第776回/変わる世界と変わらぬ絆 - 青空に唄う君の歌(Star Chasers) - 学園・青春
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト(通常) - 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別
作品リスト(掌編) - 新着順名前順ジャンル別
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第776回/変わる世界と変わらぬ絆 - 青空に唄う君の歌(Star Chasers)

学園・青春
  • comment0
  • trackback-

青空に唄う君の歌

青空に唄う君の歌■制作者/Star Chasers(ダウンロード
■ジャンル/約束の場所で約束の唄を歌うノベル
■プレイ時間/2時間

柊瑛太、御笠桂依、桜坂苓司は、とあるきっかけにより同じ家で兄妹のように暮らしていた。ギターと作曲を得意とする瑛太は、ある時泣き止まない桂依を宥めるため、いつか3人のための曲を作り、それを一緒に歌おうと約束した。時は流れ3人とも高校生に。変わらぬ日常の中、3人の関係は少しずつ変化していくのだろうか。音楽をテーマにした青春物語。

ここが○

  • アニメ風の絵が綺麗で、オープニングやエンディングの歌も凝っている。
  • 整っていてプレイしやすいシステム。
  • 魅力的な設定とキャラクター。

ここが×

  • 色々な要素が盛り込まれているが、どれも柱になり切れていない感。
  • 文章の構成がちょっと分かりにくい。
  • 最初セーブの仕方が分からず戸惑った。

■変わる世界と変わらぬ絆

音楽をテーマにした作品って結構ありますね。最近取り上げた中では「Subito Quartet」が記憶に新しいですが、文化系と体育会系のノリが同居したような、独特の世界観が物語に適しているのかも知れません(音楽をやっていた人なら、この表現にしっくりくるのでは)。「檻演人 ~オリエント~」の作者さんによる作品です。初出は2014年。

あちらはテーマが落語で、落語が柱と言ってもいいほど重要な役割をしていましたが、今作はメインは音楽をテーマにしながら、他にもあれこれと要素が盛り込まれており、盛り沢山と言ってもいいくらい。これが、この作品のいい点でもあり、同時に気になる点でもあったのですが、それについては後述します。画面写真を見てもお分かりのように、流行のアニメ調の美しい絵が特徴です。1枚絵も結構多くて綺麗で(ただピアノのシーンは「手ちっちゃ! 鍵盤でか!」となりましたが)、オープニングとエンディングの歌が気分を盛り上げてくれます。

青空に唄う君の歌主人公は3人。高校3年生の柊瑛太。彼はギターが得意で、作曲が特技。桜坂苓司は高2。天才的な歌声を持つクールな鈍感男。紅一点は高1の御笠桂依。彼女はピアノに優れた才能を持ちます。この3人は、とある事情により苓司の父一臣により引き取られ、j兄妹のように一緒に暮らしています。冒頭は、小学生の頃の3人のシーン。卒業式でしょうか、別れが悲しくて泣き止まない桂依に、瑛太が「3人のための歌を作るから、いつか一緒に歌おう」と言う場面から始まります。印象的なスタートですね。

このイントロの後は、苓司と一臣の意味深な会話、更にその後は山に登って広場に足を踏み入れる桂依の描写が入り、「?」と思っていたら、凝ったオープニング(歌付き!)が流れた後にいきなり場面が変わり、この作者さんらしい(?)ちょっと装飾過剰な学園の日常シーンが始まります。この冒頭の描写の意味は、ラストに分かります。いわゆる「サンドウィッチタイプ」の作りですね。

この出だしだけを見ると、完全に音楽ものの青春物語かと思うのですが、意外にもそういう方向に物語は進みません。瑛太以外の2人は、音楽と一歩距離を置いている感じで、音楽自体があまりありません。と言って恋愛要素も希薄で(少しだけそれを仄めかす描写はあるのですが)、どちらかというと、3人の置かれている境遇や、3人の関係性の変化という辺りが主眼となっているように読み取れました。

この3人、それぞれ結構特殊な家庭事情を抱えており、それがまたストーリーに関わってきます。そりゃ、何か事情がないと、元々他人だったのに同じ家で暮らしたりはしませんよえ。加えて、後半では苓司の持病の話も出てきます(実は冒頭でもさり気なく触れられてはいますが)。このように、色々な要素が様々絡みあい、大変盛り沢山な内容となっています。

この盛り沢山なところが、この作品の魅力の1つであるのは間違いありません。様々な方向から物語が語られ、その度に展開もキャラクターも違った色を見せてくれる面白さがあります。ですが、一方でちょっと盛り込みすぎのきらいもあります。音楽に振っている訳でもなく、苓司の持病をメインに据えている訳でもなく、苓司と桂依の関係にスポットが当たっている訳でもなく、瑛太の両親の問題が主眼という訳でもなく。よく言えばバラエティに富んだストーリーですが、悪く言えば、ちょっと焦点を絞り切れていない感がありました。

あえて焦点を絞らず、色々な観点から物語を語るというのは、この作品の面白いところでもあるのですが、どれかを柱にすれば、かなり印象が違ったのではないでしょうか。ラストシーンを見るに、やはり一番語りたかったのは「約束の歌」に関する点だと思いますので、そこをもっと重点的に語って欲しかったように思いました。ラストの演出は文句なしにすぐれていましたから、そうすれば全体としての感銘も何倍にも上がったような気がします。それだけの潜在能力を秘めたシナリオだと思いました。

文章は、少し持って回った表現や、人称変化が多く少し構成が分かりにくいところはあるものの、しっかりして読みやすいと思います。またシステムも凝っていますね。最初セーブをどうやるのか分からなかったのですが(右クリックメニューにセーブがない)、マウスカーソルを画面右方へ持っていくと、セーブ、ロードその他のメニューが現れますので、「セーブできない!」とならないようにご注意ください。

ツールは謎です。挙動を見るとNScripter風でもあるのですが、データファイルの形式が違いますし。ともあれ、軽快に動作して遊びやすいツールです。スキップも高速でストレスがありません。もっとも、一本道なのであまりスキップは使わないと思いますが。プレイ時間は2時間弱くらいです。プレイ時間が適度ですし、この時間にしては非常に多くの要素が盛り込まれたストーリー。また音楽も非常に綺麗です。テーマのどれかに惹かれたら、きっと心に何か残してくれる物語だと思います。
関連記事

Comments 0

Leave a reply