掌編ミニレビュー第26回 - 青い翅の蜘蛛/セラとウタノのゆく年くる年/手のひらの蝶 - 掌編ミニレビュー
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掌編ミニレビュー第26回 - 青い翅の蜘蛛/セラとウタノのゆく年くる年/手のひらの蝶

掌編ミニレビュー
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76. 青い翅の蜘蛛

青い翅の蜘蛛■制作者/untitled(ダウンロード
■ジャンル/ファンタジー
■ツール/ティラノスクリプト


この作品は、ふりーむの「千文字喫茶」という企画のために作られたようです。千文字というと、ゆっくり読んでも2分かかりません。そのレギュレーションを逆手に取り(?)、画面の一部に文字を出し、まるで絵本のような雰囲気を醸し出しています。ただし、文字がかなり見辛いのは少し困りました。フォントが細めでサイズも小さく、テキストウィンドウがなく直接背景画像状に表示されるので、ちょっときついものがあります。まあ2分の作品ですから、そこは堪えて読みましょう。

主人公は自分の姿が嫌いな蜘蛛。ある日彼の巣に、綺麗な青い蝶がかかります。物語はごく短いのですが(千文字ですし)、千文字にもかかわらず、しっかり起承転結がついており、物語として形になっています。感心しました。物語としては、本当に絵本というか、童話のようなお話です。ハッピーエンドという訳ではないのですが、ラストはじわりと心に沁みてきます。

ちょっと悲しい終わり方ではあるのですが、蜘蛛が自分の命と引き換えに得た友人達を最後まで裏切らず、そしてその友人達も、彼のことを最後まで綺麗なイメージのまま留めておいたという意味で、ある種のハッピーエンドなのかも知れません。この短さで巧みなストーリーテリングだと思います。この作者さんの、ちょっと長い話があれば是非読んでみたいと思わされました。

77. セラとウタノのゆく年くる年

セラとウタノのゆく年くる年準推薦
■制作者/Tears Lab.(ダウンロード
■ジャンル/日常
■ツール/NScripter


作者さんの名前を見て懐かしくなりました。「ブランコ日和」「Re:TRY ―リトライ―」の作者さんです。この作者さんは、日常を舞台にしつつも、少し変わったアイディアを盛り込んだ作品が持ち味でしたが、掌編でもその特徴は健在です。もっとも、この作品は15分くらいかかりますので、掌編というには長い気もしますが。

大晦日の夜、ウタノの部屋にセラが尋ねてきました。ウタノは男性、セラは女性です。最初は2人は中学生くらいなのかなと思ったら、実は二十代半ばです。あまりそういう感じがしないのが少々気になりましたが、ただひたすらセラとウタノの会話だけで進行する、独特のリズム感は癖になります。会話内容も、しりとりありクイズありで、目立った起伏がないのに上手く読者を惹きつけます。これは大したものだと思いました。

ラストに至るまで、何の事件も起こらないのですが、エピロードで来る見事な落とし方に一本取られました。掌編ならではの落とし方ですし、途中の展開をきっちりと生かした綺麗なオチです。立ち絵は何もないですが、会話文だけでこれほど魅力的な2人を描けるんだなと唸らされました。年末年始は過ぎてしまいましたし、掌編というには少し長いですが、気軽に読めて最後に意外な方向から一撃を喰らわされます。読んでみてください。

78. 手のひらの蝶

手のひらの蝶■制作者/灰色(ダウンロード
■ジャンル/ナンセンス・不条理
■ツール/ティラノスクリプト


この作品も、虫がテーマです。しかも登場するのはやはり蝶。これは偶然なんですけどね。そして作者は「10月32日のハロウィン」「罪咎オペレッタ」の方。絶対普通ではないオチがつくのだろうなと思っていたら、やはりラストで、一瞬でそれまでの展開をひっくり返されました。そう来なくては、という感じです(笑)。分類に迷いましたが、ホラーというほどでもないですし「ナンセンス・不条理」にしました。

主人公は蝶の羽を毟る根暗な男。今風の言葉で言えば「陰キャ」というところでしょうか。そんな彼が、ある日魅力的な女性と出会い、蝶の羽を毟ることもやめて彼女に夢中になります。このまま終わっていれば普通の話なのですが、そんな普通の終わり方はしません(笑)。雰囲気としては「人間標本」が少し近いでしょうか(登場はこちらの方が少し先です)。両方の作品を読んでみると、似たところと違うところが味わえて興味深いと思います。

人物の絵も出てきますが、それよりもモノクロームで描かれた手の画像が印象的でした。そして、短く淡々と綴られるからこそ、過剰に異常さを前面に出してはいないのですが、その「淡々とした衝撃」「何気ない怖さ」を感じられる作品です。いわゆる「奇妙な味」の短編・掌編が好きであれば、きっとお気に召すのではないでしょうか。本編は少し怖い話ですが、後書きが和みます(笑)。
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