第766回/世界がこんなに綺麗だなんて - 記憶の欠片は始まりの赤(誤字ら~ず。) - ファンタジー
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第766回/世界がこんなに綺麗だなんて - 記憶の欠片は始まりの赤(誤字ら~ず。)

ファンタジー
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記憶の欠片は始まりの赤

記憶の欠片は始まりの赤■制作者/誤字ら~ず。(ダウンロード
■ジャンル/呪われた色を取り戻すノベル
■プレイ時間/20分

町外れの洞窟に一人ぼっちで住む主人公ルキナ。ある日彼女の前に記憶を失った少女が現れる。ルキナは呪いのために体が真っ白になり、色を認識することもできなかったが、不思議なことにその少女の赤いワンピースだけは見ることができた。少女は、他にも見える色がないか探しに行こうとルキナを誘い、2人の旅が始まる。不思議で心温まるファンタジー。

ここが○

  • 少しずつ世界が色づく演出。
  • 短いが、構成が良く心温まるラスト。
  • 手描き風で絵本のようなグラフィックス。

ここが×

  • 少女の正体にもう少し伏線が欲しかった。
  • 全体に展開が駆け足気味。
  • もう一捻り波乱があっても良かったのでは。

■世界がこんなに綺麗だなんて

しばらく、やたらと人が死んだり、あまりにも雰囲気が重かったりする作品が多かったので、心温まるほのぼのした話はないかなと思い、探してみたところ、たまたまこの作品を見つけました。この作品、まずグラフィックスというか、絵柄が魅力です。流行りの絵柄ではないのですが、手描き風の背景と色の塗り方が、絵本のような雰囲気を感じさせ、ぱっと目をひきました。

主人公のルキナは、過去のとある出来事により呪われてしまい、自身の体も真っ白になった上、色を見ることができなくなってしまいました。そして数百年の間、森の中にある洞窟で一人寂しく暮らしていたのです。そこへやって来た少女。彼女は記憶を失っていましたが、それよりルキナが驚いたのは、何と彼女のワンピースの赤だけが認識できるのです。名無しでは不便なため、「アイリス」と呼ぶことにしたその少女は、「他にも見ることができる色があるかも知れない」とルキナを誘い、2人は小さな旅に出ることにしたのでした。

記憶の欠片は始まりの赤この語は、開始直後は背景も人物画も全て白黒で色は全く付いていません。そしてお話が進み、ルキナとアイリスが新しい色を見つけると、だんだん世界が色づいていきます。この「だんだん世界が色づいていく」というパターンの作品、割と最近取り上げましたね。「色のない世界」です。

ただこの両作には明確な違いがあります。「色のない世界」は、プレイヤーすらも気付かないように、じわじわとグラデーションのようにだんだん色が付いていきました。なので、プレイヤーが「あれ、いつの間に色が付いてる?」と気付くポイントが驚きの要素でもありましたが、こちらは少しずつ認識できる色が増えていき、塗り絵のように色が増えていきます。なので見た目の印象もかなり異なりますし、「だんだん色を取り戻していく」という要素を全面に押し出しています。

この物語は、それほど目立った起伏がある訳ではありません。言ってみれば、ルキナとアイリスが小さな旅をして、少しずつ分かる色を増やしていき、最後には全ての色が分かるようになり、そこでアイリスが誰かも判明する、と。非常につくりはシンプルです。しかし短編ですし、このストレートな作りが功を奏して、とても快適な読み心地を生んでいました。後半まで「色を見つける」という明確な目標があるため、上手いこと「アイリスは誰なのか」という謎がぼやかされていたんですよね。

短編に限りませんが、こういう構成の巧さって大事だと思います。いくら凝った謎を作っても、その提示方法がまずいと、威力を十分に発揮できないこともあり得ます。この作品は、「見える色をだんだん増やしていく」という、非常に読者の興味をひきやすい要素を最初に提示し、しかも非常にテンポよく展開させてどんどん見える色を増やしていったことで、読者の興味をアイリスの正体から、「次はどの色が」「今度はどんな景色になるんだろう」という方面へずらしたのが、上手いところです。

しかも、見た目に実際どんどん背景や人物画の色が増えていき、「あなたの髪の色は」なんてやり取りが入ってくるのが、実に巧妙でした。色が増えていく「仕掛け」と、物語の展開を上手にリンクさせた作りの良さが光っていました。アイリスの正体自体は、そこまで意外なものではないのですが、この構成の良さがあってこそ、ラストで心地よい読後感が味わえましたし、心温まる短編に仕上がっていました。

ただ、展開がやはりちょっと急ぎ足に過ぎた感は否定できません。あっという間にどんどん色を見つけていき、2人が試練に遭ったりすることもないため、展開が一本調子なんですよね。まあ、短い話ですから一本調子で退屈を感じるということはありませんし、様々な色を見つけていくシーン自体には色々な場所もあるのですが、少し途中が起伏に欠けるのは否定できません。1つ2つ何かエピソードを入れるだけでも、かなり印象は違ったのではないでしょうか。アイリスの正体についても、伏線がもう少しあっても良かった気がします。

ツールはUnity用ビジュアルノベルツール「宴」。何も考えずに起動したらフルスクリーンになって面食らいました。ウィンドウモードでプレイする時は、ウィンドウ起動のチェックボックスにチェックを入れましょう。選択肢はなく、プレイ時間は20分くらいです。ルキナの境遇など、必ずしも明るい物語とは言えないのですが、それをアイリスの明るさが補っていますし、ラストも綺麗でほのぼのと心和みました。心がほんのり暖かくなりたい時、どうぞ。
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