第769回/踊りあかせや阿波の夏 - 笠のない踊り子(てぃー) - 学園・青春
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第769回/踊りあかせや阿波の夏 - 笠のない踊り子(てぃー)

学園・青春
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笠のない踊り子

笠のない踊り子■制作者/てぃー(ダウンロード
■ジャンル/阿波踊りにかけた青春ノベル
■プレイ時間/40分

徳島の女子高校生粟飯原まゆは、昔阿波踊りに参加していたこともあるが、今は踊りから距離をおいていた。ある日笠の神様「カサノカミ」と出会う。時を同じくして、同級生の多田一紀に「阿波踊り同好会」に誘われ入会を決意。転校生の笹川巡、クラスメイトの鳥井町鈴子と共に、再び阿波踊りに打ち込み始める。四国徳島を舞台に、恋と踊りの青春物語。

ここが○

  • ご当地もののローカル感が楽しい。
  • 程よいテンポ感で小気味良い展開。
  • 立ち絵はないが魅力的なキャラクター。

ここが×

  • この尺にしては少し盛り込み過ぎか。
  • そのため若干描写不足を感じる箇所も。
  • 日本語が少々怪しい。

■踊りあかせや阿波の夏

私は、実は徳島県徳島市の生まれです(生まれだだけで、すぐ引っ越してしまったらしいですが)。そして育ったのは山口県下関市。大学は福岡県北九州市。現在は北海道札幌市在住。なんと四国、本州、九州、北海道を前制覇。なかなかできることではないと思いません?(だからどうした) それはともかく、生まれが徳島ですし、香川にも6年住みましたので、四国には少し思い入れがあります。

この作品の舞台は四国徳島。香川在住時、徳島には何度も行きましたし。徳島と言えば夏の風物詩、阿波踊り。この物語は、阿波踊りに打ち込む高校生達の物語です。架空の街の架空のお祭りよりも、なんだかそそられるものがありませんか? こういう「ご当地もの」は、その世界観だけで魅力を感じることが多く、この作品もあらすじを見ただけでダウンロードを決め、プレイすることにしました。なお阿波踊りと言えば「踊る阿呆に見る阿呆……」という唄が有名ですが、実は「ヤットサーヤットサー」という掛け声の方がよく使われます。この掛け声もちゃんと作中で再現されており、「おお!」と思わされました。

笠のない踊り子主人公は徳島の女子高生、粟飯原(あいはら)まゆ。幼い頃、阿波踊りの会場で迷子になった自分を助けてくれた女性のことを、うっすらと覚えているものの、今は阿波踊りには参加していません。同級生の多田一紀に、彼しか会員のいない「阿波踊り同好会」に誘われるものの、参加する気はありません。そんなある日、東京から転校生の笹川巡があゆのクラスに転入してきました。巡に心惹かれるあゆ。

そしてある日出会った、笠を被った謎の少女「カサノカミ」。彼女は阿波踊りの達人(達神)。彼女に「パラちゃん」という愛称をつけたあゆは、だんだん阿波踊りの世界に再び巻き込まれ、いつしか本気で打ち込むことに。一紀の父が連長を務める「多奴来連」に加わり、本番を目指して練習に打ち込むようになります。このように今作は阿波踊りをテーマにした、ご当地青春物語です。上にも書いた通り、ローカルなイベントをテーマにしている物語というのは、それだけで魅力を感じ、とても楽しく読むことができました。作中で電車ではなく「汽車」という言葉を使っているのも、「これぞ徳島!」と思いました(徳島県はJRの路線が全て非電化なので、電車ではなく汽車なのです)。

ただ、せっかく徳島が舞台なのに、背景素材が非常にお馴染みのアニメ絵イラストなんですよね。一部鳴門の渦潮の写真も使ってはいましたが、アニメ絵の背景が悪い訳ではもちろんないのですが、せっかくのご当地物語なのですから、徳島ならではの写真をあれこれ使った方が、より雰囲気が出たのではないでしょうか。

さて、この作品は立ち絵が全て影絵です。キャラクターは結構多いのですが、しっかり個性付けがされており、キャラクターの掛け合いと、阿波踊りというテーマ、その他キャラクターの過去やらが絡んできて、2時間くらいの長さではあるのですが、「全部盛り」と言っていいほど盛り沢山の内容です。実はイベント自体はそこまであれこれ起こる訳ではなく、むしろ波乱万丈というよりは、比較的穏やかな物語なのですが、この盛り沢山ぶりで終始楽しめました。

とは言うものの、あれこれ盛り込み過ぎてちょっと描写が足りないのではないかと思うところもなくはありませんし(例えば巡の父と、巡の母の実家の関係など)、まゆと巡の恋愛に至る真理描写はもう少し深く掘り下げて欲しかった気もします。何よりパラちゃんにもうちょっと活躍して欲しかったように思いました(そうすればラストシーンの効果がもっと増したはず)。

ですがキャラクターと舞台が魅力的で、それに要素が盛り沢山な上にテンポも良いため、とても快適にストレスなく読める物語です。細かいところを見れば多少荒削りなところもあるのですが、そんなことは気にせずにどんどん読ませてしまうパワーを持った作品でもあります。そして全編キャラが影絵のこの物語で、たった1箇所だけ出る1枚絵がとても可愛く綺麗で、非常に印象的でした(作品紹介ページにも出ていますね)。ラストもすっきりとした意外性があり、まとまりのいい終わり方でした。読後感もとても良好です。

ツールはLive Makerです。選択肢はなく、プレイ時間は2時間くらい。誤字や誤用が少々目立つのは気になりましたが、文章自体は素直に綴られていて読み易い部類だと思います。読むと徳島に少しだけ行きたくなるかもしれない物語。登場人物たちがみんないい人たちばかりで、真っ直ぐな思いが伝わってきて心が温まる青春物語です。同じ阿呆なら読まなきゃソンソン、ということで(?)四国に行ったことがない方も是非プレイしてみてください。
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