第758回/今舞い上がれ、黒い翼で - 黒翼ノ天使(幻創映画館) - アクション・ドラマ
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第758回/今舞い上がれ、黒い翼で - 黒翼ノ天使(幻創映画館)

アクション・ドラマ
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黒翼ノ天使

黒翼ノ天使準推薦
■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■ジャンル/殺し屋少年少女の脱出ノベル
■プレイ時間/5時間

戦争後、治安も悪化し貧富の差が拡大したメルドレア帝国。ゴミ捨て場で目を覚ました少年は、身の危険を感じる。自分を狙うその少女の攻撃をなんとか凌ぐと、その少女はやっと自分を殺してくれる人を見つけた、と言い、牢獄のような部屋へ少年を案内した。そこで彼女が手渡してくれたのは一丁の銃。生きるために暗殺者として暮らす少年少女の物語。

ここが○

  • 退廃的で絶望が支配する街の様子がよく描けている。
  • ダークな雰囲気の中に垣間見える。エルトとエリカの心の交流の様子。
  • 特に後半は終始緊迫した展開で飽きさせない。

ここが×

  • とにかくじゃんじゃん人が死ぬので、苦手な人にはお薦めできない。
  • 残酷描写もあるので、これも苦手な人はきついかも。
  • 後半、同じパターンの展開が続くような。

■今舞い上がれ、黒い翼で

NaGISA netではすっかりお馴染み、「ななこい」「光の国のフェルメーレ」の、「幻創映画館」の最新作です。去年末くらいに公開されたばかりのようです。この作者さんは、「ななこい」「四角い恋人」にみられる、甘く切ない恋愛ものと、「EDELWEISS」「光の国のフェルメーレ」などの、ダークで鬱展開の作品が両極端ですが、この作品は後者です。何せ主人公のエルトとエリカは暗殺者で、序盤からばんばん人が死んでいきますので。

しかも、暗殺のターゲットが悪人であればまだいいのですが、相手は罪のない子供や若者ばかり。なので、前半はかなり辛いかも知れません。そこまでグロテスクなシーンや残酷描写がある訳ではないのですが(それなりにはあります)、後半では誕生日パーティをしている一家を皆殺しにするシーンもあったり、読んでいる側の心までもダークな気持ちになってしまいます。ですから、優れた作品ではあるのですが、そういうのが苦手な方にはあまりお薦めできません。

黒翼ノ天使舞台は20世紀初頭辺りの欧州(のような架空の世界)。第一次世界大戦の後くらいでしょうか。主人公は記憶喪失の少年。ゴミ捨て場で目を覚ましたところ、いきなり少女に攻撃を受けます。急激に「力」に覚醒した少年は、辛くも相打ちに持ち込みました。相手の少女により、牢獄のような部屋へ案内され、「生きたいならこれを使って暗殺者になれ」と、一丁の銃を手渡されました。こうして、少年と少女は日々、与えられた暗殺指令を淡々とこなすようになるのです。

こういう出だしですから、とにかく人が次々に死んでいきます。みんな主人公たちが殺すんですけど(汗)。しかも殺す相手は、大抵は善良な市民ばかり。後半になると、彼らが一体どういう存在なのかとか、暗殺のターゲットがどのような人々であったかなどが分かりますが、それが分かってもきついものがあります。なので、前半は少々我慢を強いられるかも知れません。ヒロインのエリカも、人間味が全く見られないような言動ですから、作品世界のダークさを更に強調しています。

ただこの物語、前半であればエルマ、後半はアヤメやアリスなど、脇を支える明るいキャラクターの存在が救いでした。また主人公であるエリトが上手く中立的にバランスをとっており、鬱々とした気分をかなり軽減させてくれています。また、エリトの言動でエリカまでも少しずつ変わっていくという、その交流の様子が非常に上手く描けています。なので展開上読むのが辛いところはあっても、読んでいて退屈するようなことはありませんでした。バトルシーンもかなりの緊張感と迫力があって、終始手に汗を握れます。

後半、エリト達の秘密が明らかになります。そうして物語は新たな方面に進むことに。この辺りの展開は「光の国のフェルメーレ」を彷彿させるものがあり、後半は更に救いようのない展開になるのではと危惧していたのですが、そうはなりませんでした。もちろん、明るい展開にはなりようがないのですが、少なくとも「フェルメーレ」のように読んでいて苦しいということは感じませんでした。

それは、アヤメ、アリスのような和ませキャラの存在はもちろんですが、フェルメーレが「かすかな希望に必死にすがって、絶望的な道を進む」であったのに対し、こちらは「行き着く先は滅びでしかないが、その滅びを少しでも幸せに迎えるために懸命に生きる」であるのが、大きな違いです。希望に結局届かず終わったという点で言えば同じなのですが、フェルメーレに希望が感じられなかったのに対し、今作は常に僅かながら前向きな思いを感じながら読めました。

なので、全然ハッピーエンドではないどころか、むしろ絶望的な終わり方であるにもかかわらず、読後感は決して悪くはありませんでした。まあ、あれだけ人を殺しまくってあの爽やかなラストシーンはどうなの、と思わなくもないのですが(笑)、少なくとも、今作のラストにおいては前向きに捉えることが、私はできました。それは、たとえハッピーエンドでなくても、あの終わり方で「死んだ者達に救いが訪れた」と感じたからだと思いますし、それを訴えるだけの力を持った物語であったからだと思います。

ただ、後半は次々にイベントが起こって飽きさせないのはいいのですが、少し一本調子なのが気になりました。「仲間だと思っていたら実は……」系のイベントは、読者にインパクトを与えるのは、一つの物語内においては基本的に一度だけだと思います。今作で言えば、最初の1回か、最後の1回だけにしておいた方が良かったように思いました。ラストで「またそのパターン!?」と思ってしまったのは内緒です(汗)。

ツールはおそらくYU-RISです(今までとシステムも同じですから、そのはず)。YU-RISは、軽くて高機能で安定してて、言うことなしですね。選択肢なしの一本道です。作者さんのページではプレイ時間600分と書かれていましたが、そんなにはかかりません。私は4時間弱でした。台詞を残らず聴きでもしない限りは、4〜5時間だと思います。人を選ぶ作品だとは思いますが、暗い世界だからこそ見える希望を、私はこの物語から感じられました。甘ったるい物語に飽きた方はいかがでしょうか。
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