第84回/君に清き風の吹かんことを - さくら(ぷれぷれPROJECT) - 恋愛
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第84回/君に清き風の吹かんことを - さくら(ぷれぷれPROJECT)

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さくら

さくら推薦
■制作者/ぷれぷれPROJECT(ダウンロード
■容量/138MB

妖怪や物の怪を浄化し、彼岸へ送る力を持つ神道士。その神道士の里に済む八坂洋平は、1年後の神道士資格試験のため、秋津学園高等部へ転入して来た。1年間修行を積み、更に生涯の伴侶となる女性を連れて帰らねばならないという。ヒロイン3人、クリッカブルマップ形式の恋愛アドベンチャー。

ここが○

  • 長いが、シナリオの展開バランスが良く、快適に面白く読める。
  • 3人のヒロインのシナリオは多彩で、いずれ劣らぬ出来映え。
  • キャラクター描写が上手く、かつ描写が冗長になっていない。

ここが×

  • 選択肢が一切ないのは少し寂しい。立ち絵のバランスもちょっと悪いか。
  • システム上なくても困らないが、既読スキップがあればなお良かった。
  • 史上最大クラスの容量。

■君に清き風の吹かんことを

いやはや、侮ってました。第一印象では、そう大した作品とは思えなかったのです。ストーリー紹介を見ても、「何だこの電波な設定は?」としか思いませんでした。ところがどっこい。これは久々に傑作が来ました。今回はクリッカブルマップ形式の恋愛アドベンチャー「さくら」をご紹介です。

クリッカブルマップ形式というのは、古くは「To Heart」などに見られる、マップが表示され、行き先をクリックすると、そこで何かしらのイベントが起きて、シナリオが進行するタイプのアドベンチャーです。「To Heart」はマップを見てもどこに誰がいるかは表示されないため、非常に難しかったんですが、この「さくら」はマップにキャラクターが表示されるため、キャラを攻略するにはお目当てのキャラがいる地点に行っていればよく、難易度はゼロに等しいです。

ゲーム内で1年を過ごしますが、大きく「春」「夏」「秋」「冬」の4章に分かれ、それぞれが小さな流れを形作っています。この展開バランスがとても良く、感心させられました。この手の作品の場合、往々にして前半は、読んでるだけで疲れて来るただの日常シーンばかりで、途中で飽きてしまいがちですが、夏なら夏、秋なら秋でそれぞれ小さな事件が起きるか、あるいは全体ストーリーが少しずつ進むため、流れが澱みません。

そして、そのバランスの良い展開を支えているのが、キャラクターです。キャラクターも、まあよくあるパターンのキャラばかりと言えばそれまでですが、誠実に描かれており、キャラクターの言動がシナリオを邪魔する事がありませんでした。ゲームなのでそりゃ多少はキャラクターというのはデフォルメされるのが常ですが、ここを勘違いして、現実にはありえない口癖や性格を持たせるというようなやり方で「個性」をつけてしまうと、キャラが完全にシナリオを邪魔してしまいます。

書く側からすれば、「常識的なキャラクターの、『日常を切り取ったような』描写」よりも、「ありえない特徴を持ったキャラクターが、何だかドタバタやってる」方が、そりゃあ楽でしょう。ですが、そうするとシナリオがどんなに良くても、キャラクターがシナリオを殺してしまいます。特に、大きな事件が起こってからならばシナリオがキャラクターを引っ張るでしょうが、日常描写が多い前半部ではこれは致命的な弱点となります。登場人物のやりとり主体に描くキャラクタードラマこそ、実はキャラクターは抑えて書かねばならないのです。

今作は、シナリオの展開バランスが良いだけでなく、その「キャラクターとシナリオのバランス」も絶妙なのです。シナリオもキャラクターも、斬新なアイデアとか、今までにない発想とか、そういう突出した物ではないんですが、キャラクターとシナリオを丁寧に組んで、誠実に描写するだけで、これほどの物ができるとは、ただただ脱帽です。

また、主人公が多少気弱とは言え向上心がある男で、友人の永田が、お調子者ではありますが主人公を陰で支えるとても良い奴なんです。お陰で感情移入もしやすいですし、主人公を応援する気持ちにもなれました。何だか、読む側にわざとストレスを与えようとしているとしか思えないほど、どこか壊れた主人公や友人が出て来る作品も多いですが、こういうのをプレイすると、主人公のキャラクターメイキングが、プレイヤーにとっていかに大事かが良く分かります(笑)。

褒め言葉を並べましたが、苦言も少しだけ。立ち絵が、決して下手ではないんですが、特に女性キャラで頭と胴体の大きさのバランスが良くないのが気になりました。そのため、ちょっと第一印象を悪くしているのが惜しいところ。絵師さんが違うのか、1枚絵はどれもこれも大変素晴らしく、見応えたっぷりです。後は選択肢皆無なのが、ちょっと寂しかったですね。個性的なキャラクターばかりですから、選択肢で色んな反応を見てみたい気もしました。3人のヒロインのシナリオは、どれも甲乙付け難く、誰から攻略しても満足感を得られると思います。私は、どのヒロインのシナリオも気に入りました。

この作品、同人誌即売イベント等では、制作にかかった最低限の経費分の値段で販売しているそうですが、この作品なら私はお金を出してもいいと思いました(まあフリーだからこそ評価しているというのも否定できませんが)。見た目と巨大な容量と何だか「?」な序盤で尻込みするかも知れませんが、恋愛もの嫌いでなければ自信を持ってお勧めします。
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