遅れてしまって申し訳ございません。
この度は指摘や感想をありがとうございます。
ご指摘いただいた音楽の重複・文字スピードが遅くなったまま戻らず、文字が読みづらい件に関して修正が完了しました。NaGISAさまやゲームをやってくださった方にはやりづらかったこと、ご迷惑おかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
まだまだ腕がいたらないところもあり、作業中無力感を感じてしまった部分はあります。でもこのような拙い表現力にも関わらず、NaGISAさまのような方がゲームをプレイしてくださって、さらに嬉しいコメントまでいただいたこと、宣伝能力もなくぽつんと世界から取り残されたような作品にたいして、このような細かい部分まで丁寧な感想をいただき、信じられない気持ちでいっぱいです。はじめ感想を見たときは何が起きたか分からず、飛び跳ねてしまいました。笑
この度はプレイしてくださりありがとうございました。また何かゲームを作ろうと案はありますので、その際はどうぞよろしくお願いします。

2020/01/26 (Sun) 08:15 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>零山まりすさん

こちらこそ、素晴らしい作品をありがとうございました。「ドリーミングナイト」、大変楽しめました。後半に見られるさりげない家族の絆の様子や、うだつの上がらない小市民的主人公の義三が、勇気を振り絞る様子に感銘を受けました。

次回作がありましたら、また是非プレイいたします。創作活動、楽しみながら頑張ってください!

2020/01/26 (Sun) 18:17 | EDIT | REPLY |   

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