第761回/健気な星屑瞬いていて - 祭りの星語り(Lovelock) - 日常
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第761回/健気な星屑瞬いていて - 祭りの星語り(Lovelock)

日常
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祭りの星語り

祭りの星語り■制作者/Lovelock(ダウンロード
■ジャンル/大学祭で星を語るノベル
■プレイ時間/20分

主人公は、とある大学の大学祭にやって来ていた。催し物の中で彼が向かったのは、地味なプラネタリウム。そこにはたった1人の男子学生がいるだけだった。ちょっと軽そうなその学生葛西は、やってきた主人公に驚きつつも、関西弁で丁寧に星の解説をしてくれる。主人公はそれから毎日プラネタリウムに足を運ぶが。少し星に詳しくなれる学園日常物語。

ここが○

  • 心地よい日常感が味わえる。
  • 主人公の言動や地の文が一切ない独特の文章が新鮮。
  • 意外と深いテーマ。

ここが×

  • 普通の意味での起承転結はない。
  • 特に盛り上がりどころがある訳でもない。
  • なので人によって合う合わないがあるかも。

■健気な星屑瞬いていて

今回も少し前の作品です。そして短め。年末年始でかなり長い作品を連続して読んだので、若干お疲れなのかも知れません(笑)。短い作品ばかりでも飽きてしまいますが、長い作品ばかり読んでいても疲れますから、こういうのはやはりバランスが大事です。タイトルは「祭りの星語り」。なんだか、定番の「夏に帰省して田舎の夏祭りで……」的な展開を予想しますが、全然そういう物語ではありません。

この物語の舞台は、とある大学の大学祭。主人公は男性のようですが、それ以外の情報は何もありません。何せこの作品、地の文はおろか、主人公の台詞までもが一切表示されないのです。なので、全てが主人公以外の登場人物の台詞(主に葛西)だけで進みます。分かりにくいかと思いきや、これが独特の「軽さ」を生み出しており、この作品の雰囲気、テーマにもマッチしているのではないかと私は思いました。

祭りの星語り主人公はその大学祭で、出し物のプラネタリウムをやってる教室へ行きます。私が通っていた大学の大学祭ではプラネタリウムはやっていなかったと思いますが、高校の文化祭ではプラネタリウムは定番の出し物ですよね。私の高校でも、確か地学部がプラネタリウムを毎年やっていたと思います。そしてそのプラネタリウムにいたのが、葛西という関西弁の男子学生。

大学祭は意外と派手な出し物、イベントも多いですから、プラネタリウムのような地味な展示には人が来ないと見えて、主人公を迎えた葛西は驚きます。この葛西、かなり軽い男なのですが、人当たりがよく、持ち前のトークで軽妙に星の説明をしてくれます。この星の解説がなかなか楽しく、物語のいいアクセントになっていたと思います。プレイすると、ちょっとだけ星に詳しくなれます(笑)。

それから主人公は毎日同じプラネタリウムに足を運びます。なので物語は、ほとんどプラネタリウムの中での葛西との会話で進みます。退屈になるかと思いきや、葛西の喋り方が面白く、テンポもいいため、退屈さを感じることはありませんでした。選択肢も多いので(直後の会話が少し変わるだけのものも多いですが)、そういう意味でも楽しみながら読むことができました。

そして、星の話からだんだん話題は葛西や主人公自身のことに移っていきます。ここで葛西が語る内容が、なかなか深いですね。人当たりがよく、友人も多いように見える葛西自身が、実は自分の人生を空虚に感じているということが、徐々に見えてくるのです。その辺りの葛西の語り口も決して重くはならずにさらりと流されるため、テーマが読み手にスムーズに受け入れられる作りだと思いました。これがこの作品の一番の美点だと思います。

とは言え、普通の意味での起承転結はなく、ほとんど葛西と会話するだけの内容で、ラストにも特に盛り上がりどころやオチがある訳ではありません。そのため、人によって合う合わないがあるでしょうし、物足りなさを感じる人もあるかも分かりません。しかし、軽くドライに見える描写の中にも、テーマに鋭く切り込んだところが感じられて、味わいのある短編物語に仕上がっています。

二度目のプレイ時には5日目に新たな選択肢が現れ、そこの選択によりトゥルーエンドを見られます。トゥルーエンドのラストでも、主人公と葛西が友情を結んだりすることもなく、最後までドライに「その時だけの関係」で終わってしまうのですが、これがまたテーマを浮き彫りにしていて良かったと思います。2つのエンドを見ると、タイトル画面からおまけのエピローグが見られるのですが、これがテーマにしっかり沿った上で本編を絶妙に保管しており、とてもいい幕引きだったと思います。

ツールは吉里吉里です。選択肢は多いですが、基本的にはその場の会話が変わるだけで、エンド分岐に関わるのは上にも書いた、5日目の選択肢だけです。エンドは2つ。プレイ時間は20分です。大袈裟に騒ぎ立てるような作品ではありませんが、それでいてしっかりしたテーマを持った作品です。感動するとかわくわくするというようなタイプの物語ではないのですが、長編の合間にこういう作品を読めば、疲れた心にふっと響くかも知れません。
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