2019年NaGISA netノベルゲーム大賞 - ノベルゲームのお話
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NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

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2019年NaGISA netノベルゲーム大賞

ノベルゲームのお話
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今年も今日で最後です。今年も色々ありましたが、皆様はいかがだったでしょうか。今年は、6月に札幌創作オフ会も無事に開催でき、参加中の企画「ショートショートショート100」(来春公開予定です)のシナリオも無事上がり、まずまず有意義な1年だったのではないかと思います。

今年は、通常レビューが189本、掌編ミニレビューは66本でした。個人的には、掌編をもう少し増やしたいと思っていますが、私自身がどうしてもある程度長い作品でないと満足を感じにくいため、後回しになることが多くなってしまっています。来年は、もう少し掌編レビューを増やせれば。

そして189本中「推薦」が7本、「準推薦」は63本。全体の本数は去年より増えていて、「準推薦」は1本増えたのですが、「推薦」は3本減っています。

では今年も最後の総括記事、「2019年NaGISA netノベルゲーム大賞」、行ってみましょう。例によって「今年公開された作品」ではなく、あくまで「私が今年取り上げた作品」です。記憶を探りながらですから、どんなものが書けるか謎ですが(汗)。

恋愛部門


夕焼け病恋愛部門は28作品。189分の28ですから、昔よりは減っていますが、それでも去年よりは少し増えましたね。その中で「恋愛部門賞」を選ぶならば、「夕焼け病」です。文字だけの地味な作品ですが、主人公とあさひの心の交流の描き方が非常に上手く、夕焼け空の赤の印象と共に、強く心に残っている作品です。それほど長い作品でもないですし、凝った伏線がある訳でもないのですが、恋愛ものはやはり丁寧な心情描写が肝だなあと思わされた次第です。

次点として、これも短編ながら声の演出が抜群に効いていた「約束の軌跡」、魅了的なキャラクターの女性むけファンタジードラマ「たそがれユヴァスキュラ」、ストレートながらラストの演出が心地よい「マサユメテンシ」、そしてこれも女性向けですが、設定が面白くて魅力的だった「恋愛のすゝめ」、古い作品ながらマルチシナリオをたっぷりと楽しめる「しぇいむ☆おん」を挙げておきます。1年間、満遍なく良作に出会えたジャンルだと思います。

日常/アクション・ドラマ部門


七月のゲーム部日常部門ですが、去年と比べても半減で、わずか10本しかありませんでした。なので去年は別枠だった「アクション・ドラマ」と合わせて、合計25本。この部門の部門賞は「七月のゲーム部」。登場人物は実在の(?)VTuberらしいのですが、ゲーム部という舞台と、起こる事件のバラエティ豊かさでぐいぐいと引っ張ってくれる物語です。後半に向けてどんどん盛り上がり、前半の事件とも繋がっていく構成も見事。晴翔とライラのコンビの物悲しさには、今年の「ベストコンビネーション賞」をあげたいほど。最終話は少し短くて呆気ないですが、それでもラストの収まりの良さも今年随一と言っていいほどです。

次点として、趣味を持つ大人であればきっと共感できる「それでも、うちのこかわいい」、架空日本のハードな戦記物「Blazing Soul ー白閃ー」、閉鎖空間の物語ながら、練られた緻密な構成に唸る「四月の魚~Poisson d'avril~」、それに夢を失くした大人が夢で立ち上がるドラマ「ドリーミングナイト」を。

日常カテゴリーは、恋愛と並んでフリーノベルゲームの主力ジャンルですから、今年少なかった分、来年は是非多くの作品に出会いたいですし、アクション・ドラマ部門は今年急に本数が増えたジャンル。来年も個性的な作品をプレイできればと思います。

ファンタジー・SF部門


THREE FORKSファンタジーとSFは合わせて15本でした。このジャンルも去年より10本も本数を減らしていますが、フリーノベルゲーム界の花形カテゴリーで、過去にも不朽の名作がたくさん生まれています。

そして、今年のファンタジー・SF部門賞は「THREE FORKS」を選びました。物凄い序盤で読者の心を鷲掴みにしたと思ったら、二転三転する展開で読み手を飽きさせず、一気に読ませるパワーを持った作品です。独特の設定も凝っており、SFの魅力に溢れた傑作でした。長い物語ですが、波乱万丈の展開で読み手を引っ張った上、ラストでも見事などんでん返しを喰らわせてくれるので、長い分の満足感のある作品です。

このジャンルの次点には、レビューしたばかりの現代ファンタジー大作「臨界天のアズラーイール」、心温まる童話の「ガラス姫」、ダークな雰囲気ながら不思議と後味の悪さを感じさせない野心作「10月32日のハロウィン」を選びました。SFやファンタジーは、作りにくい側面もありますが、作者さんの工夫を存分に凝らせる、魅力あふれるジャンルですから、来年も色々な作品にきっと出会えるでしょう。楽しみです。

不思議系部門


たまゆらの夜「不思議系」は23本。ここも去年より減っています。その中でも私的ベストは、「たまゆらの夜」です。主人公の響はいわゆる「人嫌い系」のキャラクターで、前半はかなりとっつきにくいのですが、玉響姫との交流で徐々に変わっていく様子の描き方が素晴らしい。こういうのって、変なやり方をすると嘘っぽくなりがちなのですが、この作品の場合は、響が変わっていく様子で前半の悪い印象までも払拭しているところが、実に卓抜していました。この種の作品の中では秀逸の出来栄えです。

不思議系部門の次点作ですが、これぞ不思議系とも言えるセカイ系物語「白日夢カタストロフ」、これまたセカイ系、ミスディレクションが効いた作りが効果的だった「沈める日」、時を操る女神というクロのキャラクターと設定が面白かった「黒のクロノス」の3本を選びます。このジャンルも、フリーノベルゲームの花形カテゴリーで、毎年斬新な設定の物語にたくさん出会えます。さて来年はどんな不思議を体験できますやら。

シリアス・感動系部門


マーシフルガールこのジャンルは16本。去年よりも本数が増えたため、カテゴリー分類を変えました。このジャンルの部門賞は、「マーシフルガール」。私が取り上げた唯一のスマートフォンのみでプレイできる作品で、読み辛さはあるのですが、5分程度の独立した細かい章立てになっていたり、読みにくさを補う工夫がなされています。何より、アンドロイドの設定を生かし、仏教を学ぶという思いつきが凄い。

思いつきだけでなく、無理なく物語とテーマ性をしっかり両立し、エンターテインメント性も高いところが見事としか言いようがありません。病床の主人公の養母が、調査員に尋ねられて主人公の名前を答えるシーンは、今でも忘れられません。……が、この作品は既に公開停止なんですよね。再公開の予定はないものでしょうか。これだけ優れた作品ですし、このまま埋もれされるのは何とも勿体無い話だと思うのですが。

このカテゴリーの次点作は、ゲーム内の世界という設定と、後半の驚く展開に驚かされた「セブンスコート」、レンタル家族という独自の設定と、ばらばらと思われていた話がだんだん繋がる様子が面白かった「アパシー レンタル家族」、短編で淡々とした描写ながら、猫の目を通じた深い愛情が描かれた「猫の名前は左衛門のすけ」、それに児童虐待をテーマに、壮大な人生模様を描き出した「あなたの命の価値リメイク」を。

このジャンルは、方向性が方向性だけに心に響く作品が多く、作者さんとしても気軽に書けるジャンルではないためなのか、今年も多くの名作に出会えましたね。他の作品も、どれもよくできた作品ばかりだったと思います。

ミステリー・サスペンス部門


黒白の夜続いては、ミステリー・サスペンス部門。この部門は、去年は伝奇、ホラーと一緒にしていたのですが、今年作品数が多かったので、分割しました。この部門は今年19本。今年一気に増えたジャンルです。部門賞は「黒白の夜」。ノベル内ノベルの謎を解くという独創的な設定、凝った謎が印象的な野心作で、この作者さんらしさが横溢という趣きの良作。また、今作から色遣いが変わったのか、絵柄が物凄く洗練されたのが印象的でした。何とも言えないラストの感傷も、この作者さんならではの味わいでしたね。

次点は、大量の一万円札を燃やすという変わった事件が心に残った短編推理もの「取調室」、お腹に顔が見えるという設定と、前半の純愛、後半のサイコサスペンスという二面性が度肝を抜いた「キキタイコトバ」。このジャンルは、一見王道の物語でも、作者さんの工夫を非常に盛り込みやすい分野でもありますし、短編であっても驚くどんでん返しの作品が多いので、長短問わず楽しめるジャンルでもありました。今年激増したジャンルですが、さて来年はどうでしょうか。

学園・青春部門


春のうららフリーノベルゲームの花(?)、学園・青春部門は、今年は23作品。去年は随分少なかったのですが、今年は盛り返した感じですね。そんな中、このジャンルでのベスト作品は「春のうらら」。18歳になると強制的に「大人化」されるという設定で、ちょっとSFよりではありますが、根本は間違いなく青春ものです。大人になることの意味を面白い設定で瑞々しく描き出した、個性的な物語で、テーマに共感するかどうかは別として、非常に強く訴える力を持っていました。登場人物がどんどん変化していく様子が、何とも言えない寂しさを醸し出している様子はこの作品独自のものでした。

次点作ですが、ラストの意外な真相と、そこから目を逸らさせる構成が秀逸の「空中回廊」、定番の幼馴染すれ違いものですが、キャラクターが魅力的な「追憶の向こう側」、女性キャラ同士の友情と、じんわり心に染み入るエピローグが素敵な「Last Memory」の3本を挙げます。やはり学園ものが盛り上がらないと、フリーノベルゲーム全体が盛り上がらない印象。それに、やはり学園ものってフリーノベルゲームの土台をなすジャンルだと思うんですよね。来年も、王道からぶっ飛んだものまで、色々な作品をプレイできれば。

伝奇/ホラー部門


あやかしよりまし逢魔伝奇、ホラーともに私が苦手とするジャンルなのですが、今年はこのジャンルが意外と多く、両方合わせて15本でした。その中で今年のベストは「あやかしよりまし逢魔」。少し古めの作品ですし、紗都梨の扱いが少々中途半端なのは気になりましたが、凝った伏線や意外な展開を存分に味わえる、伝奇アクションの大作です。演出も凝っていますし、展開も非常に考えて作られていますので、長いのですが中だるみせずに読める傑作でした。

このジャンルの次点は、熱い展開とテンポのいいバトルシーンで、短くも濃厚な物語「灼夏幻夜」、第3話の解決法が綺麗で唸ってしまった「ジンクスホリック・シンドローム 紹介編」、短くシンプルながら、王道のクローズドサークルものの面白さを味わえた「雪しまく血」を。ホラーものは今まであまり取り上げていなかったのですが、食わず嫌いをせずに来年ももっとたくさん取り上げられればと思っています。

その他部門


ハゲクロニクルスポーツ(これは今年該当作品がないですが)、コメディ、病院・闘病、探索・謎解き、ナンセンス・不条理、オムニバス・その他を合わせた部門です。全部合わせて25作品。その中での部門賞は、「ハゲクロニクル」。タイトルも中身も、一見完全に色物なのですが、実は男の友情、努力などを描いた非常に熱い物語。主人公2人が、髪はないのに心はイケメンで、ヒロインのでこぽんも可愛らしく、コメディには分類しましたが、単なるコメディの枠を超えた良作でした。

次点としては、「幽霊もの」を3本集めた、心温まるオムニバス短編集「Being -君がいた日-」、これも幽霊ものですが、未練を残して死んだ人の未練を果たすべく、次々憑依するという設定が面白く、しんみりさせてくれるところもある「転生天命」を選びます。このジャンルは「推薦」「準推薦」が出にくい分野ではあるのですが、逆に他のカテゴリーでは見られない凄い設定の作品に出会えることも多く、意外な楽しみもありますね。

掌編部門


再会はエレベーターの中で掌編は今年66本もありました。掌編部門賞は66本から選ぶので結構大変ではありますが、一番心に残ったのは「再会はエレベーターの中で」。エレベーターの中での偶然の再会という設定、閉鎖空間でのやり取り、そして切ないラストと、掌編とは思えない作りの作品で、非常にレベルが高かったと思います。この作者さんは、果たして掌編でこその方なのか、あるいは長編を作っても凄いのか、非常に興味があります。目が離せない作者さんの1人だと思います。

掌編の次点は、メッセンジャーを模した画面、そしてチャット風の画面だけのやり取りで、なんとも言えないノスタルジーを感じさせてくれた「Messenger2005」、漫画のようなレイアウトと、アニメのような動きが楽しかった「MY HOBBY IS 短編版」、綺麗なグラフィックスで歴史のifを楽しめる「画家オリフィエルの娘」、ラストの落とし所と、美しい背景写真が印象的だった「天国の回廊」を。掌編には掌編の楽しみ方がありますし、何せ数が多いですから、来年も少しずつプレイしていければと思っています。

特別賞


荒野の復讐者無印の作品から、特にこれはという作品を選ぶ「特別賞」。この部門も選ぶのが大変なのですが(本数が物凄く多いので)、選んだのは「荒野の復讐者 Grit in wasteland」。SF西部劇という、他にはない作品で、乾いた中に粋な台詞のやり取りが詰まっています。CGの利用法も目を見張るものでしたし、挿入歌がまた非常に効果的。ラストもハッピーエンドとは言い難いのですが、何とも言えない余韻を感じさせてくれるラストは、非常に印象に残っています。

次点は、ラストで明かされた意外な事実に驚く「綾さんのお役に立たせて下さい!」、タイトル通り、モザイクのように少しずつ物語の全体像が明らかになる「雨のモザイク」、架空都市ヒビカの設定が魅力的な「潮騒と泡沫のサマー・デイ」、キャラクターの言動にはちょっと癖があるものの、波乱万丈なドラマが楽しめる「ハロー、神様Worker」、大げさなドラマは何も起こらないものの、等身大の夏休みのドラマが思い出を刺激する「太陽よりも暑い夏」。

他にも印象に残った作品はたくさんありました。そもそも印象に残らなければレビューを書こうとは思わないわけで、その意味では全部の作品が印象に残ったとも言えるのですが、無印でも気に入った作品は多数あります。そこらは、是非レビューの文章から読み取っていただければと思います。

キャラクター賞


KOKUTOU - 消えた初恋の謎 -今年も、印象的なキャラクターに多数出会えましたが、一番気に入っていて印象に残っているのは、「KOKUTOU」のシリーズの、黒十美鶴と小倉柚葉のコンビ。声も合っていましたし、やり取りや、柚葉が時々見せる黒十への想いが非常に可愛らしく、私はすっかりこの2人のファンになりました。まだシリーズは続いていますので、この2人にまた会えるのが楽しみです。

他に、「西暦2236年の秘書」のマスコ、「檻のビブリオ」のベルジオス、「夏のヒロイン(28)」の白井芽衣、「空白の音色」の桶川彩子、「夕焼け病」のあさひ、「高崎くんと7つの魔法」の高崎くん、「PARANOIA PARADISE」のマリーとGOD、「幽霊の君は」のTさん、「キリトリ線」の茶村優希乃、「七月のゲーム部」の晴翔とライラ、「マルベリーの花」のニース、「無能令嬢」の岸川美由紀、「おるばり! 7K」の奈那とカズナリ、などなど。

良い作品には、必ず良いキャラクターがいます。物語はもちろんのこと、色々なキャラクターと出会えるのも、フリーノベルゲームの大きな楽しみです。どんなに定番、ステロタイプのキャラクターでも、全く同じというキャラクターなんていませんからね。来年も、多くの作品で多くのキャラクターとの出会いがあるでしょう。楽しみです。

2019年NaGiSA net賞


初恋は年齢天秤の中ででは今年の大賞です。ここまで読んできて、「この作品が出てこないな」とお気付きの方もいるでしょう(笑)。「初恋は年齢天秤の中で」が、堂々の2019年NaGISA net大賞です。おめでとうございます。まあ何も出ませんけど(笑)。

この作品は、よくできたキャラクターと凝った構成が最大の見もので、特に異なった2人の物語がだんだん接近し、そして読者が思いも寄らない方法で交差するという物語の作りが、非常に優れていました。また、キャラクターもバックボーン含めて大変よく出来ており、登場人物たちの想いが時にはぶつかり、時には支え合う様は、非常に心を打ちます。

そこへ来てラストも綺麗に、しかもタイトルの意味を回収して終わっているんですから、言うことはありません。作者さんの処女作のようですが、次回作以降も非常に楽しみです。この作品は、純粋に今年公開された作品ですから、今年の大賞というにふさわしいですね。未プレイの方は是非どうぞ。決して損はさせません。

というわけで、長々と書いてきましたが(2時間近くかかった……)、今年のまとめ記事でした。今年も、多くの作者さんの努力のもとに、新旧問わずたくさんの素晴らしい作品に出会えましたことを、厚く御礼申し上げます。来年も、新作はもちろん、埋もれている旧作も積極的にご紹介しますので、興味を惹かれた作品がありましたら、是非プレイしてください。そして作者さんに感想を伝えましょう。そうしていただければ、末端のレビュアーとしてこれほどの喜びはありません。

では、来年もNaGISA netをよろしくお願いいたします。フリーノベルゲームファンのみなさま、良いお年をお迎えください。
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