第773回/私はあなた、あなたは私 - 悠久のダイアリー(Aerial Nauts) - 不思議系
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第773回/私はあなた、あなたは私 - 悠久のダイアリー(Aerial Nauts)

不思議系
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悠久のダイアリー

悠久のダイアリー■制作者/Aerial Nauts(ダウンロード
■ジャンル/日記で語る心の思い出ノベル
■プレイ時間/20分

「私」は、部屋でいつものように日記を開いた。その日記には、以前出会って楽しい時を過ごした少女、リーヴァとの思い出が記されていた。しかしある日突然、リーヴァは「私」の前の前から消えてしまった。リーヴァとの思い出に浸るべく、「私」は今日もリーヴァとの時が刻まれた日記を開き、涙にくれる。不思議な感覚の、喪失系恋愛ノベル。

ここが○

  • 後半にだんだん意味が分かってくる展開。
  • 楽しい思い出と現実の不安を煽るようなBGMの対比。
  • 考察のしがいのあるラスト。

ここが×

  • 全てがきちんと語られる訳ではないので、少しすっきりしない。
  • 読んでいて少し混乱するところがあり、一度では意味を掴み辛い。
  • 終わり方がちょっと呆気ない。

■私はあなた、あなたは私

私は、フリーノベルゲームではどちらかというと、ラストで謎が全く残らずに綺麗に全部説明され、気持ちよく読み終えられる作品が好みです。しかし、フリーノベルゲームは自由に作者さんが描きたいものを書けるのが魅力でもありますから、そうではない作品も当然沢山ありますし、そういう作品を読んで、作者さんがどのような思いでその物語を書いたのか、じっくり考えてみるのも、時には楽しいものです。

この物語はそういうタイプの、全てがはっきり説明される訳ではなく、色々と読者が想像するタイプの作品です。冒頭から謎めいています。主人公の「私」は、名前も分からなければ性別も不明。そしてかつて出会った少女との思い出が綴られた日記を開き、物語は「私」の部屋での様子と、日記に描かれている過去の回想が交互に展開していきます。

悠久のダイアリーここで印象的なのは、自室(?)でのシーンと回想のシーンの落差です。自分を「変な子」と呼ぶリーヴァの言動もさることながら、BGの落差が、両方のシーンの対比を非常に明確に描き出しており、これは大変効果的でした。これも立派な演出ですね。演出というと、絵が動くとか、派手なカメラアングルとか、そういう物ばかりが注目されがちですが、こういう地味ながら雰囲気をしっかり形作る演出って大事だなと思わされました。

さて、序盤は単にいなくなった女の子との思い出に浸っているだけの物語に見えます。なので、おそらく多くの読者は、リーヴァが何故いなくなったのかというところに焦点を当てて物語を読むと思いますが、中盤辺りから風向きが変わってきます。恋人が欲しいと言ったリーヴァの言葉から、「私」は男性なのかと思っていたら、いきなり恋人ではなく友達という展開に。このあたりで、「え、これどういうこと? 私って脳内の存在?」となるでしょう。

さらに、「私」がいる部屋が病室であることが分かって看護婦さんが現れ、加えて何故か回想シーンではリーヴァとして出てきた立ち絵が、「私」として出てくる辺りから、薄々設定が見えてきます。ただあくまで「薄々」見えるだけで、作中でも全てを説明される訳ではありませんので、そこらは読み手の考察に任されているところがあります。

例えば、「私」(愛里)はいわゆる二重人格(解離性障害)で、リーヴァは私の別人格という考え。そして日記中の「君」は妄想というか、リーヴァ(愛里)の理想の相手が彼女の中で具現化したもの、という辺りが誰でも考えそうな設定です。まあ私の頭ではそのくらいの考察がせいぜいなのですが(汗)。あるいは、自室での現実の描写でも、時々リーヴァが顔を出していることをほのめかすシーンもあります。これは想像の域を出ませんが。

しかしだんだん愛里(リーヴァなのかも。この辺はよく分かりません)は、「君」が現実の存在ではないことに気付き始めたため、「君」は現れなくなってしまいます。そしてラストでは、リーヴァによって生み出されたはずの「君」が、最後の力を振り絞って愛里の前に現れ、現実を見るように愛里に説き、愛里は「君」と、そしてリーヴァと決別する、と。こういう感じなのではないかと思いました。2回読んだのですが、ちゃんと理解し切れた自信はないです。

決して難解という訳ではないのですが、しっかり説明されていないところがあり、ラストも明確に描写されませんので、そういう意味でなんともすっきりしないと言えばすっきりしません。しかし、物語を読みながらパズルのように仮定を組み立てる面白さもあります。これは好みの問題でもありますが、最初の見た目はシンプルで、尺としても短編でありながら、かなり工夫した設定と構成の物語だと思いました。色々考えてみたくなります。

ツールはYU-RISで、快適にプレイできます。選択肢はなく、プレイ時間は20分から30分ですが、私は2回読みました。それでも完全に理解できた自信はないですが、不思議で不安感を煽るような演出も込みで、いつもは味わない雰囲気の物語を楽しんで読むことができました。物語を読んだ後、自分なりに考察するのが好きな方であれば、短編で見た目はシンプルな物語だけに、考察の組み立てがいがあると思いますよ。
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